「普天間」申請 移設実現へ最大の努力尽くせ

毎日新聞 2013年03月23日

埋め立て申請 展望なき「沖縄の同意」

政府は、米軍普天間飛行場を沖縄県名護市辺野古に「県内移設」するために必要な辺野古沿岸部海域(公有水面)の埋め立て許可を仲井真弘多知事に申請した。

移設に向けた大きなステップだが、仲井真知事は「県外移設」を求める姿勢を変えていない。見通しなき申請手続きである。

この時期に申請を行ったのは、先月の日米首脳会談で安倍晋三首相が辺野古移設という「日米合意」の早期実現をオバマ大統領に約束したことに加え、来年早々に予定される名護市長選の前に仲井真知事の許可を得たいと考えたからである。

稲嶺進名護市長は辺野古移設に強く反対しており、政府は、稲嶺市長が再選されれば日米合意履行は一層困難になるほか、市長選が近づけば知事の決断が難しくなると判断している。知事の最終判断には半年から10カ月かかるとみられている。

また、日米間で協議している米空軍嘉手納基地以南の米軍施設・区域返還が進展を見せていること、辺野古海域の漁業権を持つ名護漁業協同組合と埋め立ての補償金額で合意したことなどにより、申請の環境が整ったと判断したのだろう。

しかし、沖縄は、過重な米軍基地負担を背景に、新たな基地を建設すること自体に強く反対している。埋め立て申請はそうした現実を無視した行為と言わざるを得ない。

県内の41全市町村長と全市町村議会が県外移設を求め、県議会も県内移設反対の意見書を全会一致で可決している。1月には、東京都内で全市町村の首長らが県内移設断念を求める集会を開き、安倍首相に「建白書」を提出したばかりだ。名護漁協など容認論も一部にはあるが、広がりを欠き、県内移設反対・県外移設の主張が大勢である。

かつて条件付き容認派だった仲井真知事も、県内移設反対の県民世論を受け、10年の知事選では県外移設を公約に掲げた。申請に対し、仲井真知事は「県内移設は事実上、無理であり不可能だ。県外移設を求める考えに変わりはない」と語った。

自民党の一部には、仲井真知事が埋め立てを許可しなかった場合、埋め立て許可を国が代行するための特別措置法を制定すべきだとの意見もある。

しかし、こうした強硬手段に訴えれば、政府と沖縄の溝は決定的に深くなり、在沖縄米軍基地の運用や日米安保体制の円滑な運営に支障を来す事態に発展する可能性がある。また、辺野古での基地建設自体も、島ぐるみの基地反対運動によって不可能になることが予想される。

安倍首相には、米軍基地問題に対する沖縄の政治状況を直視し、慎重に対応するよう望む。

読売新聞 2013年03月23日

「普天間」申請 移設実現へ最大の努力尽くせ

長年の日米間の懸案を解決するため、政府は沖縄県の説得に最大限の努力を尽くすべきだ。

防衛省が、米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古移設に伴う公有水面埋め立てを沖縄県に申請した。

沖縄県は今後、埋め立ての許可の是非を慎重に判断する。仲井真弘多知事は「県外移設」を主張しており、許可が得られる見通しは現時点で立っていない。

しかし、辺野古移設に、地元の名護漁協は今月11日に同意する方針を決定した。移設先の周辺住民も一定の理解を示している。

辺野古移設が、沖縄全体の基地負担の軽減と米軍の抑止力の維持を両立させるための「最善策」であるのは間違いない。

政府は、年内に知事の許可を得ることを目指している。辺野古移設が争点となる来年1月の名護市長選の結果が日本の安全保障にかかわる重要問題を左右する事態を避けるためで、妥当な判断だ。

安倍首相は2月のオバマ米大統領との首脳会談で、辺野古移設を推進する方針を表明した。日米同盟をより強固なものにするうえでも、辺野古移設の実現が重大な試金石となる。

政府・与党は総力を挙げて、仲井真知事が埋め立てを許可する決断をしやすい環境を整備しなければなるまい。

非現実的な「県外・国外移設」を安易に唱えた鳩山民主党政権の失政で、今の県内世論の大勢は辺野古移設に反対だが、もともと仲井真知事は容認していた。

仮に埋め立てを不許可にすれば、普天間飛行場の危険な現状を長期間固定化することにつながる可能性が高い。それが沖縄にとって本当に望ましい選択なのか。

政府の今後の努力次第では、仲井真知事が許可を最終決断する余地は十分あるはずだ。

まず自民、公明両党の地方組織や県選出国会議員に辺野古移設への理解を広げる必要がある。

移設先の名護市関係者の説得も欠かせない。市長は移設に反対だが、市議会は反対派が容認派をわずかに上回っているだけだ。市議会の賛否の勢力を逆転させることができれば、知事の判断にも大きな影響を与えよう。

普天間飛行場や他の米軍施設の返還後の跡地利用策を含め、沖縄の将来像や地域振興策について、政府は、沖縄県と本格的な協議を重ねていくことが求められる。

騒音対策など米軍基地負担の軽減策についても、従来以上に真剣に取り組まねばならない。

産経新聞 2013年03月24日

埋め立て申請 知事の大局的判断求める

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設に向け、防衛省が県に対し、公有水面の埋め立て申請を行った。移設実現に向けた一歩を進めたことを歓迎したい。

許可権限を持つ仲井真弘多知事は「辺野古移設は事実上困難」との姿勢を崩していない。だが、尖閣諸島情勢など日本を取り巻く安全保障環境は緊迫の度を増している。日米双方が実現可能とした辺野古案を、大局的見地から受け入れる決断を下してほしい。

普天間問題の重要性は論をまたない。中国が尖閣への領海侵犯を重ね、北朝鮮が核実験を強行する状況に対処するには、日米安保体制の維持強化が不可欠だ。在日米軍の重要拠点だった普天間の移設は最優先課題である。

安倍晋三首相がさきの訪米で、オバマ大統領に対して「早期実現」を約束したのも当然だ。解決の遅れが中国などを勢いづけ、日本の安全保障を危うくする事態を招いてはならない。

首相は申請に際し「沖縄の負担軽減に全力を尽くす。普天間の固定化は断じてあってはならない」と語った。すでに安倍政権は那覇空港第2滑走路の工期短縮など、沖縄振興に手厚い施策を講じる姿勢を見せている。

日米両政府が合意した米軍嘉手納基地以南の米軍施設返還も、計画を具体化して県民に提示することが重要だ。今後も誠実に粘り強く説得を重ねてほしい。

自民党本部と沖縄県連とのねじれ解消も欠かせない。県連は昨年暮れの総選挙で「県外移設」を訴えており、「すぐにスタンスは変えられない」と参院選でも同じ主張を掲げようとしている。政権党として、一貫した方針を取れなければ説得力を持たない。

仲井真知事は申請に対し、「決めたから実行できるというのは、考えられない」と不快感を示している。「県外移設」を掲げた民主党政権が事態を迷走させ、県内に根強くある反対論を無視できない状況だからだ。

だが申請に先立ち、名護の漁業協同組合は漁業権の一部放棄に同意した。さきの辺野古地区の区長選も、移設推進派候補がくじ引きで敗れる接戦だった。受け入れ容認の地元意見は、確実に存在している。政府や自民党は知事が決断しやすいよう、あらゆる面で支えてゆかねばならない。

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