「暴走」北朝鮮 不測の事態に備えあるか

朝日新聞 2013年04月09日

北朝鮮 挑発で得るものはない

愚かというほか、言葉が見つからない。北朝鮮は、失った信頼を考えればすでに遅いともいえるが、今からでも危険な挑発をやめ、国際社会と接する道を残すべきだ。

この国は最近、一連の激しい言葉の攻撃に加え、不穏な動きをみせ始めている。その一つが射程3千キロ以上と推定される中距離弾道ミサイル「ムスダン」の発射準備だ。

韓国政府などは、北朝鮮がミサイル2基を載せた発射用の車を日本海側の施設に隠したとみている。事前の予告なしに発射する可能性が出てきた。

国連安全保障理事会は4年前に、北朝鮮が弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射もせぬよう求める決議をしている。

人工衛星打ち上げの技術は、基本的に弾道ミサイル発射と同じだ。だが北朝鮮は「主権国家の合法的権利で、宇宙の平和利用だ」と強弁し、昨年は2度も長距離弾道ミサイルの発射実験を繰り返した。

不意打ちのミサイル発射となれば、そんな言いわけもできなくなる。

北朝鮮はすでに、日本をほぼ射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」を100基以上、実戦配備しているとされる。

ノドンよりさらに射程が長いムスダンを発射すれば、1998年に「テポドン」を撃った時のように、日本列島上空を飛び越えていく可能性がある。

万一、ミサイルが日本に飛んできたときに備えるため、小野寺五典防衛相は、自衛隊に破壊措置命令を出した。北朝鮮の行動を考えればやむを得ない。

韓国の柳吉在(リュギルジェ)・統一相はきのうの国会で、北朝鮮が新たな核実験を実施する「兆候があると言える」と語った。

まだ30歳前後とされる指導者の金正恩(キムジョンウン)氏が、朝鮮労働党の最高ポストである第1書記に就いて、11日で1年。その4日後には祖父の金日成(キムイルソン)主席の生誕101周年が控える。

正恩氏の新体制は、盤石といえない足場をしっかりと固めるためにも、かつてないほどに緊張感を高めようとしている。

父の金正日(キムジョンイル)総書記も、危機を高めて相手を引き出す「瀬戸際戦術」はいつもの手だった。

気になるのは、この激しい威嚇の先に、新体制は事態をどう収めるつもりか、まったく見えないことだ。

挑発を続けても、米国が対話に応じるとは考えにくい。最大の後ろ盾である中国の世論も確実に悪化しつつある。

失敗を認め、経済の向上に国際社会の力を請うべきである。

読売新聞 2013年04月06日

北朝鮮ミサイル 「不意打ち」への備えは万全か

北朝鮮が威嚇的な言動を、さらにエスカレートさせている。

もはや挑発行為と受け止めるだけで済む段階ではあるまい。日本は米国や韓国と連携を強化し、不測の事態に迅速に対応できる態勢を整える必要がある。

韓国の金寛鎮国防相が、北朝鮮が中距離弾道ミサイルを日本海側に移動させたと明らかにした。

推定射程3000キロ・メートル以上のムスダン・ミサイルで、米グアム島に到達可能とされる。

米国は、早期警戒能力を持つ海上配備型の高性能Xバンドレーダーやイージス艦2隻などを西太平洋や朝鮮半島付近海域に派遣した。グアム島には、最新鋭のミサイル防衛(MD)システムを数週間以内に配備すると決めた。

ヘーゲル米国防長官が「現実の、明白な危機」と述べた通り、北朝鮮の核攻撃能力の向上を、米国や日韓など同盟国への脅威として、深刻に受け止めた結果だろう。

北朝鮮の金正恩第1書記は先月末、「米国が攻撃すれば」との条件付きながら、「米本土やハワイ、グアム島」などへの攻撃計画を承認した。朝鮮労働党機関紙は、横須賀、三沢、沖縄の在日米軍基地も攻撃対象に挙げた。

攻撃能力を内外に誇示し、自らの権威を高める狙いもあろう。だが、北東アジアの緊張を高める動きを看過することはできない。

日本は、北朝鮮が実戦配備済みの中距離弾道ミサイル・ノドンの射程に入っている。監視と警戒を一段と強化する必要がある。

「人工衛星打ち上げ」の事前通告があった2009年と12年の長距離弾道ミサイルとは異なり、時期や着弾地の予告もないままに発射される可能性が高い。

政府は様々な事態を想定し、備えに万全を期さねばならない。

安倍首相が、北朝鮮に関する情報収集・分析の徹底、国民への迅速・的確な情報提供、国民の安全・安心の確保――の3点を徹底するよう内閣危機管理監に指示したのは適切な措置だ。

政府はミサイル発射に備え、MDシステムによる迎撃を自衛隊に認める「破壊措置命令」の発令の検討に入った。全国瞬時警報システム「Jアラート」の速報態勢の準備も遅滞なく進めるべきだ。

北朝鮮は、核戦力強化路線を打ち出し、停止中の核施設の再稼働も発表した。

朝鮮半島有事に備え、韓国の邦人保護を念頭に置いて、韓国政府とも緊密に協議し、対応策を検討しておくことが欠かせない。

産経新聞 2013年04月04日

「暴走」北朝鮮 不測の事態に備えあるか

北朝鮮の暴走が止まらない。今度は、凍結したはずの原子炉の再稼働を宣言した。核兵器の増産につながりかねない。

韓国は、北の核兵器使用の兆候に対しては、米国とともに先制攻撃も辞さない構えだという。米国は、北の局地的な攻撃には韓国と共同対処することを約束し、核兵器搭載可能なステルス爆撃機も韓国との合同軍事演習に投入した。弾道ミサイルを迎撃できるイージス艦を西太平洋に展開させている。

反撃もできるようにすることで北の挑発を抑止しようという、米韓同盟の連携が重要だ。

今の緊張状況下では、偶発的な軍事衝突も起き得る。日本政府は不測の事態への備えを怠ってはならない。同時に、米韓同盟をいかに支援するかが問われている。

北が再稼働するとしたのは、2007年の6カ国協議合意で無能力化された寧辺の黒鉛減速炉だ。この合意により、北はエネルギー支援と、米国によるテロ支援国家指定解除も獲得している。

危機を作り出して有利な譲歩を引き出し、それでも足りず約束を簡単にほごにする。東アジアの安定を危うくする北の瀬戸際戦術をこれ以上、許してはならない。

黒鉛減速炉の再稼働には時間がかかるとの見方もある。しかし、北は今後、経済建設と核開発の両立を進める方針も確認した。

北の再稼働宣言を受けて、ケリー米国務長官は「国際義務の直接的な違反であり、深刻な状況となる」と警告した。当然である。

韓国の朴槿恵大統領も「北の挑発には政治的考慮は一切せず直ちに強力に対応する」と、北の恫喝(どうかつ)には強い姿勢で臨んでいる。

そうした中、北に最大の影響力を持つ中国が、再稼働宣言に遺憾の意を示した程度で済ませているのは理解に苦しむ。米国などに協力的だともいわれるが、北を掣肘(せいちゅう)する責任を果たしているのか。

一方、北は「滅亡の運命にあるのは米国に従う日本だ」と対日威嚇も繰り返す。額面通り受け取る必要はないが、備えは十分か。

集団的自衛権の行使容認で米韓支援の態勢を整えることは喫緊の課題だ。当面、米韓と情報を共有し、どんな状況が想定され、日本として何ができるか明確にしておかなければならない。同時に、国連安保理制裁の厳格な履行を主導し、暴挙で得るものはないということを北に分からせるべきだ。

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