大学生活はどうかな。君の先輩たちは企業からの電話待ちでおちつかない毎日だろうか。
就職活動の解禁を今より3カ月遅らせて、3年生の3月にしたい。安倍首相が経済団体に要請する。ニュースを聞いて君はどう思った?
3年間は勉強や学生生活に打ち込めるようになるね。
ただ、長い目でみると、もっと根本的に就活のありかたを見直したほうがいいと思う。
これからは、与えられたものをこなすより、自力で問題を解決する変革の力が要る。そこは大学も経済界も一致している。新興国に追われる立場の日本は付加価値をつけた商品やサービスで勝負するしかない。
ところが、学生は勉強時間が少なすぎて思考力が育たない。在学中は学びに集中できるよう就活に奪われる時間をへらしたい――。政府が解禁時期の後ろ倒しを企業側に働きかけてきたのは、そのためだ。
高校では大学受験、大学では就活。君たちはいつも今やりたいことより、先の対策に追われてばかり。これで自分の考えや個性を持てとは酷だ。
これからは、会社が社員の訓練や能力開発に責任をもってくれる保証はない。正社員にさえなれば、定年まで年功序列。そんな道筋は崩れている。
正社員の解雇規制緩和を政府が論じているでしょ。人材のほしい業界へ、過剰になった業界から即戦力を移しやすくする。そうなれば、企業は一から自前で若手を育てなくていい。厳しいけれどそんな時代だ。
だから君たちには必要な能力を自分でみがく時間が要る。
小手先の就活対策より考える力をきたえないと。労働法制のような身を守る大切な知恵も。それは大学の責任でもある。
企業はどうして新卒にこだわるのだろう。既卒者の採用が普通になれば、大学でたっぷり学んだうえ卒業後に留学やボランティアもできる。骨太な新戦力を雇えるのに。就職が遅くなれば親の負担は増すけれど。
就活の意識調査をしたNPOライフリンクの人から、ある就活生の言葉を聞いたんだ。
就活とは、ルールがわからないまま一人で参加するゲーム。
「リクルーターはいない」と言われたのに、他大学の子には付いた。そんな大人たちの反則行為をみて、若者は社会に出る前から社会に不信を抱く――。やりきれない分析だった。
就活で問われるのは学生の資質だけではない。私たち大人の公正さもみられている。そう心にきざみたい。
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