COP15 人類の明日がかかる

朝日新聞 2009年12月10日

普天間問題 日米関係の危機にするな

米海兵隊の普天間飛行場の移設問題が一段とこじれてきた。

鳩山由紀夫首相が先週、移設問題の結論を来年に持ち越す方針を示したことが直接の発端だ。名護市辺野古への移設案に連立相手の社民党が強硬に反対したことに配慮したものだった。

だが、その結果、首相がオバマ米大統領との間で合意した、辺野古案を検証する閣僚級の日米作業部会は宙に浮いてしまった。首脳会談で確認した来年の安保条約改定50周年に向けた「同盟深化」の協議にも入れそうにない。

日本政府関係者によると、辺野古案以外に現実的な打開策はないとする米政府側の、先送りに対する反発が底流にある。こうした展開に、岡田克也外相でさえ「日米関係の現状に非常に強い危機感を持っている」と語る。

なぜこの事態なのか。日米関係の基盤は安保条約であり、日本が基地を提供するのは不可欠の要件である。移設問題はその重要な一環だ。この基本認識では日米に大きな違いはあるまい。

米側が既存の合意の実施を求めるのは、米国の立場としては当然だろう。同時に、政権交代を踏まえた鳩山政権が過去の経緯を検証し、沖縄の過重な負担を軽くするための方途を探ろうとすることも否定されるべきではない。

問題は、同盟国間の外交らしく、在日米軍の抑止力をどう維持するのか、日本としてそのコストをどう分担するのかという観点からの率直な意思疎通がうかがわれないことだ。

これで同盟そのものが壊れるかのような議論は短絡的に過ぎるが、コミュニケーションが不全なまま混迷が深まるのは不幸なことだ。

オバマ大統領は東京での演説で「この半世紀、日米同盟は安全保障と繁栄の基盤であり続けた」と述べた。今必要なのは、その「基盤」を保ち、管理していくための意思と知恵である。

いったんは年内決着を探りながら、連立への配慮を優先し、結論を先送りした鳩山政権に対する米国側のいらだちは理解できる。

一方で朝日新聞の世論調査では、日米合意を見直して再交渉すべきだという人が半数を超えた。沖縄県民だけでなく、こうした世論の動向も軽視されるべきではない。

防災や医療、教育などの分野で重層的な協力を広げていくという首相の「同盟深化」論は、地球温暖化対策や核不拡散の取り組みを重視するオバマ政権の方向性と一致するものだ。日本国民も、ともすれば軍事面のみが強調されがちだった従来の同盟像が刷新されることを歓迎するに違いない。

この流れを大事に育むためにも、普天間問題をめぐるあつれきをできるだけ抑え込むことが首相の責任である。まずはどのような「方針」なのか、それを早く出してもらいたい。

毎日新聞 2009年12月07日

COP15開幕 実効力ある合意目指せ

京都議定書以降(ポスト京都)の世界をどう方向付けるか。温暖化対策の今後を占う「気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)」が、デンマークのコペンハーゲンで今日開幕する。

当初めざしていた法的拘束力のある新議定書の採択は困難な状況だが、地球の気候安定に向けた歩みを止めるわけにはいかない。確実に議論を前進させ、実際に温室効果ガス削減に結びつく政治合意をまとめることが欠かせない。

合意に不可欠なのは、京都議定書で削減義務を負っていない米国や中国、インドなどの大量排出国も責任を果たす枠組みだ。

最近まで、米中印がCOP15で中期目標を示すかどうかは微妙だった。しかし、先月末から相次いで削減の数値目標を公表し、風向きは変化している。

ただし、これらの数値は十分ではない。「05年比17%減」という米国の目標は、90年比では数%に過ぎない。「90年比25%減」を掲げる日本や、「90年比20~30%減」の欧州連合(EU)に比べ見劣りがする。

中国やインドの数値は国内総生産(GDP)当たりで示されている。エネルギー効率は高まるが、経済成長に応じて総排出量は増える。あまり甘い数値では意味がない。

「25%減」という日本の数値が「突出して高い」と懸念する声もある。しかし、高い目標は他国から削減努力の上乗せを引き出したり、新たな制度設計を提案したりできる材料でもあるはずだ。

「25%減」の条件が「すべての主要国による意欲的な目標の合意」である以上、それを実現すべく他国に働きかけるべきだ。その際には、説得力のある「公平性」のデータを持って臨まなくてはならない。

