インターネットを使った選挙運動が、7月の参院選からいよいよ解禁される。
そのための公職選挙法改正案がきょう、衆院を通過する。参院の審議をへて、月内に成立する見通しだ。
選挙期間中は禁じられていた政党や候補者のホームページとブログの更新ができるようになるほか、ツイッター、フェイスブックといった「ソーシャルメディア」を利用した選挙運動が可能になる。
欧米や韓国では、政治と民意をつなぐ重要なチャンネルとして、ネットの選挙利用はすっかり定着している。
遅きに失した感はあるが、後援会や支持団体に寄りかかった閉鎖的な日本の政治文化を変えるきっかけにしたい。
ネット選挙の最大のメリットは、候補者と有権者の双方向性だろう。
従来の選挙公報やテレビの政見放送、街頭演説は、候補者が一方的に意見を発信するだけだった。それに接触できる有権者も時間も限られていた。
ツイッターやフェイスブックを使えば、有権者が候補者に直接質問をぶつけ、回答を聞くことができる。やり取りはネット上で公開され、他の有権者が議論に加わることも可能だ。
支持者以外の幅広い意見を聞くことで、政党や候補者が政策を肉づけしたり見直したりする機会にもなる。
有権者同士の議論や、ネットに慣れ親しんだ若い世代の政治参加を促す契機にもしたい。
もちろん、いいことずくめではない。
米国や韓国の大統領選を見ると、候補者への悪質な中傷がしばしばネット上に流れる。
改正案では、電子メールによる選挙運動を政党と候補者に限った。メールは他の利用者からやり取りが見えず、他人の「なりすまし」や中傷の温床になりやすいという理由からだ。
ただ、同じ内容を書いてもツイッターなら認められ、メールは駄目というのは、わかりにくい。改正案では、将来のメール解禁に含みを残す修正が施された。必要な対策を講じつつ、全面解禁をめざすべきだろう。
海外の先例をみると、ネットは良かれあしかれ、選挙の風景を大きく変えてきた。
ネット空間の大量の情報を政策に反映させる手法が広がる一方、候補者の一瞬の失言が動画で配信され、敗北を決定づけた例もある。
有権者の生の声が届き、政治に緊張をもたらすなら、ネット解禁の意味は大きい。
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