日本とモンゴル 地球儀を眺めるように

毎日新聞 2013年03月29日

日本とモンゴル 地球儀を眺めるように

安倍晋三首相がこの週末にモンゴルを訪問する。それに先立ち28日には横綱・白鵬関が首相官邸に安倍首相を表敬訪問し、モンゴルの満天の星の美しさなどについて語り合ったという。大相撲のモンゴル人力士の大活躍や蒙古(もうこ)斑など、日本とは古くからつながりもゆかりも深い国だ。その絆を一層深めたい。

かつて社会主義国家として旧ソ連の影響下にあったモンゴルは、90年代初めに自由選挙を実施して民主化した。日本は支援を続け、10年度までの政府開発援助(ODA)供与額2114億円は対モンゴル援助国中第1位。モンゴルの対日感情は極めて良く、モンゴル国立大学が04年に実施した世論調査で、日本は「最も親しくすべき国」のトップだった。日本語学習熱も高い。

中国とロシアに南北をはさまれた草原の大国モンゴルは、地政学的に極めて重要な位置にある。また、石炭やレアメタルなど資源も豊富で、良質な原料炭があるタバン・トルゴイ炭田開発計画には日本も参画する方向で話が進んでいる。

そのモンゴルは今、中露両国の間に埋没しないためにも西側への接近を強めている。とりわけ日本のことは「第3の隣国」と呼び、初の経済連携協定(EPA)を日本と結びたいとして既に交渉入りするなど、対日期待感は非常に強い。

最近では、政治・安全保障の分野での連携強化も日本に求めてきている。昨年秋に日朝政府間協議がウランバートルで開かれたのも、単なる場所貸しを超えた、モンゴルの対日協力姿勢の表れである。

こうしたモンゴルからの「ラブコール」に、日本はもっと積極的に応える必要がある。日本はモンゴルと10年に戦略的パートナーシップの構築で合意し、政治や経済の分野だけでなく文化・人的交流を進めているが、まだ十分とは言えない。日本からは7年ぶりの首相訪問となる機会を、この大事な親日友好国との関係強化につなげてほしい。

安倍首相は「外交は単に2国間関係だけを見つめるのではなく、地球儀を眺めるように世界全体を俯瞰(ふかん)して戦略的な外交を展開していく」(所信表明演説)と強調している。その観点から言えば、今回の首相のモンゴル訪問は4月末に見込まれるロシア訪問と5月に想定される日中韓サミットにつながる、対外戦略の一環だ。日露、日中関係をにらむ、大きな外交ゲームの布石でもある。

国際社会で信頼できる仲間を増やし、外交の裾野を広げれば、対外的影響力も高まるし、近隣諸国との2国間関係にもプラスになる。モンゴルの民主化を支えることは、まさにそういうことであろう。

読売新聞 2013年03月31日

安倍外交 モンゴルと戦略関係の強化を

親日友好国モンゴルと日本が戦略的な連携を強化する一歩になった。

安倍首相がモンゴルを訪問し、アルタンホヤグ首相、エルベグドルジ大統領と相次いで会談した。

両国首脳は、外交・安全保障分野での外務次官級の対話を開始することで一致した。さらに、米国も加えた3か国の政策対話を行うことでも合意した。

安倍首相は、アジア外交の原則として民主主義など普遍的価値の尊重や自由でオープンな市場経済を掲げている。

中国とロシアに挟まれたモンゴルが、民主化と市場経済を発展させることは、日本の外交戦略にもプラスである。威圧的な外交で周辺国の主権を脅かす中国へのけん制にもなるだろう。