省エネを進めてきた日本では、二酸化炭素をさらに削減するための費用が高いことは確かだ。しかし、国際交渉では1人当たりの排出量などさまざまな公平性の指標がある。削減費用だけでは説得できない。

政治合意文書には、2050年までの長期目標や、先進国全体の中期削減目標も盛り込む必要がある。実際に削減できているか、測定・検証するための仕組み作りも重要だ。

途上国が削減に参加するためには、先進国からの資金提供が欠かせない。COP15では、途上国の排出抑制を継続的に支える基金構築が必要で、日本の役割も重要だ。

国際交渉は各国の思惑がぶつかりあう場だが、化石燃料の大量消費に歯止めをかける必要性は誰も否定できないはずだ。近い将来の新議定書採択に向け、国同士の対立を超えて、合意点を見いだしたい。

読売新聞 2009年12月07日

COP15開幕 国益最優先で交渉にあたれ

地球温暖化対策で、公平なルール策定への道筋をつけられるのか。気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(COP15)で、日本政府は交渉の正念場を迎える。

COP15は7日、コペンハーゲンで開幕し、首脳級会合には、鳩山首相ら約100か国の首脳が出席する予定だ。

日本政府は、温室効果ガスの国内排出量を、2020年までに1990年比で25%削減するという中期目標を掲げて臨む。極めて高い目標の提示により、他国にも排出削減を促す戦略といえる。

だが、世界的な経済危機の影響もあって、各国による事前折衝は難航している。先進国と途上国が互いに積極的な取り組みを迫り、その溝は埋まっていない。

COP15では、13年以降の削減ルールとなる「ポスト京都議定書」の採択が期待されていた。しかし、これは先送りされ、来年の新議定書採択につながる政治合意ができるかどうかが焦点である。

ここで大切なのは、日本が不利な削減義務を負った京都議定書の二の舞いを演じないことだ。

鳩山首相は、自ら掲げた目標の達成に取り組む前提条件として、「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意」を挙げている。最後までこの条件を堅持していかなければならない。

京都議定書で削減義務を負っていない2大排出国の米国、中国を相手に、公平な枠組み作りに向けて粘り強く交渉してほしい。

議長国のデンマーク政府が示した政治合意の原案には、先進各国が合意関連文書に削減目標を明記することが盛り込まれている。

この原案が通れば、日本は難しい対応を迫られることになるだろう。米国が示している数値目標は、20年までに90年比で4%前後削減するというものだ。日本との削減率の差はあまりに大きい。

こうしたバランスを欠いた状況では、日本として「25%減」を明記するのは避けねばならない。

途上国側が求めている京都議定書の延長論は到底、受け入れられない。中国など主な途上国も応分の削減責任を負う必要がある。

鳩山政権は、25%削減を達成するための行程を示していない。産業界には高い目標への反発が強まっている。

こうした中、政府がCOP15で不利な条件をのむようなことがあれば、「25%削減」の国内の合意形成は遠のくばかりだろう。

日本政府は、国益を最優先に交渉にあたるべきだ。

産経新聞 2009年12月08日

普天間問題 外相は職を賭し説得せよ

岡田克也外相は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設問題の早期決着に向け、職を賭して鳩山由紀夫首相の説得にあたるべき時である。この問題の先送りは日本の安全保障の根幹を危ういものにしており、いまや国益を損なう事態になっている。

鳩山首相は7日、コペンハーゲンで18日に開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)首脳級会合までに、日本の方針を米側に伝える意向を示したが、なお結論を先送りする考えのようだ。

閣内では移設問題の早期決着を促していた北沢俊美防衛相が先送り論に傾いた。現状では岡田氏が同盟の危機回避へ早期決着を主張する唯一の存在だ。岡田氏はこれまで、嘉手納基地統合案を模索していたが、結局断念した。最近になって「日米同盟の現状に強い危機感を持っている」と述べた。遅きに失した感は否めないが、同盟の現実に対する当然の認識だ。

結論は、米側が主張するように日米合意のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古(へのこ))への移設案だけが、現実的だということに尽きる。日米の政府間の合意を尊重するのは当たり前なのである。この決着を仲井真弘多県知事や名護市も容認してきた。選択肢はこれしかない。

