「0増5減」 再議決も含め先行決着を

読売新聞 2013年04月14日

衆院選挙制度 「格差」と定数削減は別問題だ

与野党は、「違憲」状態の解消を最優先し、法案の速やかな成立を図るべきである。

政府が、衆院小選挙区定数の「0増5減」を実現する区割り法案(公職選挙法改正案)を衆院に提出した。

法案は、衆院選挙区画定審議会が3月に安倍首相に勧告した区割り改定案に基づき、17都県42選挙区を見直すものだ。2010年国勢調査に基づく「1票の格差」は、最高裁が「合理的」と判断する2倍未満に縮小される。

先の衆院選での「1票の格差」を巡る行政訴訟17件のうち、各高裁は15件の「違憲」判断を示した。一連の訴訟について、最高裁は今秋にも判決を出すとみられる。

国会の姿勢としても、違憲状態の是正を図るのが筋だろう。

ところが、民主党など大半の野党は、法案に反対する構えだ。

最高裁は、各都道府県にまず1議席を割り振る「1人別枠方式」が格差の主因だとし、廃止を求めたが、今回の法案には別枠方式が残っているからだという。

民主党の細野幹事長は、「0増5減では、違憲状態の解消には不十分だ」と述べ、大幅な定数削減を含む抜本改革に向けた与野党協議を求めている。

だが、民主党は昨年11月、0増5減の大枠を決めた選挙制度改革法には賛成したはずだ。ご都合主義ではないか。

抜本改革に関する各党の主張の隔たりは大きい。合意形成が困難である以上、0増5減の区割り法案を早期に成立させることが立法府の最低限の責務だ。

そもそも、多くの政党が定数削減と絡めた改革案を唱えていること自体がおかしい。民主党は消費増税で国民に負担を求めるため、国会議員の身を切る必要があると言うが、「1票の格差」是正とは次元の異なる問題である。

定数の削減数を競うような議論は疑問だ。参院選を前に国民受けを狙ったポピュリズム(大衆迎合主義)そのものではないか。

日本の国会議員の定数は、他の先進国と比較すると、人口比ではかなり少ない。様々な民意を幅広くすくい上げ、適切な行政監視機能を確保する必要もある。

与党内では、野党との合意がまとまらずに参院で法案が否決、あるいは採決されない場合、憲法59条に基づいて衆院で再可決し、成立させる案が浮上している。

6月の会期末まで、時間は限られている。これ以上、「違憲」は放置できない。緊急措置としての再可決もやむを得ないだろう。

産経新聞 2013年04月17日

予算案衆院通過 次は社会保障の抑制策だ

平成25年度予算案が衆院を通過した。5月半ばまでの成立を確実にした安倍晋三首相が次になすべきは、医療、年金などを持続可能とする社会保障制度改革だ。

社会保障費の抑制は、国民に新たな負担を求める苦い薬である。だからといって、結論を参院選後に先送りする姿勢では、国民が抱く将来への不安を解消することはできない。

重要なことは、経済成長を実現し、諸制度の改革を通じて「強い日本」への道筋をつけることだ。そのことが、結局は財政への信認回復にもつながる。

消費税増税を含む社会保障と税の一体改革を進めた自民、公明、民主の3党間ですら、具体的な制度改革の議論は進んでいない。社会保障費の抑制は消費税増税の前提だったはずだ。

3党合意で設けられた社会保障制度改革国民会議は、財界や労組、自治体などからの意見聴取を重ねている。だが、作業は遅れ気味だ。設置期限とされる8月21日までに明確な結論を出せるのかどうかは疑問である。

政権与党として参院選前に具体案を示し、有権者の判断を問う責任ある態度が求められる。

高齢の有権者の反発を恐れ、特例措置を続けているのだろうが、医療費も支払い能力に応じた負担を求めるのは当然だ。年金も給付額の見直しや支給開始年齢の引き上げなどに切り込まなければ制度は破綻する。若い世代に負担増を求める現状はバランスを欠く。

70~74歳の医療費窓口負担を1割に抑えている特例措置を早急にやめるべきだ。首相は16日の衆院予算委員会で「基本的には原則の方向(2割負担)に向けて実施していきたい」と答弁したが、時期などを明確に示す必要がある。

予算の効率的執行にも引き続き目配りが必要だ。先の補正予算を合わせれば10兆円規模となる公共事業費も、景気浮揚効果は限定的なものとならざるを得ない。

金融緩和と財政出動に続く「3本目の矢」となる成長戦略は、安定した経済成長の実現に欠かせない。民間企業の創意工夫を引き出す大胆な規制改革が安倍政権には求められている。

農業や福祉・医療などの規制緩和は新規参入を促し、新市場の創造、雇用拡大につながる。政府の産業競争力会議や規制改革会議などと具体的に詰めてほしい。

産経新聞 2013年04月14日

「0増5減」 再議決も含め先行決着を

「一票の格差」を放置して厳しい警告を司法から突き付けられたというのに、切迫感のあまりの乏しさに唖然(あぜん)とする。

国会に提出された衆院小選挙区の「0増5減」を実現する公職選挙法改正案の先行処理に対し、民主党など野党6党が反対で足並みをそろえている。改正案は衆院を通過しても、与党が過半数を持たない参院で可決、成立するのか見通せない状況だ。

「0増5減」は立法府がとるべき最低限の責務であり、今国会で決着を図るのは当然である。参院で否決される事態となれば、自民、公明両党は衆院の3分の2の賛成で可決できる憲法の再議決の規定を使ってでも、改正案の成立を図らねばならない。

「0増5減」は昨年の衆院解散前に自民、公明、民主3党の合意で関連法が成立した。政府が提出したのは、それに基づき衆院選挙区画定審議会が勧告した新区割りを実現するための法案だ。

今になって民主党が反対に回り、他の野党を巻き込んで国会攻防の焦点にしようとしているのはあまりにも無責任である。

野党側は選挙制度改革や定数削減などを強く主張し、「0増5減」を切り離して成立させることを批判している。緊急是正策で問題が解決しないのはその通りで、「一票の格差」を2倍未満に抑えた新区割り案でも、人口変動によりすでに2倍を超える選挙区が生じたとの試算が出ている。

抜本的な選挙制度改革などに取り組むのは当たり前だ。自民党の石破茂幹事長も与野党の実務者協議を開くとしている。

ただ、その中身は、各党間で隔たりが大きい。自民党は比例代表定数の30削減と比例代表で第2党以下のための「優先枠」60を設ける案を示しているのに対し、民主党は選挙区30、比例代表50、また維新は選挙区60、比例代表84の削減を掲げている。

現状のまま議論に入れば、最低限の措置さえ実現できなくなることが予想される。「0増5減」の先行処理はやむを得ない。

「政治家が身を切る改革」として定数削減の幅を競い合うようでは、国民向けのポーズと受け止められかねない。野党内にも先行処理はやむを得ないとの考え方はある。まず「0増5減」を実現し、そのうえで抜本改革に取り組むことを重ねて求める。

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