2年前の様々な教訓を震災対処計画に反映し、自治体などと訓練を繰り返して、緊急時に備えることが肝要である。
自衛隊にとって、東日本大震災は初めての体験が五つも重なった。
過去最大の10万人体制による被災者救出・支援活動、陸海空3自衛隊の本格的な統合部隊の編成、日米共同のトモダチ作戦、予備自衛官の招集、地震・津波と原発事故対処の2正面作戦である。
防衛省には当時、首都直下地震など3種類の巨大地震の対処計画があったが、日本海溝・千島海溝の地震の計画は作成中だった。
それでも、首都直下地震の計画を準用することで、全国からの応援部隊の派遣や関係機関との調整が比較的迅速に実施できた。
昨年末に改定された首都直下地震の計画は、大震災の経験を踏まえ、統合部隊編成や日米共同対処を前提とした。今後、南海トラフ巨大地震の計画も策定する。
重要なのは、自衛隊と自治体などが平時から緊密に連携し、必要な資機材や食料などをそろえ、震災対処体制を強化することだ。
大震災時に前線本部となった陸上自衛隊東北方面総監部(仙台市)は、2011年9月に自治体や警察・消防・海上保安部と教訓検討会、今年1月には情報共有や医療連携の図上演習を実施した。
13年度は、より大規模な図上演習、14年度は2万~3万人規模の実動訓練へと発展させる。
災害時の人命救助は、「黄金の72時間」と呼ばれる初動がカギとなる。停電などで有線・無線通信が途絶した時、いかに緊急通信手段を確保し、被災状況を把握して部隊を効率的に動かすか。
まず対処計画を練り、訓練を実施する。そこで明らかになった問題点を改善するため、体制を見直し、計画も練り直す――。
このサイクルを重ねる地道な作業こそが、より多くの被災者を救えることにつながろう。
ある陸自幹部は「我々は訓練したことしか、実施できない。その覚悟で訓練内容を考え、訓練に臨んでいる」と語る。こうした強い問題意識が訓練を充実させる。
自衛隊は大震災後、災害時に様々な関係機関との協力を可能にする協定を大幅に増やした。
高速道路会社との協定は、自衛隊車両の緊急通行やサービスエリアの優先使用を可能にする。民間の大手スーパーは、食料など緊急物資の提供を約束している。
これらの協力のネットワークを着実に拡大することが大切だ。
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