岡田氏が同盟関係に強い危機感を持ったのは、4日の日米閣僚級作業グループで、米国のルース駐日大使が日本の先送り方針に強く反発したためだ。米側は「協議の時期は終わった」との認識に立って日本の決断を促したが、日本側は「社民党が日米合意案に反対している」と連立内部の事情を説明した。国内調整が不十分な理由を挙げられても米側は理解を示しようもない。

岡田氏は、日米協議が難航していることなどを4、5の両日に訪れた沖縄の関係者に伝えた。6日の首相との会談でも日米合意に沿った決着への決断を促したとみられる。だが、首相は「連立政権でもあり、沖縄の期待感もあるので、簡単ではない」と早期決着に慎重論を示している。

普天間問題が解決しなければ、米海兵隊のグアム移転を含む米軍再編も実現しない。

岡田氏が述べた「日米の信頼関係があってこそ、沖縄の負担軽減は前に進む」との認識を首相は共有しているのだろうか。岡田氏は重大な決意で臨むべきだ。

朝日新聞 2009年12月09日

COP15 日欧連携で交渉を前へ

国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)が始まった。地球温暖化を食い止めるため、京都議定書を引き継ぐ新たな国際枠組みの骨格について政治合意をつくる場である。

最大の懸案は、2020年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを減らす中期目標の設定だ。

鳩山由紀夫首相は「1990年比で25%削減」という意欲的な目標を表明した。米国や中国、インドといった主要排出国も続いたが、日本の目標よりかなり低い。国内に「日本だけが重い義務を負わされかねない」との懸念があるのも無理からぬところだ。

今週末の非公式閣僚会合から最終日の首脳会合まで、確かな戦略をもって交渉に臨まねばならない。

基本に踏まえるべきは、日本の「突出」感は他国の目標が低すぎるために増幅されている、ということだ。

世界の科学者らでつくる国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「先進国全体で90年比25~40%削減する必要がある」としている。日本は他の先進国に削減目標を引き上げるよう説得するべきだ。

まず欧州連合(EU)の動きがカギだ。あすからのEU首脳会議で「90年比20%削減」という現行目標の「30%削減」への引き上げを検討する。日本は引き上げを強く促すべきだ。そのうえで日欧が米国に働きかければ、オバマ大統領が米国の削減目標引き上げを議会や世論に訴えやすくなる。

排出量2位の米国が意欲的な目標を掲げない限り、先進国全体としてIPCCの示した水準に届かない。そのことを忘れてはならない。

日米欧がそろって積極的な姿勢を示せば、中国やインドに一層の努力を促す効果も期待できる。両国は国内総生産(GDP)当たりの削減目標しか掲げておらず、経済の成長にともなって総排出量が増える恐れがある。

IPCCは50年までの長期目標として、世界全体の排出量を半減させる必要があるとしている。排出量1位の中国や、日本を抜いて4位のインドは低炭素型の成長をめざすべきだ。

政治合意に削減目標の数値が書き込まれるかどうかは、今後の交渉にかかっている。だが、少なくとも、すべての主要国が削減の意欲を共有し、その決意を政治合意文書にしるすことで来年の交渉につなげたい。

鳩山首相も「25%削減」の前提条件として、「すべての主要国が意欲的な目標に合意すること」をあげている。主要国が意欲的な姿勢を示さないなら、日本も国際合意づくりへ、削減目標を含めた戦略の練り直しを考えておく必要があるだろう。

日本の最終方針は11日の関係閣僚会議で決まる。「25%」が交渉の牽引(けんいん)力となるよう外交戦略を詰めるべきだ。

産経新聞 2009年12月08日

COP15開幕 新議定書につなぐ合意を

地球温暖化防止を目指す国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)がコペンハーゲンで始まった。

事前の計画ではCOP15で、現行の「京都議定書」に続く「新議定書」を決める運びになっていたのだが、その採択は絶望視されている。温室効果ガスの削減義務などをめぐって先進国と途上国の主張に隔たりがあるためだ。

だが、地球の将来がかかった重要な会議である。次善の打開案として目指されている「政治合意」には達してほしい。

そのためには、2大排出国である米国と中国の歩み寄りが不可欠だ。会期最終日(18日)の首脳会合でのオバマ大統領と温家宝首相の思慮ある判断に期待したい。

政治合意の目標は、1年以内に新議定書をまとめることにある。その合意に至るには、先進国側が削減目標値を、途上国側が削減策を、誠意をもって提示することが必要だ。自主目標ではなく、義務を伴う内容が望ましい。

