18年前の、あの日を思い出した人も多かったのではないか。 先週末、兵庫県・淡路島で起きた地震だ。阪神大震災とほぼ同時刻の早朝、近畿では震災以来の震度6弱を観測した。島で多くの建物が壊れ、5府県の27人が負傷した。大震災より揺れの規模が小さかったこともあり、命を失う人はいなかった。
大震災を経験した住民からは「教訓が生きた」との声が聞かれた。倒れやすい家具を寝室に置かずにけがを免れたり、復興住宅のお年寄りらが声をかけあって一緒に避難したりした。島内の自治体でも職員がすみやかに出勤し、対応にあたった。
ただ、過去の体験をどう生かすかで、防災力が左右されることを忘れてはならない。大惨事には至らなかった今回の地震でも、教訓がたくさんある。
政府の地震調査委員会は、阪神大震災を起こした活断層の南西側に潜んでいた未知の活断層が動いたとの見解を示した。広い意味で余震だという。心配されている南海トラフ地震との関連は不明だが、西日本は阪神大震災以降、地震の活動期に入っているとの見方もある。
地震はいつどこで起きてもおかしくないことが、改めて身にしみた。より揺れが大きく、津波をともなう地震でしっかり対応できるのか。身の回りの備えを確認しておきたい。
阪神大震災後に導入された新技術も今回の揺れで活用された。兵庫県が独自開発したシステムは地震発生7分後に「死者10人、避難者1万6778人」と予測し、県は淡路島に救援物資を運び込んだ。結果的に過大な予測だったが、災害時に「大きめに構える」のは緊急対応としてはむしろ必要なことだ。他の自治体も参考とすべきだ。
一方、10万人が登録している大阪府の防災情報メールは、地震発生後に配信されなかった。気象庁から届く電文の書式が変更されており、システムが読み取りエラーを起こした。
情報技術を活用したシステムは専門度が高く、メーカー任せの自治体も多い。緊急時にシステムが効果を発揮できるよう、自治体は日頃から演習などを徹底しなければならない。
関西では朝から電車が長時間止まり、130万人以上が影響を受けた。平日の夕方に地震が直撃していたら多くの帰宅困難者が生じた恐れがあった。
企業に食糧備蓄などを求めた条例を今月施行した東京都に比べ、関西圏の帰宅困難者対策は緒についたばかりだ。他の多くの自治体でも同様であり、具体策を急いでほしい。
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