淡路島で6弱 耐震化で直下型に備えよ

朝日新聞 2013年04月17日

淡路島地震 教訓から高まる防災力

18年前の、あの日を思い出した人も多かったのではないか。 先週末、兵庫県・淡路島で起きた地震だ。阪神大震災とほぼ同時刻の早朝、近畿では震災以来の震度6弱を観測した。島で多くの建物が壊れ、5府県の27人が負傷した。大震災より揺れの規模が小さかったこともあり、命を失う人はいなかった。

大震災を経験した住民からは「教訓が生きた」との声が聞かれた。倒れやすい家具を寝室に置かずにけがを免れたり、復興住宅のお年寄りらが声をかけあって一緒に避難したりした。島内の自治体でも職員がすみやかに出勤し、対応にあたった。

ただ、過去の体験をどう生かすかで、防災力が左右されることを忘れてはならない。大惨事には至らなかった今回の地震でも、教訓がたくさんある。

政府の地震調査委員会は、阪神大震災を起こした活断層の南西側に潜んでいた未知の活断層が動いたとの見解を示した。広い意味で余震だという。心配されている南海トラフ地震との関連は不明だが、西日本は阪神大震災以降、地震の活動期に入っているとの見方もある。

地震はいつどこで起きてもおかしくないことが、改めて身にしみた。より揺れが大きく、津波をともなう地震でしっかり対応できるのか。身の回りの備えを確認しておきたい。

阪神大震災後に導入された新技術も今回の揺れで活用された。兵庫県が独自開発したシステムは地震発生7分後に「死者10人、避難者1万6778人」と予測し、県は淡路島に救援物資を運び込んだ。結果的に過大な予測だったが、災害時に「大きめに構える」のは緊急対応としてはむしろ必要なことだ。他の自治体も参考とすべきだ。

一方、10万人が登録している大阪府の防災情報メールは、地震発生後に配信されなかった。気象庁から届く電文の書式が変更されており、システムが読み取りエラーを起こした。

情報技術を活用したシステムは専門度が高く、メーカー任せの自治体も多い。緊急時にシステムが効果を発揮できるよう、自治体は日頃から演習などを徹底しなければならない。

関西では朝から電車が長時間止まり、130万人以上が影響を受けた。平日の夕方に地震が直撃していたら多くの帰宅困難者が生じた恐れがあった。

企業に食糧備蓄などを求めた条例を今月施行した東京都に比べ、関西圏の帰宅困難者対策は緒についたばかりだ。他の多くの自治体でも同様であり、具体策を急いでほしい。

産経新聞 2013年04月16日

淡路島で6弱 耐震化で直下型に備えよ

兵庫県の淡路島で震度6弱の激しい揺れを観測した13日早朝の地震について、政府の地震調査委員会は阪神・淡路大震災(平成7年)と「何らかの関連がある」との見解を示した。

今回の地震はマグニチュード(M)6・3で、阪神大震災(M7・3)のエネルギーの約30分の1の規模だ。それでも、近畿と中四国地方の広い範囲で震度4以上の揺れを記録し、約2千棟の建物が損壊した。

死者が出なかったのは、18年前の大震災と2年前の東日本大震災を教訓に、住民や自治体が冷静に対応できた面も大きい。教訓を忘れず、備えを続けることが被害軽減につながる好例である。

また、18年もの“潜伏期間”を経て発生した今回の地震を契機に、地震防災の最優先課題が建物の耐震化であるという「阪神」の教訓を再認識したい。

東日本大震災以降、「想定外」をなくすことに地震防災の重点が置かれた。「最悪で死者32万人、経済被害220兆円」という被害想定が公表された南海トラフ巨大地震は、その象徴といえる。

危機管理の観点から「千年に1度」の巨大地震・津波に備えることも必要だが、まずは「日本列島のどこで、いつ起きてもおかしくない」とされるM7級の内陸直下型地震対策として、耐震化に万全を期すことがより重要だ。

南海トラフの前回の活動期を振り返ってみよう。

終戦を挟んだ昭和18年から23年にかけて、18年鳥取(M7・2、死者1083人)▽19年東南海(M7・9、死者・不明1223人)▽20年三河(M6・8、死者2306人)▽21年南海(M8・0、死者1330人)▽23年福井(M7・1、死者3769人)-と、死者数が千人を超える大地震が5回も発生した。

東日本大震災と同じ海溝型は東南海と南海地震で、全体では内陸直下型の3地震による被害の方が大きい。巨大津波対策を偏重することへの警鐘である。

地震調査委は、淡路島の地震と南海トラフ地震の関連について「今回だけで切迫度を議論するのは難しい」としているが、南海トラフの次の活動期が近づいていることは間違いない。首都直下地震の切迫性も高い。震災の教訓を生かし、次世代に正しく伝えることは国民一人一人の責務である。

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