会議では削減率の上積みや対策の強化をめぐって激しい議論が戦わされるはずである。日本は鳩山由紀夫首相が9月に25%削減を表明しているが、この数値はあまりに高い。達成に必要な国民負担も明らかにはされていない。途上国側からの日本に対する事前の要求でさえ19%減ではないか。

米国と中国、インドなどが開幕直前に削減姿勢を示したことで、日本は25%の旗を下げにくくなっている。しかし、真剣に国益を考えるなら、より低い削減率で交渉に当たるべきだ。

途上国が求めている資金援助についても大盤振る舞いは許されない。国民の税金であることを忘れてもらっては困る。

省エネが進み、排出量が少ない日本の場合、削減率を高めても地球全体の温暖化防止にはつながらない。そのことを各国に説明すべきだ。日本が培った火力発電所のメンテナンス技術で途上国に協力する方が、格段の地球益をもたらすはずである。

温暖化問題は、エネルギー安全保障と表裏一体の関係にある。交渉の難しさの一端は、そこにも根ざしている。途上国の間には、日本などの先進国だけが削減義務を負う京都議定書の暫定延長を迫ろうとする声もある。

公平性を無視した要求に対しては、これを断固拒否する毅然(きぜん)とした姿勢も必要だ。

朝日新聞 2009年12月06日

COP15 人類の明日がかかる

明日からデンマークのコペンハーゲンで国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)が始まる。

本来ならこの会議で、京都議定書を引き継ぐ地球温暖化防止の新たな国際枠組みがまとまるはずだった。だが、法的拘束力のある合意にはたどりつけそうにない。

万が一、話し合いが決裂し、温暖化問題が放置されたら――。

「各地で洪水や干ばつが頻発し、世界経済は大恐慌や世界大戦なみの大混乱に陥る」。3年前に英政府に出された報告書『気候変動の経済学』は、そう警告している。

この報告書をまとめた英国の経済学者ニコラス・スターン氏は10月に来日した際、次のように強調した。

「COP15に未来の世代が出席できたら、自然の資産を残してほしいと訴えるはずだ。各国は、そういう願いをふまえて交渉に臨んでほしい」

世代を超え、地球環境という資産を受け継いでいけるのか。世界はいま歴史の岐路に立っている。

昨年から始まった現行の京都議定書の期間は2012年までだ。間を置かず、新たな国際枠組みに移る必要がある。残された交渉の時間は少ない。

先進国の温室効果ガス削減目標や途上国の削減行動、資金や技術の支援などに関し、COP15で包括的かつ具体的な大枠をつくって首脳が政治合意する。それを礎に、できるだけ早く法的拘束力のある新たな国際枠組みをまとめなければならない。

だが、各国の思惑が交錯し、見通しは混沌(こんとん)としている。

途上国は先進国に対して、「大量の温室効果ガスを排出してきた歴史的な責任がある」と、大幅な削減を迫っている。そこには「自らの経済成長には足かせをはめられたくない」という中国やインド、ブラジルなど新興国の利害が色濃く映し出されている。

一方、先進国には「自分たちだけが大幅な削減を約束して損をするのは困る」との警戒感がある。こうした事情から、新たな枠組みをめぐる国際交渉は、今後の世界秩序をにらんだ政治的な駆け引きの場となってきた。

それでも最近、数字的には不十分ながら米中やインド、ブラジルが相次いで努力目標を発表するなど、前向きな動きも広がる兆しがある。

COP15では、こうした流れをうまく増幅し、パワーゲームの構図を乗り越えなければならない。求められているのは、文明を持続可能にする「地球秩序」をともに築く外交である。各国は胸襟を開いて誠実に対話し、この難局を打開してもらいたい。

いまこそ、すべての国々が「共通だが差異のある責任」を分かち合う、という原則を踏まえ、実情に応じた真剣な取り組みを確認すべき時だ。

京都議定書の下では、途中離脱した米国や、途上国扱いの新興国は削減義務を負っていない。世界の排出量の約4割を占める米国と中国に本気で行動してもらうことが必須の条件だ。

いっそうの実効性を確保するには、インドやブラジルなどにも、さらなる努力を促すことが不可欠だろう。

むろん、ただ単に主要国が参加するだけでは事足りない。それぞれの思い切った取り組みが欠かせない。

気候変動枠組み条約は「大気中の温室効果ガスの濃度を、危険でない水準に安定化させること」を目標にしている。具体的には、産業革命前からの気温上昇が2度を超えないようにする、というものである。

