ケリー氏来日 「対中観」を聞きたかった

読売新聞 2013年04月16日

ケリー長官来日 対中朝で日米連携を強化せよ

北朝鮮の瀬戸際戦術や中国の威圧的な外交に効果的に対応するには、日米両国が連携を一段と強化することが重要だ。

ケリー米国務長官が来日し、安倍首相、岸田外相と個別に会談した。北朝鮮に弾道ミサイルの発射の自制を求めるとともに、北朝鮮の核保有を容認せず、非核化に向けた具体的な行動を促す方針で一致した。

意図的に危機を高めたうえ、交渉を通じて経済支援を得ようとするのは北朝鮮の常套(じょうとう)手段だ。「北朝鮮が挑発行為を繰り返しても、何ら利益にならないことを理解させることが必要だ」との安倍首相の指摘は適切である。

日米両国は、ミサイル防衛など軍事的な備えを怠らない一方、恫喝(どうかつ)には過剰に反応せず、対北朝鮮制裁措置を着実に実施するなど、冷静かつ断固たる対応を継続しなければなるまい。

北朝鮮に一定の影響力を持つ中国が前向きな責任を果たすよう、働きかけることも大切だ。

ケリー長官は講演で、「米国は実現性のある真剣な非核化交渉の用意がある」と強調した。

北朝鮮に核開発を断念させるのは簡単でないが、国際社会は追求し続けるべきだ。北朝鮮がいずれ6か国協議の再開などの対話路線に戻ることもあるだろう。

その際、北朝鮮の具体的行動がないままでの経済支援は禁物だ。北朝鮮の威嚇外交を奏功させないよう、日米中韓4か国が慎重に政策をすり合わせる必要がある。

ケリー長官は日米外相会談で、尖閣諸島について「一方的、強制的に現状を変えるような行動に反対する」と明言した。

1月のクリントン前長官の発言と同様、日本の実効支配を中国が実力で変更することを明確に否定した意義は大きい。日本側の事前調整の成果と言える。

強引な公船の派遣などで領有権や海洋権益の拡大を図る中国の手法を通用させてはならない。中国に国際法とルールを順守させることが国際社会にとって共通の課題であると、日本は粘り強く訴えていくことが重要である。

ケリー長官の2月の就任以来3回目となった日米外相会談では、普天間飛行場の辺野古移設、在沖縄海兵隊のグアム移転など在日米軍再編や、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を着実に進めることも確認した。

北朝鮮、中国政策での日米協調を高めるためにも、頻繁な対話を通じて、日米間の課題を前進させることが求められる。

産経新聞 2013年04月16日

ケリー氏来日 「対中観」を聞きたかった

米国のケリー国務長官が安倍晋三首相、岸田文雄外相と会談、東アジア歴訪を締めくくった。

対北朝鮮政策、尖閣諸島、普天間移設、さらにはシリア、中東情勢など同盟国らしい幅広い分野に議題が及んだ。

半面、初の東アジア歴訪にしては、米国が中国との関係でどのような構想を描いているのか、将来の日米同盟関係にも関連する「大きな青写真」がほとんど見えてこなかったのは残念だ。

両外相は先週、ロンドンでのG8(主要8カ国)外相会合の機会にも会っている。短期間での2度の会談は、東アジア歴訪を欧州・中東歴訪より後回しにしたことへの米側の配慮が感じられる。

外相会談では、北朝鮮の核・ミサイルへの厳しい認識を共有、核開発阻止のための高官協議開催で合意した。米側は普天間飛行場移設の埋め立て申請を評価した。

サイバー攻撃対策の対話開催で合意し、気候変動に関する共同文書も発表した。同盟関係の「深化」につながる動きであり、前政権時代に危機にひんした両国関係復活の一歩と歓迎したい。

ケリー氏は来日に先立って中国、韓国を訪問し、やはり北朝鮮問題などを協議している。

平壌に圧力をかけることでは一致したようだが、カギを握る中国側がどのような具体的な方策に触れたのか、日本側との会談で多くは明らかにされなかった。

何より気になるのは、一連の会談を通じて、米国の最大のライバルに躍り出た中国に関する言及そのものが少なかったことだ。

ケリー氏は東京工業大学での講演で、「アジア太平洋でプレゼンスを構築し続ける」と表明した。国防費削減を余儀なくされている中で、どう具体化するのか。南シナ海での中国の動きへの対抗手段など緊急、具体的な課題にも触れられなかった。経済の結びつきを重視するゆえの中国への配慮ではないことを願いたい。

尖閣問題に関しては、「日本の施政下にある。一方的に現状を変更するいかなる行動にも反対する」と強調した。中国公船による尖閣での領海侵犯などが相次いでいる中、今後もこの認識を維持してほしい。

ケリー氏は首相との会談で、中国の動きへの懸念を表明したが、対中政策については、これからも日本との緊密な協議が必要だ。

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