福島原発の停電 再発防止体制の構築を

毎日新聞 2013年03月22日

福島原発の停電 再発防止体制の構築を

事故から2年以上過ぎたのに、この程度の体制しか整えていなかったのか。あまりのお粗末さに、地元住民はもちろん、国民の多くが、東京電力に事故処理を任せておいていいのかという懸念を抱いたはずだ。

東電福島第1原発で18日夜、大規模な停電が発生し、使用済み核燃料プールの冷却装置など9設備が停止した。すべてが復旧するまで29時間以上もかかった。ネズミが仮設の配電盤に接触し、ショートしたことが原因の可能性があるという。

東電は「事故ではなく事象」と説明するが、使用済み核燃料プールの状態については世界の関心も高く、住民も心配に思っている。再発防止策の徹底を急いでもらいたい。

停止したプールには核燃料が約9000体入っていた。プールの冷却機能が停止すると燃料温度が上昇、冷却水も蒸発し、最悪の場合は溶融する恐れがある。中でも4号機の原子炉建屋は水素爆発で大きく壊れており、燃料プールはむき出しの不安定な状態のままになっている。

ショートした配電盤は、福島第1原発事故の直後に運び込まれ、屋外のトラックの荷台に置かれていた。プールの温度上昇には時間の余裕があるため、炉心への注水設備には備えられているバックアップシステムは準備されておらず、今月中に対策をとる予定だったという。

多重で多様な備えが大切なことが福島第1原発事故の教訓であり、バックアップを準備しなかった判断は甘すぎる。事故対応のドタバタの中で、福島第1原発には仮設状態のままの配管やタンクなどがいまだに数多くある。こうした周辺設備の改善もより速やかに進めなければならない。今回の停電では、プールの水温は規定以下に抑えられたが、周辺設備だからといって対策を緩めると、思わぬ重大事故を招きかねない。

原子力規制委員会は検討会を設置して、同原発の廃炉計画を審議している。規制委と東電は、今回の停電を教訓に、安全対策に漏れがないかどうかを再検討すべきだ。

東電は福島第1原発の廃炉に向け近く、海外の専門家から技術開発などの助言を受ける「国際アドバイザリーチーム」を設立する。経験と技術を持った第三者が廃炉計画をチェックし、問題点を分かりやすく公表することには大きな意義がある。

最後に、停電の広報遅れを指摘しておきたい。東電は発生後間もなく規制委に連絡したが、福島県へは約1時間後、報道機関へは3時間以上も遅れた。東電は住民に顔を向けているのか、それとも規制当局に顔を向けているのか。住民の東電不信は一層強まったことだろう。情報公開を最優先に対応してほしい。

読売新聞 2013年03月24日

福島原発停電 管理体制を強化して再発防げ

東京電力福島第一原子力発電所で大規模な停電が起き、全面復旧に約30時間もかかった。

原発事故後、最大規模の停電を招いた東電の対応には、見過ごせない問題があったと言える。

停電発生から丸1日以上、状況把握に難航し、復旧作業の遅れにつながった。今後の課題だ。

東電は当初、関係する配電盤を個別に調べた。だが、故障箇所は特定できず、非常用電源などに配線し直すしかなかった。

原子炉の冷却系は、短時間の停電でも事態が悪化する恐れがあることから、バックアップ電源を備えており、停電は免れた。

だが、それ以外の系統は、こうした対策が十分ではなかった。

その後の調査で、2年前の事故直後から屋外に設置されていた配電盤が、内部に入り込んだネズミのような小動物の接触でショートした可能性が浮上した。

東電は、屋外の臨時配電盤の弱点を認識し、屋内の配電系統に切り替えることを予定していたというが、管理体制に甘さがあったことは否定できまい。

停電の発生により、使用済み核燃料の冷却が大切であることも改めて注目された。

福島第一原発では、水を張ったプールに1万体以上が貯蔵されている。このうち9000体近くの冷却機能が一時停止した。

使用済み核燃料は発熱を続けている。プールの冷却水を循環させないと、水が蒸発し、燃料が損傷しかねない。事故の際にも危惧されたことだ。

今回は、複数あるプールの水温は最高で32度だった。東電が定めている警戒温度の65度までには、十分に余裕があった。原子力規制委員会の田中俊一委員長も、「そんなに切羽詰まったものではない」と指摘した。

ただ、停電が長時間続いたことに不安の声は少なくなかった。丁寧な状況説明が求められる。

停電の公表までに約3時間を要したことも含め、規制委の事務局が「情報提供のあり方を再検討する」と改善の意向を示したのは、当然のことだ。

福島第一原発は事故で大きく損傷している。毎日3000人の作業員が、原子炉の安定化や廃炉を目指し、働いている。現場の放射線量は依然高い。厳しい環境での作業は容易でないだろう。

廃炉は最長で40年かかる長丁場の事業だ。作業への信頼を損なわないためにも、今回のような不手際を繰り返してはならない。

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