安倍首相は北朝鮮問題、とくに日本人拉致問題での協力を求めた。モンゴル側も日本の立場への理解と支持を表明した。

モンゴルは、冷戦時代には北朝鮮とは盟友関係にあり、今も高いレベルで交流を続けている。

2012年11月に日朝協議がウランバートルで開かれたのも、モンゴルの協力があったからだ。

政府は膠着(こうちゃく)状態にある拉致問題解決に向けて、モンゴルとのパイプを大いに生かす必要がある。

資源に乏しい日本にとって、モンゴルとの関係は、エネルギー安全保障の観点からも貴重だ。

モンゴルは、石炭やレアメタルなど良質で豊富な天然資源に恵まれている。鉱山開発などをテコに11年は年率17%を超える高度経済成長を達成した。

首脳会談では、モンゴル南部のゴビ砂漠にある世界最大級のタバントルゴイ炭田の共同開発についても意見を交換した。モンゴル側は、「長期にわたり安定的に日本に石炭を供給できるようにしたい」との意向を示したという。

モンゴルには、日本や韓国に石炭を輸出するため、中国やロシアの海港へ運ぶ構想がある。それには資源を輸送するための鉄道を建設することが欠かせない。

ただ、日本企業が開発やインフラ整備で進出するにはモンゴル側の投資環境の整備が必要だ。日本とモンゴルの当局間で協議を重ねる必要がある。

会談で、安倍首相は横綱白鵬らの活躍ぶりにも言及した。日本では、大相撲を通じてモンゴルへの関心が高まっている。モンゴルにとっても日本は中露に次ぐ「第3の隣国」だという。

政治、経済とともに文化・スポーツでも交流を深めたい。

産経新聞 2013年03月31日

首相モンゴル訪問 中国には「価値観の輪」で

中国とロシア、北朝鮮をもにらんだ手堅く有益な首脳外交といえる。

安倍晋三首相が、中露に挟まれた内陸国モンゴルを訪問し、政治、安全保障分野を含む同国との関係強化を確認した。

安倍首相は2月に訪米し、民主党政権下で弱体化した同盟関係の立て直しに着手した。それに先立ち、東南アジア諸国連合(ASEAN)3カ国を訪れている。

モンゴル訪問も、自由と民主主義、市場経済などを共有できる国々を引き寄せ、中国の覇権主義を価値観の輪で取り巻くという外交の一環である。安倍政権には、今後とも日米同盟を基軸に、この路線を推進してもらいたい。

首相はアルタンホヤグ首相、エルベグドルジ大統領らと会談し、両国関係の基礎として、「平和、自由・民主、助け合い」の3つの精神を強調した。経済、エネルギー分野の協力拡大も表明した。

モンゴルは、長く中国の支配を受けソ連の衛星国にも甘んじた。1992年に社会主義を放棄し、市場経済を導入して民主化を進めた。中露双方に距離を置く。

その中露は先頃、習近平国家主席とプーチン大統領との会談で蜜月ぶりを演じ、尖閣諸島や北方領土で対日連携・牽制(けんせい)に出た。

日本とモンゴルの友好関係にはそのような演出は不要だ。安倍首相は訪問に先立ち、モンゴル出身の横綱白鵬と面会した。両国民は大相撲が取り持つ縁もあって、互いに親近感を抱いている。

日本は、モンゴルに対する最大の援助供与国であり、「第3の隣国」と期待を寄せられている。安倍首相の訪問を機に、交流をさらに活発化させるべきだ。

モンゴルの貿易は、輸出の大半が中国向けで、輸入も3割を中国が占める。過度の中国依存からの脱却に日本は貢献できる。

安倍首相は首脳会談で、北朝鮮による日本人拉致の問題解決に支援を求め、理解と支持を得た。北には国連安保理決議に沿った対応が必要との認識でも一致した。

モンゴルと北は、冷戦時代に同じ東側陣営にあった長年の友好国であり、昨年11月の4年ぶりの日朝局長級協議も、ウランバートルで開催されている。

モンゴルがどの程度、北に影響力を行使できるかは明らかではないが、あらゆる機会を捉えて拉致問題解決を模索する安倍政権の姿勢を評価したい。

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