地価の底入れの兆しが一段と強まってきた。不動産価格を正常化させ、デフレから脱却できるよう、政府は経済活性化を急がねばならない。
国土交通省が発表した2013年1月1日時点の公示地価は、全国の住宅地で前年比1・6%、商業地で2・1%下落した。08年秋のリーマン・ショック以降、ともに5年連続のマイナスだった。
下落幅が3年連続で縮小したのは明るい材料だ。中でも3大都市圏の下落幅は0%台で、下げ止まりが視野に入ったと言える。
都道府県別の平均値も、ほぼすべてで下落幅が縮まった。都市圏から地方圏へ、改善傾向が広がっていることをうかがわせる。
安倍首相が就任前から掲げた経済再生に対する期待が先行し、不動産市場に資金が流入している。こうした動きが続けば、地価の回復に弾みがつくだろう。
住宅地で改善が目立つのは、低金利や住宅ローン減税などの政策効果が下支えしたのが要因だ。
東京では前年ゼロだった上昇地点が現れた。マンション販売が堅調なことが背景にある。
住宅地に比べて遅れ気味だった商業地が、都市部を手始めに持ち直してきたのも注目できる。
東京スカイツリーなど大規模な商業施設を中核とした再開発地域や、耐震性に優れた新築物件への移転需要が根強い地域などで上昇地点が増えている。
空室率の低下、賃料の下げ止まりといった傾向が見え始めた。
アジアを中心とする海外からの投資マネーも増大しているようだ。金融緩和に伴う円安の進行などで日本の不動産に割安感が出ているのだろう。
一方、人口減や地域経済の疲弊など構造的な要因を抱える地方の商業地は改善テンポが鈍い。
東日本大震災の被災地では、津波被害に見舞われた沿岸部と浸水を免れた高台で地価が二極化する現象は薄まっている。
しかし、復興事業が進展し、住宅移転への需要が拡大するのに伴い、地価の急上昇する地点が増えている点は気がかりだ。
地価上昇率トップの住宅地は2年連続で宮城県石巻市だった。宮城、岩手両県の沿岸市町村は軒並み上昇に転じ、県別でも宮城県が全国一の上昇率を記録した。
急激な地価上昇が住宅再建に悪影響を及ぼさないように政府と自治体は監視を強めるべきだ。来年4月の消費税増税をにらんだ駆け込み需要が地価に与える影響にも注意する必要がある。
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