政府は、国民一人ひとりに番号を割り振る「共通番号制度関連法案(マイナンバー法案)」を再度、国会に提出した。
与野党の多くは、制度の必要性を認めている。早期に審議入りし、今度こそ確実に成立させるべきだ。
この制度は、顔写真やIC(集積回路)チップの入った「個人番号カード」を交付し、行政機関が社会保障制度と納税を個人番号で管理する仕組みだ。2016年からの利用開始を目指している。
野田内閣が昨年、法案を社会保障と税の一体改革関連法案とともに国会に提出したが、年末の衆院解散で廃案になった。自民、公明、民主3党が法案を修正し、政府が出し直した。
制度導入に伴う国民生活上のメリットは大きい。複雑な社会保障給付の申請手続きが大幅に簡素化されるからだ。
例えば、年金の給付を申請する際、現在、住民票と所得証明書などを提出しなければならないが、その手間や費用が不要になる。
国民は、個人用ウェブサイトを使って、自宅のパソコンから社会保障や税に関する自分の情報を見ることができる。年金の記録漏れを自ら監視することも可能だ。
手続きに時間や費用がかかっている社会保障給付など、行政のコスト削減効果も期待されよう。
国や市町村が個人の納税記録や所得情報を把握し、税を公平に徴収する環境が整う。所得の過少申告や税の不正還付を防ぐ有力な手段にもなる。
共通番号を活用し、低所得者らに対するきめ細かな社会保障給付を行うべきだ。消費増税の際、逆進性を緩和するための「給付付き税額控除」を導入する場合にも、共通番号が欠かせない。
国会審議の焦点は、個人情報をいかに保護するかである。信頼できるシステム構築が肝要だ。
情報漏えいを監視するため、法案が独立性の高い委員会の設置を盛り込んだのは妥当と言える。
委員会には強力な調査権限が付与され、不正があった場合に勧告や命令ができる。違反者には刑事罰も科す。番号の管理を徹底し、不正利用を防がねばならない。
番号を利用する適用範囲の拡大も将来的な課題になる。法案は診療情報を利用対象としていないが、いずれ検討すべきだ。
患者が複数の医療機関で重複検査・投薬を受ける無駄を省く仕組みに生かすことも有益だろう。
国民が納得できるよう、与野党は審議を尽くしてもらいたい。
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