自民党大会 慢心せず「決められる」政治を

毎日新聞 2013年03月18日

自民党大会 追い風を信頼につなげ

政権奪回後初の自民党大会が開かれ、次期参院選で自公による参院の過半数確保を目指す運動方針を採択した。安倍晋三首相(党総裁)も演説で参院選勝利を訴えた。

安倍内閣の順調な始動を裏付けるように各種世論調査で自民党の支持率は際だって復調している。一方で公共事業重視など相変わらずの面ものぞかせている。古い体質からの脱却を急ぎ、財政再建、エネルギー政策などの課題に逃げずに取り組むことが信頼確立への道である。

首相は「経済成長の自信を取り戻そう」といわゆる「アベノミクス」路線を強調、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加表明にも理解を求めた。

今国会で自民党は日銀人事や補正予算などで課題別に野党と組み、ねじれ国会をこなしている。TPPも党分裂を避け、落としどころを探った。政権奪回に浮かれず堅実運営をこころがけていることが国民に安心感を広げているといえよう。

運動方針は昨年の衆院選圧勝について「わが党への積極的支持ではなく他党との比較の結果」と総括した。確かに戦後最低の投票率の中、自民党も比例代表の得票数を惨敗した09年衆院選に比べ減らしている。謙虚な自己評価には賛成だ。

だが、本当に「他党との比較」でない信頼を回復したいのであれば、自民党の変化をより明確に示す必要がある。

安倍内閣は経済政策の柱のひとつに財政出動を据え、補正予算などで公共事業に巨額の経費を計上した。一度踏んだアクセルに果たしてブレーキをかけられるのか。ばらまき路線に陥っては、とても財政再建などおぼつかない。

民主党政権の「原発ゼロ」路線を修正する一方で、たまる一方の使用済み核燃料の処理問題に正面から取り組む気配もない。「トイレのないマンション」と指摘されながら方向転換するようでは無責任とのそしりを免れまい。社会保障の全体像をめぐる制度改革の議論にしても、参院選を控え足踏み状態である。

首相はこのところ改憲手続きである憲法96条の改正に加え、集団安全保障に絡め9条改正にも意欲を示すなど次第に「安倍カラー」をにじませている。運動方針は自主憲法制定に向けた取り組みの加速など「自民党らしさ」も意識した。だが国民生活に直結し、避けて通れないような課題から顔をそむけるようでは、いずれ壁に突き当たるのではないか。

党内対立を抱えつつ方向を集約したTPPのような努力を重ねることが「責任与党」にふさわしい。参院選を境に数を頼みにしようとするような発想こそ、禁物である。

読売新聞 2013年03月18日

自民党大会 慢心せず「決められる」政治を

政権復帰と高支持率による高揚感に包まれていた。だが、真価が問われるのは夏の参院選だ。

自民党が都内で定期党大会を開いた。

安倍首相は参院選について「勝ち抜いて、誇りある国、日本を取り戻す」と決意を示した。

安倍政権が着実に実績を上げていることは、率直に評価したい。超円高が是正され、株価も上昇している。事業規模20兆円もの補正予算を成立させ、日銀の正副総裁の国会同意をとりつけた。

首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加も決断した。党大会では、「必ず日本の農業を、食を守っていく。私を信じてほしい」と理解を求めた。

党内では、党を二分する激しい議論が戦わされたが、最後は慎重派が“大人の対応”で矛を収めた。内紛続きで政策が迷走し、国民から見放された民主党との意思決定過程の違いを見せつけた。

自民党は政権党として、業界の利害ではなく、国益を最優先する姿勢を忘れないでもらいたい。

目下のところ、安倍政権は順風満帆だ。読売新聞の世論調査によると内閣支持率は72%で発足時から3回続けて上昇した。自民党の支持率も45%で、2位の民主党5%に大きく水をあけている。

だが、首相の言う通り「決して慢心してはならない」だろう。

先の衆院選での圧勝は、民主党政権への懲罰感情が有権者に働いたからだった。

自民党が国民の信頼を取り戻すには経済政策「アベノミクス」で着実に成果を出し、野党との合意形成に努力して行くしかない。

仮に、自民、公明両党が参院選で勝利し、参院の過半数の議席を獲得すれば国会のねじれは解消する。次の国政選挙まで最大3年あるため、政権運営も安定する。

その一方で、留意しなければならないのは公明党との関係だ。

たとえば、憲法改正について自民党と、日本維新の会、みんなの党は積極的だが、公明党は慎重姿勢を崩していない。

党大会に来賓として出席した公明党の山口代表は「ことを焦ってはいけない。謙虚に、丁寧に幅広い合意形成に努めていく姿勢こそが国民の信頼を得る正攻法だ」と語り、自民党にクギを刺した。

公明党内に、右寄りの「安倍カラー」に対する抵抗感が根強いことをうかがわせる。

自民党は、選挙で依存を深める公明党・創価学会とどう向き合っていくのか。厳しく問われる局面も出てこよう。

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