尖閣侵犯8隻 「物量作戦」に音上げるな

読売新聞 2013年04月28日

中国の尖閣発言 「核心的利益」とはお門違いだ

沖縄県・尖閣諸島周辺の緊張を高める危険な言動を、中国の習近平政権は厳に慎むべきだ。

中国外務省報道官が記者会見で、尖閣諸島について「中国の領土主権に関わる問題で、当然、中国の核心的利益だ」と述べた。尖閣諸島が「核心的利益」の対象だと当局者が明言したのは初めてである。

核心的利益とは、国家主権や領土保全など、中国にとって絶対に譲歩できない国益を指す言葉だ。これまで主として台湾やチベット、ウイグルに用いてきたが、近年は南シナ海にも使っている。

尖閣諸島については、昨年1月、共産党機関紙「人民日報」が使ったが、政府が公式に認めたことはなかった。今回の報道官発言は、「海洋強国化」を図る習政権が尖閣諸島を国家の最優先課題に位置づけたことの証左だろう。

核心的利益の対象を一方的に広げて、領土や海洋権益の拡大に固執する中国の姿勢は、独善的な膨張主義にほかならない。

断じて容認できない。日本政府は国際社会に対し、中国の不当性を粘り強く訴えねばならない。

今後、中国が国家海洋局の監視船を大挙、尖閣諸島周辺の領海に侵入させることもあるだろう。日本はあらゆる事態を想定して、対応策を練る必要がある。

政府は、南西諸島周辺での防衛態勢を強化し、警戒監視活動に万全を期すことを明記した海洋基本計画を閣議決定した。海上保安庁と自衛隊との連携などを強化していくことが肝要である。

看過できないのは、中国軍の関与が着々と強まっていることだ。1月には尖閣諸島の北方海域で、海軍艦艇による海上自衛隊艦艇へのレーダー照射事件も起きた。

この海域では、今も中国海軍艦艇と海自艦艇がにらみ合う緊迫した状況が続いている。

中国には、強大な軍事力を背景に武力行使も辞さない方針をちらつかせ、日本を揺さぶったり、実効支配を切り崩したりする狙いがあるのだろう。

中国は言葉では「決して覇権を唱えない」と強調するが、その行動は周辺国への脅威を高めるばかりだ。安倍首相も「この2年で日本と中国の軍事バランスが完全に壊れる」と懸念を示している。

軍事力を前面に出す中国の強硬姿勢は不測の衝突を招きかねず、危険極まりない。

日中の防衛当局は、艦艇や航空機の偶発的事故を防止する「海上連絡メカニズム」の協議を再開した。早期合意を目指すべきだ。

産経新聞 2013年04月24日

尖閣侵犯8隻 「物量作戦」に音上げるな

日本固有の領土である尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に、国有化以降最多となる8隻の中国公船(海洋監視船)が相次いで侵入し、周りの接続水域でも2隻の漁業監視船が航行した。

中国公船による尖閣領海侵犯は過去、最大6隻だった。領土奪取を狙う中国が挑発の度を次第に高めているのは明白だ。海上保安庁の巡視船は神経戦のような対峙(たいじ)を強いられている。現場も政府も音を上げてはならない。

菅義偉官房長官は「極めて遺憾だ」と表明し、外務省は中国の程永華駐日大使を呼んで厳重抗議し、全船の即刻退去を求めた。当然の対応である。

安倍晋三首相は参院予算委員会で、「上陸となれば強制排除するのは当然」と述べた。閣僚の靖国神社参拝との関連を問われ、「他国に文句を言われる筋合いではない」と応じた。もっともな姿勢である。

中国公船の領海侵犯は国有化以降40回目だ。常態化しているだけでなく、滞留時間も連続侵犯日数も増やし、執拗(しつよう)になっている。日本側を疲弊させる意図だろう。

4月中旬には、中国軍艦も尖閣周辺を航行し、国営新華社通信など中国メディアが速報した。対日圧力を強める示威行動である。

中国は3月、農業省、警察、税関、国家海洋局などが個別に行っていた公船の運用を同局に一元化した。投入できる公船は一気に約3000隻に増えたとされる。

対する海保は、巡視船117隻を全国規模でやりくりしながら、尖閣周辺警備に当たっている。

2015年度末までに尖閣専従チームをつくるというが、海洋権益拡大の目標を鮮明にし、「物量作戦」に出ている中国を相手にこれで間に合うのか。政府は備えの増強を最優先にすべきだ。

高村正彦自民党副総裁ら超党派の議員連盟が5月上旬に予定していた訪中も、中国側が習近平国家主席ら要人との会談が困難と伝えてきたため中止となった。中国は政治面でも揺さぶりに出ている。我慢比べと考えておけばよい。

12年版中国国防白書では、これまで基本姿勢としてきた「核兵器の先制不使用」の記述が初めて除外されたともいう。習政権の対外強硬姿勢を裏付けるものだ。

日本は、そんな中国に主権、領土を脅かされているという厳しい認識を持つ必要がある。

読売新聞 2013年04月25日

尖閣諸島 海も空も中国への警戒強めよ

中国の危険な挑発に対し、海空両面での警戒監視活動を強化する必要性が一段と高まった。

沖縄県・尖閣諸島沖の領海に23日、中国の海洋監視船8隻が相次いで侵入し、約12時間も航行を続けた。昨年9月の尖閣諸島国有化以来、中国公船の領海侵犯は40件、延べ約130隻に上る。8隻同時は最多だ。

中国は、現場海域にいた日本漁船の「侵害行為」に対する「法執行だ」と領海侵犯の正当化を図ったが、到底容認できない。

安倍首相は「絶対に上陸させないという強い決意で、物理的に対応していくことが正しい対応だ」と強く牽制(けんせい)した。領海侵犯が続く場合は公務員駐在などの対抗措置をとる可能性も示唆している。

中国政府は3月、農業、公安両省など複数機関による海上取り締まり任務を国家海洋局の下に一元化した。今回、海洋監視船の領海侵犯に合わせて、周辺の接続水域内を漁業監視船2隻が航行したのも、一元管理の表れだろう。

今後、大量の監視船の領海侵犯が再発し、侵犯時間も長くなることが予想される。海上保安庁は対処能力を拡充し、海上自衛隊とも緊密に連携する必要がある。

緊迫の状況は海に限らない。

2012年度の中国機に対する航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)は過去最多の306回に上った。前年度の約2倍で、初めてロシア機への発進を上回った。

緊急発進の対象は、戦闘機など中国空軍機が大半を占め、尖閣諸島北方空域に集中している。

中国政府が領土・海洋権益への強硬姿勢を公言する以上、日本政府は事態の中長期化を覚悟して、対策に本腰を入れるべきだ。

政府は今年末に防衛大綱を見直す。その中で、部隊の機動性を重視する「動的防衛力」を強化し、沖縄方面の艦船・航空機や要員の増強に優先的に取り組まねばならない。無人偵察機グローバルホークの導入も前倒しが必要だ。

一方で、日中間の緊張をいたずらに高めることは避けたい。今年1月の中国海軍艦艇によるレーダー照射事件のような不測の事態や事故を防ぐためのルール作りを進めることが大切だ。

日中の防衛当局は昨年6月、海上連絡メカニズムの構築で基本合意した。部隊間のホットラインを開設し、艦艇・航空機が国際緊急周波数で無線連絡する仕組みだが、まだ実現していない。

まずは、この合意を実行に移し、部隊間の信頼関係の醸成を図ることが重要である。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1390/