出遅れによる不利な立場をいかに巻き返すか。政府は総力を挙げて交渉に臨まねばならない。
日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向け、最大のハードルだった米国との事前協議が決着した。
米国政府は議会に日本の参加を通知し、90日間の手続きを経て今夏に承認が得られそうだ。
11か国が進めているTPP交渉に日本が参加するには、すべての国の同意が必要である。
態度を保留していたカナダ、豪州、ニュージーランドも近く、同意するとみられ、日本が参加できる条件がようやく整う。7月にも日本が交渉のテーブルに着くめどがついたことを歓迎したい。
日米合意は、米国が日本から輸入する乗用車とトラックにかけている関税率の引き下げと撤廃時期を「最大限に後ろ倒しする」ことがポイントだ。輸入増を警戒する米自動車業界に配慮した。
日本郵政グループ傘下のかんぽ生命保険による新規事業は凍結する。政府出資が残る日本郵政の業務拡大は「公正な競争を阻害する」という、米保険業界の主張に沿った決着と言える。
米議会では、自動車や保険業界などと連携して日本参加を牽制する動きが出ていた。日本政府が早期参加の実現を最優先し、米側に譲歩したのはやむを得ない。
11か国はTPP交渉の年内妥結を目指している。残された時間は少なく、日本の参加が遅れれば遅れるほど、通商ルール作りに関与できる余地が狭まるからだ。
一方、事前協議で「日本には一定の農産品といった慎重に扱うべき事柄がある」とも確認した。
自民党はコメ、麦など農産品5項目を関税撤廃の例外扱いとするよう政府に求めている。各国からの自由化圧力は強く、米国との合意をテコに日本の主張がどこまで認められるかが焦点となろう。
自動車の関税引き下げ先送りを日本に求める動きが豪州などに広がり、輸出拡大にマイナスとなることにも要注意である。
安倍首相は12日の関係閣僚会議で、「国益を実現する本当の勝負はこれからだ。一日も早く交渉に参加し、交渉を主導していきたい」との決意を明らかにした。
政府は、したたかな戦略で交渉に当たってもらいたい。なにより大事なのは、自由貿易の拡大でアジアなどの活力を取り込み、日本の成長に弾みを付けることだ。
交渉と並行して、一段の市場開放による国際競争に備え、農業強化策を急ぐ必要がある。
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