米軍施設返還案 普天間移設と好循環を目指せ

朝日新聞 2013年04月07日

基地返還計画 可能なところから早く

米軍基地が集中する沖縄の負担を減らすため、日米両政府が基地の返還計画をまとめた。

人口が多い県南部の6基地について、返還の時期や手順を定めた。2013~28年度に、約1千ヘクタールの返還をめざす。

在日米軍基地の73・8%が沖縄にあり、計画が実現しても73・1%に下がるだけだ。わずかではあるが、負担が減るなら意味はある。着実な進展を望む。

ただ、返還時期の書きぶりには首をかしげる。「22年度またはその後」とされた普天間をはじめ、いずれも「またはその後」がついている。

仲井真弘多知事はきのう、説明のため沖縄を訪れた小野寺五典防衛相に「いつになるかわからない、としか読めない」と疑義を呈した。防衛相は、あいまいにしたわけではないと強調したが、納得しがたい。

なぜこんな表現になるのか。背景には、返還計画の大半が代替施設の整備を前提にしていることがある。返還対象の約1千ヘクタールのうち、県内の別の場所に機能を移した後に返還するとされたのは841ヘクタールにも及ぶ。

その移設先の自治体には、防衛相がきのう初めて計画を説明した。市長らからは「困る」といった声が相次いだ。

どうやって返還を進めるのか。留保をつけたとはいえ、時期を示した以上、「書いただけ」では済まされない。政府は、みずから努力を尽くす義務を負ったといえよう。

481ヘクタールと計画全体の半分近くを占める普天間の返還は、従来どおり名護市辺野古への移設が前提とされた。

知事はきのう記者団に、22年度以降では「普天間に固定化するのと同じ」と語り、県外移設を改めて主張した。県内全市町村が反対する辺野古への移設は依然、現実味に乏しい。

とはいえ、普天間を理由に、ほかの基地の返還を遅らせてはならない。可能なものは計画を前倒ししてでも返還すべきだ。

日米両政府は昨春、普天間移設と、ほかの基地の返還は切り離すことで合意した。ところが、米政府内からは再び「海兵隊のグアム移転と普天間移設の前進によって、嘉手納基地以南の多くの土地の返還が可能になる」(国防総省報道官)といった発言が聞かれる。

そんなやり方では何も進まないのが、この間の教訓だ。膠着(こうちゃく)状態が続けば県民の反発はさらに強まり、米軍の駐留が難しくなるおそれすら出てこよう。

東アジア情勢が不安定さを増すなか、日米両国とも、そんなことは望んでいないはずだ。

毎日新聞 2013年04月06日

米軍基地返還計画 普天間「切り離し」守れ

日米両政府は、沖縄の米軍嘉手納基地以南の6施設・区域の返還計画で合意し発表した。焦点の普天間飛行場も合意文書に盛り込み、同県名護市辺野古への移設を前提に「2022年度またはそれ以降」とした。

各施設・区域返還は沖縄県が強く求めてきたものである。返還時期を示せば、跡地利用の計画づくりが可能となる。時期の明示は前進だ。

しかし、各施設の返還時期は具体的年度「またはその後」との表現になっている。遅れる可能性を織り込んでいることが気になる。沖縄県内での代替施設確保を返還の前提にしている施設が多く、移設先の自治体の反対で返還が遅れてきたのがこれまでの経緯だ。両政府に実現に向けた本格的取り組みを求めたい。

何より懸念されるのは、普天間移設を文書に盛り込んだことで、移設が進まなかった場合、他の5施設・区域返還が連動して遅れることだ。小泉政権時代の06年の日米合意では嘉手納以南の施設・区域返還と普天間の辺野古移設はパッケージとなっていたが、昨年4月、野田政権がこれを切り離し、普天間移設が進まなくても他の施設等の返還を進めることで米政府と合意した。今回の合意で両者のリンクが事実上、復活したとすれば後退と言わざるを得ない。

