愚かというほか、言葉が見つからない。北朝鮮は、失った信頼を考えればすでに遅いともいえるが、今からでも危険な挑発をやめ、国際社会と接する道を残すべきだ。
この国は最近、一連の激しい言葉の攻撃に加え、不穏な動きをみせ始めている。その一つが射程3千キロ以上と推定される中距離弾道ミサイル「ムスダン」の発射準備だ。
韓国政府などは、北朝鮮がミサイル2基を載せた発射用の車を日本海側の施設に隠したとみている。事前の予告なしに発射する可能性が出てきた。
国連安全保障理事会は4年前に、北朝鮮が弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射もせぬよう求める決議をしている。
人工衛星打ち上げの技術は、基本的に弾道ミサイル発射と同じだ。だが北朝鮮は「主権国家の合法的権利で、宇宙の平和利用だ」と強弁し、昨年は2度も長距離弾道ミサイルの発射実験を繰り返した。
不意打ちのミサイル発射となれば、そんな言いわけもできなくなる。
北朝鮮はすでに、日本をほぼ射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」を100基以上、実戦配備しているとされる。
ノドンよりさらに射程が長いムスダンを発射すれば、1998年に「テポドン」を撃った時のように、日本列島上空を飛び越えていく可能性がある。
万一、ミサイルが日本に飛んできたときに備えるため、小野寺五典防衛相は、自衛隊に破壊措置命令を出した。北朝鮮の行動を考えればやむを得ない。
韓国の柳吉在(リュギルジェ)・統一相はきのうの国会で、北朝鮮が新たな核実験を実施する「兆候があると言える」と語った。
まだ30歳前後とされる指導者の金正恩(キムジョンウン)氏が、朝鮮労働党の最高ポストである第1書記に就いて、11日で1年。その4日後には祖父の金日成(キムイルソン)主席の生誕101周年が控える。
正恩氏の新体制は、盤石といえない足場をしっかりと固めるためにも、かつてないほどに緊張感を高めようとしている。
父の金正日(キムジョンイル)総書記も、危機を高めて相手を引き出す「瀬戸際戦術」はいつもの手だった。
気になるのは、この激しい威嚇の先に、新体制は事態をどう収めるつもりか、まったく見えないことだ。
挑発を続けても、米国が対話に応じるとは考えにくい。最大の後ろ盾である中国の世論も確実に悪化しつつある。
失敗を認め、経済の向上に国際社会の力を請うべきである。
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