毎日新聞 2013年03月09日
北朝鮮制裁決議 脅しに屈せぬ包囲網を
3度目の核実験を強行した北朝鮮に対し、国連安全保障理事会が追加制裁決議を全会一致で採択した。
北朝鮮は激しく反発し、特に米国と韓国に対して宣戦布告を思わせるような脅迫を重ねている。
全く度し難い居直りというほかはない。北朝鮮指導部はアウトローのような路線を転換し、国際社会に受け入れられる道を選ぶべきである。容易に実現するとは思えないが、それ以外に自縄自縛の悪循環を回避できる選択肢はありえまい。
新決議の狙いは「ヒト、モノ、カネ」の流れを締め付けて核兵器やミサイルの開発能力を大幅に低下させることにある。
禁輸物資を積んだ疑いのある貨物の検査を加盟国に義務付け、核・ミサイル開発につながる可能性のある金融取引も一切禁止となる。
これまで中国の反対で見送られてきた加盟国への「義務化」が実現したことの意味は小さくない。北朝鮮だけでなく国際社会全体への強いメッセージになるだろう。だからこそ日本や韓国も共同提案国となり、決議採択を歓迎したのである。
ただ結局のところ、この制裁が効果を発揮するかどうかは中国の対応にかかっている。決議に賛成しておきながら貨物や金融取引への監視を怠るようでは意味がない。中国には誠実な取り組みを求めたい。
もちろん最大の問題は北朝鮮だ。ここ数日の挑発的な言動は常軌を逸している。
朝鮮人民軍の声明は、11日から本格化する恒例の米韓合同軍事演習に極端な意味付けをし「精密核攻撃手段」で立ち向かうと明言。朝鮮戦争休戦協定の白紙化も宣言した。
外務省報道官声明では、米本土を意味するらしい「侵略者の本拠地」に対し「核先制攻撃の権利を行使する」と脅迫した。党機関紙・労働新聞には核攻撃により「ソウルだけでなくワシントンまで火の海にする」という記事も掲載された。
北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の好戦的な言動も報じられている。2010年に韓国領の延坪島を砲撃した部隊を第1書記が視察し、同島への「精密攻撃」の手順などを指導したという内容である。韓国に対する悪質な揺さぶりと言えよう。
北朝鮮による米国、韓国への脅迫はこれまでにもたびたびあったが、今回は従来の水準を超えている。
核・ミサイル開発で成果を上げ、居丈高に脅せば国際社会も腰砕けになると見たのか。中国との間に摩擦が生じたか。あるいは体制固めが順調でなく焦っているのか。
真相はどうあれ、日米韓はあらゆる可能性に備えて、油断なく状況を把握する努力が不可欠である。
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読売新聞 2013年03月09日
北朝鮮制裁決議 中国が履行せねば効果はない
北朝鮮の核武装化に歯止めをかけようとする国際社会の圧力強化だ。
国連の安全保障理事会が、3回目の核実験を強行した北朝鮮に対し、経済制裁を追加、強化する決議を全会一致で採択した。
決議は、北朝鮮の核兵器・弾道ミサイル開発計画に関係するカネ、モノ、ヒトの移動の制限・監視を大幅に強化し、主要な制裁措置の実施を各国に義務づける内容だ。「要請」にとどまっていた従来の決議より踏み込んだ。
過去3度の安保理の制裁決議は実効性を欠き、北朝鮮の核やミサイルの開発を阻止できなかった。その教訓を踏まえ、国際社会の強い決意を示したと評価できる。
カネの移動を止めるため、各国は北朝鮮との金融取引や金融サービスを停止し、大量の現金持ち運びを制止しなければならない。
決議は、禁制品積載が疑われる貨物船への検査実施や、検査を拒否した船の入港禁止も定めた。
核・ミサイル開発との関係が疑われる北朝鮮人を国外強制退去させることも義務づけている。
制裁の実効性を高めるには、北朝鮮の最大の貿易相手国かつ援助国である中国が、決議を確実に履行することが欠かせない。
貨物検査などの義務化に消極的だった中国も、北朝鮮をかばいきれず、制裁強化に同意した。厳格な実施で効果を上げてほしい。
北朝鮮は、制裁強化に強く反発し、「より強力な2次、3次の対応措置」を予告している。
決議は、さらなる核実験やミサイル発射には、「さらなる重大な措置をとる」と警告した。中国はエネルギー供給の中止を、韓国は北朝鮮・開城工業団地の閉鎖を検討してもよいのではないか。
懸念されるのは、北朝鮮が恫喝の度合いを強めていることだ。
朝鮮人民軍最高司令部は、「精密核攻撃手段で立ち向かう」「押せば発射、放てば火の海になる」と米国をあからさまに威嚇し、外務省も「核先制攻撃の権利を行使することになる」と宣言した。
朝鮮戦争の休戦協定署名から60周年の7月に北朝鮮は「閲兵式」を計画している。米国との対決を背景に、金正恩第1書記の権威を高める狙いがあるのだろう。
経済再建よりも核武装化の「先軍政治」を優先し、世界で孤立を深める金正恩政権の行方には危うさがつきまとう。関係国は、武力挑発などへの警戒を怠れない。
日本は、北朝鮮の動向を注視し、あらゆる事態に備え、米国や韓国と連携を強化する必要がある。
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産経新聞 2013年03月09日
対北制裁決議 軍事挑発に備えはあるか
国連安保理が、3度目の核実験を強行した北朝鮮への制裁強化決議を全会一致で採択した。
核・ミサイル関連の北への資金、物資、人の移動を規制した決議は厳しい内容で、評価できる。最大の友好国、中国も各国に「完全な履行」を呼びかけた。北は決議を重く受け止めるべきだ。
だが北は反発し、米国への核兵器の先制攻撃など武力行使さえちらつかせている。国際社会は団結し制裁を厳格に履行する一方で、不測の事態への万全の備えにも努めなければならない。
決議は日本を含む14カ国が共同提案国となるなど、北に対する指弾は国際社会の総意だと示した。核・ミサイル関連物資を積んでいると疑われる船舶貨物検査などは、各国の義務とした。
北は米国に対し、「核による先制攻撃の権利を行使することになる」と警告した。また朝鮮戦争の休戦協定のほか、韓国との相互不可侵などをうたった南北基本合意(1991年)も無効にするとも表明した。
これを受け、米大統領報道官は「米国は北朝鮮の弾道ミサイル攻撃から自国を守る能力がある」と述べ、ミサイル防衛(MD)システムで対処できると強調した。脅しを一蹴したことは、北に対しても、自国民に対しても重要なメッセージとなる。
また国務省報道官は、同盟国の日韓を防衛する準備も整っていると言明した。安倍晋三首相が、「米韓両国と連携を密にして国民の生命と財産をしっかり守る」と述べたのは当然だ。
北が中距離弾道ミサイル「ノドン」に核弾頭を搭載し、日本や在日米軍基地を攻撃する事態も想定しておくべきだ。多数のミサイルを同時に発射されれば、迎撃は極めて難しい。米国を狙った弾道ミサイルを迎撃するため、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更も急がねばならない。
核実験・ミサイル発射は東アジアの平和への重大な脅威で、周辺事態法に基づく「周辺事態」に相当するのは明らかだが、政府は過去、認定したことがない。
仮に認めても、自衛隊は米軍への後方地域支援は行うが、協力活動は交戦区域と一線を画するなどとしており、実効性が疑われる規定である。日本の安全保障の枠組みの、根本的な矛盾を直視し、是正しなければならない。
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