憲法96条改正 参院選前の提出を進めよ

読売新聞 2013年04月17日

憲法96条改正 首相は参院選へ議論主導せよ

現憲法は制定以来一度も改正されていない。

安倍首相は憲法改正のハードルを下げることを有権者に問おうとしている。日本と国際社会の変化に対応できる憲法にするための積極的な姿勢は評価できる。

首相は読売新聞のインタビューで、改正の発議要件を定めた96条について「参院選の中心的な公約として訴えたい」と語った。

96条は、衆参各院の「3分の2以上」の賛成で国会が発議し、国民投票で過半数の賛成を得なければならないと規定している。

自民党は改正を発議しやすくする目的で、「3分の2以上」を「過半数」とする方針だ。

首相は既に日本維新の会の橋下共同代表と会談し、この点で一致した。他党も賛同する96条の見直しから憲法改正への道を開こうという考え方は現実的だ。

首相にとって憲法改正の実現を図るうえでの懸案は、公明党との調整だ。公明党は96条改正について、「熟度が足りない」と依然慎重な構えを見せている。

ただ、自公両党は党首会談を定期化し、協議を重ねるという。公明党内で、憲法改正への議論が深まることを期待したい。

民主党は、96条よりも改正の具体的な中身の議論が必要との見解を示しているが、中身の議論が求められるのは、むしろ民主党の方ではないか。自民党は既に、9条に自衛隊の存在を書き込むなど憲法改正の草案をまとめている。

96条の改正には反論もあろう。国民投票はないものの、米国やドイツは議会の「3分の2以上」の賛成などを改正の条件としているからだ。そうした国々が何度も憲法を改正してきたのに、日本はなぜそれができなかったのか。

戦後、非武装・中立を掲げる社会党などが一定の勢力を占め、憲法を改正すれば軍国主義が復活すると喧伝(けんでん)した。自民党も経済優先路線を推し進めて、憲法改正に積極的に取り組まなくなった。

選挙制度も足かせだった。中選挙区制時代から衆参そろって政権与党が「3分の2以上」を確保できた例はない。現行制度も、衆参いずれも小政党に配慮した比例代表選を一部導入しており、昨年末の衆院選までは難しかった。

7月の参院選は、結果次第で初めて憲法改正が可能な状況が生まれよう。日本の針路にもかかわる、極めて重要な選挙となる。

憲法の論点は96条をはじめ、前文、安全保障、二院制、地方自治、環境権など幅広い。各党は積極的に論戦を展開すべきである。

産経新聞 2013年04月14日

憲法96条改正 参院選前の提出を進めよ

憲法改正の発議要件を定めた96条の改正案が、参院選前に提出される可能性が出てきた。今国会で審議が行われれば、夏の参院選でより大きな争点になることは必至である。自民党を中心に提出時期などの検討を急いでほしい。

自民党憲法改正推進本部の会合で、保利耕輔本部長は「参院選前の改正案提出もあり得る」との認識を示した。保利氏は会合後、「政治的に高度な判断が必要だ。安倍晋三総裁ともよく相談して決めなければならない」と話した。

安倍首相と日本維新の会の共同代表、橋下徹大阪市長は9日の会談で、改正の発議要件を衆参両院の「3分の2」以上の賛成から、「2分の1以上」に緩和すべきだとの認識で一致した。みんなの党も要件緩和を主張している。

今国会に改正案が提出されれば衆院を通過する可能性はあるが、参院での成立は困難とされる。改正案が成立しなくても、国会への提出は改憲論議を深める有意義な方法である。

問題は、自民党と連立を組む公明党の山口那津男代表が「憲法改正は連立政権合意の枠外だ」と憲法改正で自民党と距離を置く考えを重ねて示していることだ。

昨年暮れの連立合意文書は、憲法について「憲法審査会の審議を促進し、憲法改正に向けた国民的な議論を深める」としている。議論を深めるためにも具体的な改憲論議が必要だろう。

菅義偉官房長官は「環境問題は現行憲法ができたとき、全くなかった。時代の流れに合わせて改正する必要がある」と述べた。環境権は「加憲」の立場の公明党が主張している新しい権利である。それを新憲法に明記するためにも、まず96条改正が必要である。

公明党は今月中に96条改正に対する党の見解をまとめる方針だ。12日の安倍首相と山口代表の会談では、両党間で温度差がある憲法改正問題についても意見が交わされ、定期的に会合を持つことになった。公明党は、現行憲法の具体的な中身の改正の前提となる96条改正の意味を理解すべきだ。

衆院憲法審査会では、維新と、みんなの党が首相公選制導入や一院制を主張し、自民、公明両党などがこれに反対した。憲法裁判所の設置をめぐっても、意見が分かれた。参院選に向け、96条以外の改憲論議も盛り上げたい。

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