スー・チー来日 官民連携で国造りを支えたい

読売新聞 2013年04月19日

スー・チー来日 官民連携で国造りを支えたい

ミャンマーの最大野党である国民民主連盟(NLD)の党首アウン・サン・スー・チー氏が日本政府の招きで来日し、安倍首相や岸田外相らと相次いで会談した。

スー・チー氏の来日は、民主化運動に身を投じる前の1980年代半ば、京大客員研究員として滞在して以来27年ぶりだ。

スー・チー氏は軍政と対立し、約15年間も自宅軟禁を強いられていた。今回の来日実現は、2年前の民政移管後、テイン・セイン政権が推進しているミャンマーの民主化を象徴するものだ。

日本政府はこれまで、テイン・セイン政権の改革を歓迎し、円借款など政府開発援助(ODA)の再開を欧米に先駆けて決めるなど積極的に支援してきた。

NLDとの関係を強めるのは、議会内で健全な野党が育つことがミャンマーの一層の民主化と社会の安定につながるとの判断があるからだ。2015年の総選挙でNLDが勢力を拡大しそうだという背景もある。

安倍首相は会談で、「改革が一層進展するよう支援していきたい」と述べ、ODAと民間投資の両面でミャンマーの国造りを支える日本政府の方針を説明した。

スー・チー氏も「発展に協力してほしい」と語り、職業・農業教育などでの支援を求めた。

スー・チー氏は昨春の下院議員当選以来、在野の民主化運動指導者から現実的な政治家への脱皮を図っている。支持者の期待に応えるには、生活水準の向上など具体的な成果を必要としていよう。

ミャンマーの国造りの道のりは険しい。さらなる民主化には、スー・チー氏が訴える通り、軍の政治的影響力を保証するために定められた議会の軍人枠の撤廃など、憲法の改正が避けられまい。

対立が続く少数民族との関係改善も難航し、国民和解の道筋はまだ見えない。治安悪化は日本企業の投資熱に水を差しかねない。

日本は最大の経済支援国だ。少数民族の生活の底上げや、道路や電力の整備など社会の安定に寄与する開発支援に、官民が連携して取り組む意義は大きい。

インド洋と南シナ海を結ぶ要衝に位置するミャンマーの戦略的価値は高まる一方だ。ミャンマーは軍政時代の中国一辺倒の外交から転換し、日本や米国、インドとの関係を強めつつある。

軍事・経済両面で膨張し、影響力を増大する中国を(けん)(せい)する上でも、ミャンマーとの関係を深めることが日本には重要である。

産経新聞 2013年04月22日

スー・チー氏 現実路線の深化求めたい

ミャンマーの最大野党党首アウン・サン・スー・チー氏が安倍晋三首相との会談をはじめ1週間の訪日日程を終えた。

スー・チー氏は、次期大統領に意欲を示している。ノーベル平和賞も受けた「民主化運動のヒロイン」から、責任ある政治指導者へと成長するため、現実路線をさらに深化させていくよう求めたい。

2011年3月に民政移管を果たしたミャンマーで、氏は昨年4月、国会議員に当選した。以来、政権批判を封印したとして非難にさらされることも少なくない。

少数民族武装勢力と政府側との戦闘では、少数民族側の期待に反して中立姿勢を取り、地元住民が反対する中国企業の銅山開発では「継続」の判断を下した。

スー・チー氏は日本記者クラブでの会見で「すべてが満足するカラフルな発言はできない。国民に正直でありたい」と語った。現実路線の表明と受け止めたい。

軍政下のミャンマーは、人権弾圧を理由とする欧米の経済制裁によって孤立し、手を差し伸べた中国が次第に影響力を強めた。民主化への転換は、過度の対中依存からの脱却も目指すと考えたい。

ミャンマーでは民族、宗教間の対立が顕在化し、旧政権側と民主化勢力の反目もある。「和解」が国づくりのキーワードだ。

スー・チー氏は会見で、和解実現に向け、「互いを信頼するため法の支配の確立が最も重要だ」とも述べた。これを忘れないでほしい。力の支配に戻ってはならず、力の支配を志向する国と手を組んでは法の支配の否定となる。

安倍政権は、法の支配や民主主義を共有する国々との間の「価値観外交」を推進している。ミャンマーには、そのパートナーのひとつとなってもらいたい。同国との連携強化は、陸続きの中国を牽制(けんせい)する意味でも、日本企業の中国に代わる投資先確保という観点からも極めて重要だ。

スー・チー氏は初め、軍政寄りとみられてきた日本からの招請には消極的だったという。しかし、京都、東京の大学で若者らに熱心に語りかけた。27年前の滞日時と比べ、日本の若者がミャンマーについてよく知っていることに感銘を受けたとも話した。

日本とミャンマーの結びつきは新たな段階に入ろうとしている。スー・チー氏の来日を、両国の協力関係構築の契機としたい。

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