日米合意発表後、安倍晋三首相は早期の返還実現に努力する考えを表明した。政府は、公式には、昨年の「切り離し」合意は有効であるとの考えを明らかにしている。ぜひ、普天間移設の進展に関係なく、5施設等の返還を進めてもらいたい。

政府は先月下旬、辺野古への移設に必要な「公有水面埋め立て」許可申請を仲井真弘多知事に提出した。知事の判断には10カ月程度かかる。沖縄では、普天間の県内移設に反対する声が大勢であり、知事も県外移設を主張している。辺野古への移設が進む見通しは立っていない。

5施設等の返還と引き換えに普天間の辺野古への移設を迫るということになれば、沖縄の反発を招くだけだろう。政府は「切り離し」の姿勢を最後まで貫くべきだ。

また、普天間移設が政府の計画通り進んだとしても、移設までに9年以上かかる。この間、普天間周辺住民の危険性は放置されたままなのだろうか。安倍政権は移設実現までの危険性除去・軽減の対策を示していない。普天間の機能分散を進めるために早急に米政府と協議するよう求める。

沖縄には在日米軍の施設面積全体の約74%が集中しているが、普天間を除く5施設等が返還された後も、その数値は約72%と、わずか2ポイント下がるだけだ。「過重な基地負担」は変わらない。政府は引き続き、負担軽減策を検討すべきである。

読売新聞 2013年04月06日

米軍施設返還案 普天間移設と好循環を目指せ

沖縄の過重な米軍基地負担を軽減するうえで、画期的な意義を持つと高く評価したい。

日米両政府は、沖縄県南部の米軍6施設の返還計画を発表した。

普天間飛行場は、名護市辺野古への移設を前提に、「2022年度またはその後」に返還が可能と明記した。地元の返還要望が強い牧港補給地区は、25年度にも返還できるとしている。

キャンプ瑞慶覧、那覇港湾施設など他の4施設は、22~28年度の返還完了を目指すと記載した。

6施設の返還面積は計1000ヘクタール超にも上る。人口の多い県南地域の広大な土地の返還期限と手順が明示された意味は大きい。

跡地を有効利用すれば、様々な地域振興が可能になるだろう。特に、牧港補給地区は、那覇市と近いなど、立地条件が良い。

政府と沖縄県、関係自治体は、各施設の跡地利用策について、建設的な協議を行い、信頼関係を深めることが重要である。

一方で、返還には、代替施設の整備や在沖縄海兵隊のグアム移転などの前提条件が付いている。

例えば、那覇港湾施設は、1974年に日米が返還に合意しながら、浦添市への移設が進まず、今なお返還が実現していない。

今後、計画通りに各施設の返還を進めるには、日米両政府と自治体が従来以上に緊密に協力し、代替施設の建設などの返還条件を満たす地道な努力が求められる。

政府は、計画策定を、普天間飛行場の辺野古移設に必要な公有水面の埋め立てに関する沖縄県の許可を得る一助としたい考えだ。

日米両政府は昨年春、普天間移設と海兵隊のグアム移転を切り離して進めることで合意した。普天間移設の停滞がグアム移転を遅らせる「悪循環」を防ぐための、やむを得ない措置だった。

今回の計画に返還時期を明示できたのは、安倍首相が埋め立て申請に踏み切り、普天間移設に本気で取り組む姿勢を示したことに、米側が呼応したためだ。普天間問題の進展が、海兵隊移転に伴う施設返還を後押ししたと言える。

普天間移設、海兵隊移転、施設返還という三つの要素が前向きの「好循環」を生むよう、日米両政府と自治体がきちんと連携・協調することが大切である。

北朝鮮の核・ミサイルによる軍事的威嚇や中国の尖閣諸島周辺での示威活動などで、在沖縄米軍の抑止力の重要性は高まっている。沖縄の基地負担軽減と米軍の抑止力維持の両立が重要である。

