◆安心して生活できる地域再生を◆
東日本大震災から2年を迎えた。
亡くなった人は1万5881人、行方不明は2668人に上る。
避難生活を送る被災者は31万5000人を下らない。うち約16万人が、東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きた福島県の避難者である。
国民みんなで改めて犠牲者の冥福を祈りたい。再起に向けた歩みは遅れている。政府が主導し、復興を加速しなければならない。
◆今も仮設住宅に11万人
市町村の復興計画が進んでいない背景には、住民の合意形成が難しい事情がある。例えば、商工業を営む場所を高台にするか、沿岸部にするかという問題だ。壁のような防潮堤で海と陸を遮断していいのかという問題もある。
津波で市街の一部が壊滅した宮城県名取市の住民たちは、内陸への集団移転ではなく、現地での再建を望んだ。市は防潮堤建設や区画整理を行って支援する方針だが、反対の声も残るという。
計画を前に進めるには、住民の十分な合意がないまま、始動せざるを得ないのが実情だ。
早期に沿岸部再開発を決めたのは、岩手県釜石市や宮城県気仙沼市、石巻市などの漁業都市だ。「漁業でしか再建できない以上、海辺の土地は捨てられない」(石巻市幹部)との理由からだ。
被災者たちは津波の再来に不安を覚えながら、仮設住宅から水産加工場などに通う。
「収入と安全安心をどう両立させればいいか」。石巻でよく聞かれる言葉は切実だ。
復興策が議会や住民の反発を招き、辞職した町長もいる。それぞれの自治体と住民がジレンマに苦しみながら、「街の再生」を模索した2年だったと言えよう。
被災地のプレハブの仮設住宅には、今も約11万人が暮らす。不自由な生活にストレスや不安を訴える住民が増えていることが懸念される。安定した生活が送れる新住居に早く移れるよう、自治体は復興住宅の建設を急ぐべきだ。
◆復興庁の責任は重大だ
巨額の復興費の消化率が低い実態は看過できない。岩手、宮城、福島の3県と34市町村で、約1・4兆円が今年度中に予算執行できず、新年度に繰り越される。
復興住宅などの事業用地買収が難航したり、利益の薄い工事を業者が敬遠して入札が不調だったりしているためだという。
岩手、宮城両県の沿岸部では、がれきの撤去は進んだものの、津波で地盤沈下した土地のかさ上げや防潮堤建設などの工事に着手できていない地域が多い。
この上、時間を浪費すれば、被災地の再生は遅れるばかりだ。
司令塔機能を発揮すべき復興庁の責任は重い。各自治体との連携を一層強化し、被災地対策を主導する必要がある。
復興庁が最近、復興交付金の使途を広げ、漁業集落の跡地のかさ上げなどにも使えるようにしたのは妥当だ。工事の停滞を解消し、復興予算執行のスピードを上げなければならない。
被災地には、過疎の市町村が多く、その場所にすぐに活気を取り戻すのは容易ではない。
かつて大地震と津波で被災した北海道奥尻島では、住民の高台移転などで多額の復興費が投じられた。しかし、その後は人口の減少に直面している。
東北の被災地も、奥尻の教訓を生かす必要があろう。
青森市、富山市などでは、住民を一つの地域に集め、病院や学校、郵便局も整備して利便性を高める事業を進めている。「コンパクトシティー」と呼ばれる。
被災地の過疎対策への応用も検討に値するのではないか。
安倍首相は、「復興は日本経済再生と並ぶ最重要課題だ。一日も早く結果を出すことで信頼を得たい」と強調している。復興なくして、首相が掲げる「強い経済」は実現できないだろう。
◆問われる具体的成果
政府は今月6日、復興策を点検し、首相に改善を提言する有識者会議「復興推進委員会」のメンバーを大幅に入れ替えた。6月をめどに中間報告をまとめる。
民主党政権が策定した現行の国の復興計画には、被災地の実情に照らすと、見直すべき点が多々あるだろう。復興の遅れは何が原因か。新たにどのような施策が必要か。東北の再生につながる提言をまとめてもらいたい。
大震災から3年目に入り、求められているのは、具体的な行動と成果である。
首相の決意通り、復興を加速させることが政府の使命だ。
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