0増5減と民主党 また政争の具にするのか

朝日新聞 2013年04月03日

0増5減 まず半歩前へ踏み出せ

もはや猶予は許されない。

衆院小選挙区の「一票の格差」是正である。

先月あった一連の高裁判決で「違憲」判断が相次いだことを受けて、与野党協議がきょう開かれる。ところが、さっそく自民党と民主党のさや当てが始まっている。

国会を「違憲の府」としないためにも、与野党は合意を急がなければならない。

なすべきことは明らかだ。

先月末、政府の衆院選挙区画定審議会が、定数の「0増5減」に伴う区割り見直し案を勧告した。

まずは、これにもとづく公職選挙法改正案を、今国会で成立させることである。

自民、公明両党が、その先行処理を求めているのは当然だ。

これに対し、民主党は「0増5減だけでは不十分だ」として、小選挙区30、比例区50の定数削減による抜本改革を主張している。

民主党の言い分はこうだ。

11年3月の最高裁判決は、各都道府県に議席を1ずつ割りふる「1人別枠制」を違憲の源とした。0増5減は事実上、別枠制を残しており、問題の解消にはならない――。

たしかに、0増5減では抜本改革にはほど遠い。

だが、各党の利害が対立する定数削減をいま絡めれば、話し合いが暗礁に乗り上げるのは目に見えている。

与党時代、民主党は格差是正と定数削減の同時決着にこだわった。その結果、「決められない政治」に陥り、格差も放置されたままになった。

だからこそ、昨秋、0増5減の先行処理にいったんは同意したのではなかったか。

与野党が対立したまま、何も是正できない愚だけは繰り返してはならない。

自民党にも言いたい。

党幹部からは、昨年の法改正で1人別枠の条文は削除しており、この問題は決着済みだという声が聞かれる。

だが、0増5減はあくまで緊急避難的な措置であることを忘れては困る。

まずは0増5減で格差を2倍以内に収める。これは国会として最低限の責任だ。

その先の「抜本改革」については、与野党から様々な定数削減案が出されている。だが、党利党略絡みの百家争鳴で、一本化できるとは思えない。

であれば、ここは第三者にゆだねるしかない。首相の諮問機関である選挙制度審議会を立ち上げ、衆参のあり方も併せて根本から検討すればいい。

産経新聞 2013年04月03日

0増5減と民主党 また政争の具にするのか

民主党が自らの存在感を示すための行動としか言えない。

衆院の「一票の格差」の緊急是正策となる「0増5減」の実現に対し、同党が反対していることだ。3日に開かれる与野党幹事長会談でも、打開できるかどうかのめどは立っていない。

自民、公明両党は「0増5減」の先行処理を主張しているが、民主党は各党合意の見通しもないまま、抜本的な選挙制度改革と定数削減を求めている。

これでは格差是正を政争の具に用いているとの批判も免れまい。直ちに方針を転換すべきだ。

「違憲」「無効」など昨年の衆院選をめぐる一連の高裁判決で、立法府の怠慢が指弾された。緊急是正策の必要性を与野党各党は確認すべきだ。

民主党は、衆院選挙区画定審議会の勧告に基づく「0増5減」は不十分で、平成23年に最高裁が求めた各都道府県にまず定数1を割り振る「1人別枠方式」の廃止になっていないと批判している。

代わりに、小選挙区定数を30、比例代表を50減らす抜本改革案をまとめ、政治家が自ら身を切る姿勢を強調している。

たしかに「0増5減」は小手先の見直しにすぎない。日本維新の会やみんなの党も「見直しは不十分」としている。このため、参院では公職選挙法改正案が可決されず、成立には衆院再議決を要する展開も予想される。

民主主義の土俵をめぐる最低限の措置について、民主党はあえて与野党対決の構図を作ろうとしているといえる。「決める政治」に背を向けるものだ。

そもそも、今回の格差是正問題は、21年衆院選が「違憲状態」と判断されてから1年半以上も放置されたことが原因だ。その大きな責任は、解散を先送りしたいため、法改正などに動かなかった民主党執行部にある。

選挙区画定審の区割り勧告ができない違法状態に陥ったほか、昨年の衆院選も古い区割りで実施されることになった。

昨年11月、野田佳彦前首相が解散の前提条件の一つに「0増5減」を挙げたことから、先行処理を受け入れた民主党も賛成して関連法が成立した。その時点で、区割り見直しには、あらためて公選法改正が必要なことはわかっていたはずだ。今になって反対するのは、理屈が通らない。

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