いきなり参院常任委員長の解任を求めるほどのことなのか。
民主党など参院の野党7党は、自民党の川口順子環境委員長の解任決議案を参院に共同提出した。
中国への出張を許可なく1日延長した結果、環境委員会が流会となったことを問題視し、「委員長としての職責を自ら放棄したも同然で、断じて容認できない」と指摘している。
9日の参院本会議で採決され、野党の賛成多数で可決される公算だ。常任委員長に対する解任決議案の可決は憲政史上初となる。
川口氏は、4月23日から2日間の予定で訪中した。アジア各国の元外相らの会合などに参加するのが目的だったが、渡航後、副首相級の楊潔?国務委員との会談が25日に設定された。このため、帰国を1日延ばして会談に臨んだ。
参院には、国会開会中、常任委員長などに海外渡航自粛を求める与野党合意がある。2日間の訪中についても、議院運営委員会理事会の事前了承が必要だった。
川口氏は、1日延長については野党の了承を得られないまま、強行した。ルール違反であることは確かだ。野党側には、政府の外交責任者でもない川口氏が中国要人と会談して何の役に立つのか、といった批判もある。
だが、尖閣諸島をめぐる日中対立により、両国間の要人往来や直接対話はほぼ途絶えている。習近平新体制で外交全般を統括する楊氏との会談には、一定の意義があっただろう。
川口氏は陳謝した上で、「主権と領土を守る国益に背中を向けられなかった」と釈明している。
野党側は解任決議という“強権発動”ではなく、陳謝を受け入れるべきではなかったか。重要法案に関する不手際でもないのに解任とは行き過ぎだろう。
参議院規則では、委員長の代理を立てることが認められている。25日の委員会は、代理による議事運営も可能だったはずだ。
野党側は、夏の参院選に向けて、安倍政権との対決姿勢を強めたいのだろう。民主党には、野党共闘構築の足がかりになるという声もある。だが、こんな国会対応では有権者の共感は得られまい。
自民、公明両党は、野党の解任決議案提出に反発し、8日の参院予算委の集中審議を欠席した。予算審議での与党欠席は極めて異例であり、無責任だ。
与野党は、相手の揚げ足取りばかりでなく、政策論争で正面から勝負すべきである。
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