気温上昇が2度を超えた場合、生態系が破壊されたり、水不足や洪水、感染症などが広がったりする。

「2度以内」を実現するには、50年に世界全体の排出量を半減させるとともに、先進国が80%削減を実現することが求められている。この長期目標に向かう途上の20年には、先進国は1990年比で25~40%減らす必要があるというのが多くの科学者の見方だ。

新たな「地球秩序」をつくるには、こうした科学的な数値を見すえる姿勢を各国が共有することが欠かせない。

科学がすべてを見通せるわけではないが、予測される結果が極めて深刻なのだから、できるだけ早く手を打つ。そんな京都議定書の精神を、新たな国際枠組みに引き継ぐべきだ。

COP15の歴史的な重みは、スターン氏の言葉を借りると、第2次世界大戦後の国際通貨体制を決めたブレトンウッズ会議にも匹敵する。

気候変動が政治や経済、社会に及ぼす悪影響は、それほど破壊的といえるのである。

世界同時不況のもとでは、温暖化対策に伴う負担増への抵抗感も各国の経済界などに根強い。しかし、グリーンな技術と産業を育て、雇用の場を創出することは、新たな成長の基盤をつくるという意味でも重要だ。

各国が温暖化防止を先延ばしにすれば、砂時計の砂が落ちるように地球環境という資産が消えていく。

もはや小さな政治ゲームに明け暮れている場合ではない。鳩山由紀夫首相やオバマ米大統領ら各国首脳は、地球の未来を決める会議だという認識と決意をもってCOP15に臨んでほしい。

低炭素文明への転換という扉を開こう。そこに人類の明日がある。

朝日新聞 2009年12月04日

普天間越年 鳩山首相は自ら道筋を

日米の合意は重い。基地負担を軽減してもらいたいという沖縄県民の思いにも応えたい。米海兵隊の普天間飛行場の移設をめぐって、この二律背反に苦悩していた鳩山政権にもうひとつ、重荷が加わった。

連立パートナーの社民党が、辺野古移設なら連立離脱も辞さずという方針を固めたことだ。政府は態度を決めあぐね、年内を目指していた問題の決着を先送りする見通しになった。

米政府が求めている辺野古への移設を受け入れるのか。自民党政権時代の合意であるこの案を見直し、辺野古以外を探るのか。とても難しい選択だ。

鳩山由紀夫首相は、辺野古以外の候補地も検討するよう岡田克也外相らに指示したが、いずれにしても政治的に大きなコストを伴う判断になる。

だが、方向感を示さないまま判断をただ先送りすれば、ぐずぐずと決断できない政権という、不名誉な印象が国内外に広まっていく。国民や沖縄県民もそうだろう。そして米国政府は失望し、不信を募らせるに違いない。

首相はなぜ結論を先送りするのか、もつれる諸条件の何を優先してこうなっているのかを、国民にも米政府にもはっきりと説明すべきだ。

首相は「年内じゃなければだめだと申し上げたことはありません」と語った。だが、問題は検討に時間をかければ、いずれどこかに落ち着くというほど簡単ではない。

来日したオバマ米大統領は鳩山政権の苦衷に理解を示し、作業部会で検討を続けることを受け入れた。以後、岡田外相や北沢俊美防衛相は精力的に調整を進めてきた。年内決着を目指しての動きだったのはもちろんだ。

結論が日米合意の継承なのか、見直しの提起なのかはともかく、それが早期の打開を目指すとしてきた新政権としての当然の態度である。

ここに来て流れが変わったのは、社民党が辺野古案への反対を明確にしたことだ。首相は「重く受け止める」と語り、連立への配慮が判断の背景にあることを認めた。

政府内では、辺野古移設を土台にした修正案で打開を探る動きがあった。だが、社民党を連立に引き留めるためには封印しようということだろうか。

参院での過半数確保を優先した判断だとすれば、普天間問題は事実上、来夏の参院選まで動かないことになる。

首相が辺野古以外の選択肢を追求する意思があるなら、それも重い判断である。政権が交代した時にそうした見直しを米国に求めるのは、欧州の同盟国でもあることだ。

ただ、国内調整にも対米交渉にも時間がかかる。必要なのは、その方が日米同盟の長期的な安定に役立つという説得力のある説明だ。内政上の理由でただ先送りでは、失うものは大きい。

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