衆参ねじれ国会の下でも、政府提出の案件が参院で可決できるという実績が現れた。
安倍首相が言うように「決められる政治への大きな第一歩」となるだろうか。
事業規模20兆円超に上る緊急経済対策を実施するための2012年度補正予算が、参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。
採決で野党の対応が分かれた。維新の会の他、国民新党、新党改革などが賛成し、民主、みんな、生活、共産、社民各党などの反対票をわずか1票差で上回った。
与党にとっては、個別の政策ごとに連携を図る部分連合が奏功したということだろう。
維新の会の存在が大きい。従来のような「何でも反対の野党」ではなく、是々非々で対応すると主張してきたが、補正予算の対応はその具体化の一つだと言える。
民主、みんな、生活、社民の4党は、補正予算案の修正案を共同提出し、否決された。今国会での初の野党共闘だった。
これに維新の会が同調しなかったことは、今後の国会攻防や民主党が呼び掛ける参院選への野党協力にも影響するかもしれない。
今回の補正予算で、デフレからの脱却に向けた安倍政権の経済政策「アベノミクス」の財政政策が動き出すことになる。
政府は、補正予算を13年度当初予算案とともに「15か月予算」と位置づけ、日本経済の本格回復を目指している。補正予算を早期に執行し、緊急経済対策の成果を上げねばならない。
補正予算による景気浮揚は、来年4月に予定される消費税率の8%への引き上げにも欠かせない。経済状況の好転が増税の条件であり、政府は今秋をメドに消費増税の可否を判断するからだ。
復興事業が本格化している東日本大震災の被災地では、生コンクリートなどの建設資材や建設作業員の不足で、公共事業の遅れが指摘されている。政府は、補正予算の執行状況にも十分目を光らせる必要がある。
民主党は、補正予算に反対する理由として「旧来型の公共事業の大盤振る舞いで、被災地の復興や真の経済再生につながるのか疑念が強い」と主張している。
無論、政府は事業内容を精査して、効率的な公共事業を実現しなければならない。
機動的な財政出動によって当面景気刺激策を優先すべきであるにせよ、財政健全化への取り組みも忘れてはなるまい。
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