与野党は、「違憲」状態の解消を最優先し、法案の速やかな成立を図るべきである。
政府が、衆院小選挙区定数の「0増5減」を実現する区割り法案(公職選挙法改正案)を衆院に提出した。
法案は、衆院選挙区画定審議会が3月に安倍首相に勧告した区割り改定案に基づき、17都県42選挙区を見直すものだ。2010年国勢調査に基づく「1票の格差」は、最高裁が「合理的」と判断する2倍未満に縮小される。
先の衆院選での「1票の格差」を巡る行政訴訟17件のうち、各高裁は15件の「違憲」判断を示した。一連の訴訟について、最高裁は今秋にも判決を出すとみられる。
国会の姿勢としても、違憲状態の是正を図るのが筋だろう。
ところが、民主党など大半の野党は、法案に反対する構えだ。
最高裁は、各都道府県にまず1議席を割り振る「1人別枠方式」が格差の主因だとし、廃止を求めたが、今回の法案には別枠方式が残っているからだという。
民主党の細野幹事長は、「0増5減では、違憲状態の解消には不十分だ」と述べ、大幅な定数削減を含む抜本改革に向けた与野党協議を求めている。
だが、民主党は昨年11月、0増5減の大枠を決めた選挙制度改革法には賛成したはずだ。ご都合主義ではないか。
抜本改革に関する各党の主張の隔たりは大きい。合意形成が困難である以上、0増5減の区割り法案を早期に成立させることが立法府の最低限の責務だ。
そもそも、多くの政党が定数削減と絡めた改革案を唱えていること自体がおかしい。民主党は消費増税で国民に負担を求めるため、国会議員の身を切る必要があると言うが、「1票の格差」是正とは次元の異なる問題である。
定数の削減数を競うような議論は疑問だ。参院選を前に国民受けを狙ったポピュリズム(大衆迎合主義)そのものではないか。
日本の国会議員の定数は、他の先進国と比較すると、人口比ではかなり少ない。様々な民意を幅広くすくい上げ、適切な行政監視機能を確保する必要もある。
与党内では、野党との合意がまとまらずに参院で法案が否決、あるいは採決されない場合、憲法59条に基づいて衆院で再可決し、成立させる案が浮上している。
6月の会期末まで、時間は限られている。これ以上、「違憲」は放置できない。緊急措置としての再可決もやむを得ないだろう。
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