産経新聞 2013年04月06日

米軍施設返還 沖縄の抑止機能を守れ 新合意で「普天間」移設実現を

また一歩、米軍普天間飛行場の移設問題で前進が図られた。

普天間の返還時期と嘉手納基地以南の米軍5施設・区域の返還計画をめぐり、日米両政府が具体的な時期などで合意したことだ。

普天間の名護市辺野古への移設を加速するだけでなく、沖縄県の負担軽減にもつながる意義のある決定といえる。

政府と県には、これを弾みとして普天間問題への一層の進展を求めたい。

あらためて考えなければならないのは、尖閣諸島への攻勢をかけ続ける中国、核・ミサイル開発で暴走する北朝鮮から日本を守る上で、沖縄の安全保障上の意義がいっそう高まっていることだ。

≪首相は強い信念を貫け≫

日米の抑止力の拠点が機能しなければ、日本の平和と安全は確保されないからだ。そのためには米軍再編を円滑に進めなければならない。

安倍晋三首相は「普天間の固定化は断固あってはならない」と繰り返してきた。

辺野古への移設が決着せず、返還時期が不透明となって「固定化」への懸念が出ていたなかで、「2022年度またはその後」という時期を明示できたことは成果だった。首相は合意について、「日米の信頼の絆がゆらいでいないことを示せた」と語った。

嘉手納基地以南の施設返還は、仲井真弘多知事や地元が強く要求していたものだ。返還の実現によって将来、商業施設建設などの地域活性化が期待できる。米軍基地が集中する沖縄の負担軽減の重要な一環といえよう。

首相は辺野古移設に向け就任1カ月と少しで沖縄を訪問した。

民主党政権が誕生した際、鳩山由紀夫首相(当時)が訪沖したのは就任8カ月後だった。

安倍内閣の対応は、それに比べるとはるかに迅速だ。今後も沖縄振興策への手当てなど可能な限りの支援を行い、粘り強く受け入れの説得をしてほしい。

首相にとっても、普天間問題をめぐる今の状況を解きほぐす作業は容易ではない。新たな施設返還をめぐる合意は、県民の理解を得ることによって、知事が埋め立て申請を容認しやすい環境をつくる意味合いも大きい。

何よりも、首相が辺野古移設の実現に向けた強い信念を維持することが大事だ。政府の腰が定まらなければ地元も決断できまい。

政府はすでに、辺野古沿岸部の公有水面の埋め立て申請を県に提出している。許可権限を持つ仲井真知事は、辺野古移設への反対論の広がりから「県外移設の方が早い」との見解を示している。

鳩山元首相が県外移設を掲げた揚げ句、その実現を断念する無責任な対応をとったため、日米関係は悪化し、普天間問題は迷走した。辺野古案を容認しにくい立場にある仲井真知事もこの際、沖縄の戦略的重要性などを考慮して、大局的見地に立って国と覚悟を共有してほしい。

≪論外な沖縄領有権主張≫

菅義偉官房長官が3日に沖縄を訪問した際、自民党沖縄県連の幹部から「参院選では県外移設を掲げたい」との考えを伝えられた。政権与党としての一貫性を欠いており、一刻も早く解決しなければならない。

沖縄の重要性を考えるうえで看過できない問題は、中国側で尖閣にとどまらず沖縄の領有権に関する言及が相次いでいることだ。

民主党の山口壮元外務副大臣は3月の国会質問で、昨年8月に中国の傅瑩(ふえい)外務次官と会談した際、沖縄本島を含む琉球諸島について中国の領有権を主張する発言があったことを示唆した。

中国の学者、軍人らの主張の中に戦後の沖縄返還には根拠がないといったものがあったが、中国外交当局の高官が日本の主権を認めないなら重大問題である。

中国側が沖縄の戦略的な重要性を認識しているともいえるが、日本として抑止力の要となる沖縄自体を守り抜く努力をさらに重ねなければならない。

今回の合意をもってしても、沖縄側がなお辺野古への移設に反対だとなれば、米軍は身動きがとれなくなり、むしろ普天間の固定化が進むだろう。

住宅密集地にある普天間の危険性を取り除くことはできず、沖縄にとっても不幸であることを、知事や県民もあらためて考えてもらいたい。

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