破壊措置命令 即応体制で守りを万全に

毎日新聞 2013年04月09日

破壊措置命令 態勢準備は怠りなく

北朝鮮が国際社会に対する挑発をエスカレートさせている。

中距離弾道ミサイル「ムスダン」を日本海側で発射するための準備とみられる動きを強めるとともに、8日の朝鮮労働党機関紙は、日本に対し、在日米軍も標的に入っていることを自覚すべきだと威嚇した。5日に日本政府が決めた北朝鮮制裁措置延長への対抗なのだろう。

北朝鮮が無謀な行為に及んだ場合に備えて、万全の態勢に向けた準備をするのは当然である。

日本政府は7日、領土、領海へのミサイル飛来、部品落下に備え、迎撃のための「破壊措置命令」を自衛隊に出した。当面、海上配備型迎撃ミサイル「SM3」を搭載したイージス艦を展開させるという。

しかし、破壊措置命令が出された過去3回のミサイル発射と違って、今回は発射地点、方向が不明であるため、迎撃は極めて難しいのが実情だ。それだけに、迎撃態勢だけでなく、被害が出た場合に備えた救援措置にも十分な態勢が必要だ。

政府は今回、過去3回と異なり、破壊措置命令を発令したことを公表していない。これまでは北朝鮮が事前に「人工衛星打ち上げ」名目で事実上のミサイル発射を予告していたが、今回は明言していないことなどを考慮したとみられる。

だが、これまで同様、ミサイル発射の際、自衛隊レーダーや米軍の早期警戒衛星による情報(SEW)を元に全国瞬時警報システム(Jアラート)を通じて国民に警報を伝えるとすれば、事前の作動確認が必要だ。過去には機器の不具合やミスもあった。国民は報道によってすでに破壊措置命令の発令を知っている。

発令を非公表にすることにどれだけ意味があるのだろう。むしろ、公表し、ミサイル発射時の対応などを呼びかけるべきではないか。

韓国政府は、北朝鮮が北東部の核実験場で4回目の核実験を行う準備を整えているとみている。

一連の動きは、昨年12月に行った長距離弾道ミサイルの発射、今年2月に強行した3度目の核実験に次ぐ挑発・威嚇である。先月末には、青森県三沢市、神奈川県横須賀市、沖縄県の在日米軍基地を挙げ、「われわれの射撃圏内にある」と脅迫している。

「ムスダン」は10日前後に発射されるとの見方も出ており、国際社会の緊迫度が増している。

ケリー米国務長官が12日から韓国、中国、日本を歴訪するが、これを待たず、各国は北朝鮮に自制を求める外交攻勢を強めるべきだ。核・ミサイルを使った瀬戸際政策は国際的孤立を深めるだけであり、制裁強化など大きな代償を支払わねばならないことを自覚させる必要がある。

産経新聞 2013年04月08日

破壊措置命令 即応体制で守りを万全に

北朝鮮が弾道ミサイル発射強行の構えを示していることを受けて、小野寺五典防衛相は7日、ミサイル防衛システム(MD)により迎撃する破壊措置命令を自衛隊に発令した。

事前通告なしに発射が強行されることも想定しての発令は初めてだ。いかなる事態にも素早く即応体制をとるという強い決意の披瀝(ひれき)といえる。

政府はこの緊張感を維持して、米国、韓国と連携をとり、今後のわが国の防衛に万全の体制を敷いてほしい。

破壊措置命令は4回目だが、過去の北朝鮮のミサイル発射では、破壊措置にまで至ったケースはない。今回、自衛隊はすでに、日本海にイージス艦を派遣しているが、必要な場合は、躊躇(ちゅうちょ)せずに命令を実行してほしい。

北朝鮮の挑発は3月はじめから始まった。朝鮮戦争の休戦協定を白紙に戻すと宣言し、今月に入ってからは、中距離弾道弾「ムスダン」を列車で日本海側に移動させたことが確認され、近く発射させるとみられていた。

安倍晋三首相は今月初めのテレビ番組で、「国際社会を挑発するいままでのパターンより、レベルは上がっている」と述べ、ケリー米国務長官は「無謀な挑発に服従しない」と北朝鮮を非難した。

米国は、イージス艦2隻を西太平洋に派遣し、B52戦略爆撃機、F22ステルス戦闘機を米韓合同演習に参加させ、北朝鮮を牽制(けんせい)している。

日本政府は、認識を共有する米韓両国と、外交上、軍事上で緊密な協調、共同行動をとって、北朝鮮の暴挙を阻止してほしい。

破壊措置命令だけでは十分ではない。米国向けの弾道ミサイルを迎撃するためにも、当面の緊急課題である集団的自衛権の行使容認の決断も急ぐべきだ。

北朝鮮が挑発姿勢に出ていることについては、金正恩体制の政権基盤固めなどさまざまな見方がなされている。しかし、北朝鮮が、いま、なすべきは、そんなことではない。国民を飢えから救い、平和国家として国際社会に復帰することだ。

北朝鮮は中国を依然として頼りにしているのかもしれないが、3回目の核実験以降、中国もいらだちを隠していないという。もはや支援してくれる存在などないことを認識しなければならない。

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