福島第一原発で、放射能汚染水が地下貯水槽から漏れていたことがわかった。
同原発では、急造の設備で原子炉に水を注ぎ、冷やし続けている。汚染された水は海に流せず保管するしかない。その汚染水の一部が漏れた。
先月起きた長時間の停電を含め、原発事故がなお継続していることを物語る。
核燃料を取り出すまで、抜本的な解決策は見あたらない。電源確保や汚染水タンクの増設など、リスクに先手を打つしかないが、後手に回っている。
今回も3月中旬から水漏れをうかがわせるデータがありながら、対応が遅れた。
現状は、東京電力の管理能力を超えているのではないか。
汚染水について、そもそもの誤算は冷却水をループ状に使い回して原子炉を冷やす「循環冷却」ができなかったことだ。
地震や水素爆発で原子炉建屋にひび割れができたらしく、1~4号機の建屋内には1日400トンもの地下水が流れ込む。炉心を冷やした水は一部を再び冷却用に循環させるものの、流入分だけ汚染水が増える。
福島第一は、いわば原子炉冷却を通じた「汚染水生産工場」と化している。
地下水をくみ上げて流入量を減らしたり、放射性物質をできるだけ除去した汚染水を海に流したりする計画はあるが、実効性や早期の実現性は疑問だ。
東電は当面、大量の漏れが見つかった2号地下貯水槽からだけ汚染水を移し、ほかは水位を少し下げて使い続ける。不足する分は、地上タンクの増設を前倒しし乗り切る考えだ。
しかし、地上タンクも盤石ではない。接合部が経年劣化して水漏れを起こす危険が指摘されているうえ、原発敷地内にはタンクを設置する場所もなくなりつつある。
遅まきながら東電は「福島第一信頼度向上緊急対策本部」を設けた。汚染水、機械設備、電気設備、土木・建築設備の四つの対策チームをつくり、リスクを洗い出す。外部に助言を求める方針も明記した。
国はもっと積極的に関わる必要がある。海外を含め、様々な分野から知恵や人材を集めるため、原子力規制委員会とともに指導力を発揮すべきだ。
茂木敏充経済産業相は東電の社長に「会社一丸となって取り組んでほしい」と求めたが、汚染水タンクの設置場所がなくなった場合の対応ひとつとっても、東電任せでは限界がある。政府と東電が一丸となった態勢をつくらなければならない。
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