補正予算成立 意義ある参院での1票差可決

毎日新聞 2013年02月27日

補正予算成立 国会で政策連合を競え

緊急経済対策を盛り込んだ総額13.1兆円の12年度補正予算が成立、安倍内閣は最初のハードルを越えた。参院本会議でも野党の一部が賛成に回るなど1票差で可決され、国会の構図変化を印象づけた。

ねじれ国会の参院で民主党が決定権を握り抵抗するような戦術はもはや通用しない。与野党が多数派の形成を目指し政策連合を競い合う展開が今後、強まることは確実だ。とりわけ民主党には、早急に政策重視にかじを切るよう求めたい。

安倍内閣の順調な滑り出しを象徴するような参院本会議採決だった。補正予算案にはみんなの党なども反対していたため参院での否決後、憲法の衆院優越の規定に従い成立すると当初はみられていた。

ところが民主党の2参院議員が離党届を提出するなど参院の状況は変化している。日本維新の会など一部野党の協力を得たことなどで参院本会議では僅差ながら可決された。与党が政策ごとに野党と合意を形成する「部分連合」の大きな足がかりを得たといえよう。

序盤国会で民主党は政策重視をアピールしきれなかった。国会同意人事をめぐり当然廃止すべき「事前報道ルール」にいったん固執して批判を浴びた。日銀総裁人事をめぐっても黒田東彦氏の起用方針が事前に報道されたことに民主党は不快感を示している。政策、人物本位で判断する姿勢をなぜ、明確に打ち出さないのか。

今回の補正予算案採決では民主、みんな、生活、社民4党が公共事業費を削減する共同修正案を提出した。結局、否決されたが、政策別に連合し与党に対峙(たいじ)する取り組みを柱に据えるべきだ。

追い風に乗る形の安倍内閣だが、国会で民主党も含めた合意を形成する努力を怠ってはならない。通常国会で13年度本予算案審議が次の焦点となると同時に、政府・与党は個人番号利用法案(マイナンバー法案)など多くの懸案を抱える。参院選を控え会期延長の余裕は乏しいうえ、政権再交代の影響で本予算案の審議入りが遅れるなど、日程は厳しい。与野党の活発な政策協議が欠かせない。

安倍晋三首相による施政方針演説の中身が問われる。さきの所信表明演説は政策を総合的に説明する内容ではなかった。とりわけ、日米首脳会談で地ならしが進んだ環太平洋パートナーシップ協定(TPP)については、参加意思を明確に表明すべきだ。

こう着状態が続く日中関係など首相の見解が改めて注目されるテーマは多いはずだ。安倍内閣のビジョンを国民に語りかけ、与野党の論戦につなげてほしい。

読売新聞 2013年02月27日

補正予算成立 意義ある参院での1票差可決

衆参ねじれ国会の下でも、政府提出の案件が参院で可決できるという実績が現れた。

安倍首相が言うように「決められる政治への大きな第一歩」となるだろうか。

事業規模20兆円超に上る緊急経済対策を実施するための2012年度補正予算が、参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。

採決で野党の対応が分かれた。維新の会の他、国民新党、新党改革などが賛成し、民主、みんな、生活、共産、社民各党などの反対票をわずか1票差で上回った。

与党にとっては、個別の政策ごとに連携を図る部分連合が奏功したということだろう。

維新の会の存在が大きい。従来のような「何でも反対の野党」ではなく、是々非々で対応すると主張してきたが、補正予算の対応はその具体化の一つだと言える。

民主、みんな、生活、社民の4党は、補正予算案の修正案を共同提出し、否決された。今国会での初の野党共闘だった。

これに維新の会が同調しなかったことは、今後の国会攻防や民主党が呼び掛ける参院選への野党協力にも影響するかもしれない。

今回の補正予算で、デフレからの脱却に向けた安倍政権の経済政策「アベノミクス」の財政政策が動き出すことになる。

政府は、補正予算を13年度当初予算案とともに「15か月予算」と位置づけ、日本経済の本格回復を目指している。補正予算を早期に執行し、緊急経済対策の成果を上げねばならない。

補正予算による景気浮揚は、来年4月に予定される消費税率の8%への引き上げにも欠かせない。経済状況の好転が増税の条件であり、政府は今秋をメドに消費増税の可否を判断するからだ。

復興事業が本格化している東日本大震災の被災地では、生コンクリートなどの建設資材や建設作業員の不足で、公共事業の遅れが指摘されている。政府は、補正予算の執行状況にも十分目を光らせる必要がある。

民主党は、補正予算に反対する理由として「旧来型の公共事業の大盤振る舞いで、被災地の復興や真の経済再生につながるのか疑念が強い」と主張している。

無論、政府は事業内容を精査して、効率的な公共事業を実現しなければならない。

機動的な財政出動によって当面景気刺激策を優先すべきであるにせよ、財政健全化への取り組みも忘れてはなるまい。

産経新聞 2013年02月28日

1票差で補正成立 さらに政策ごとの連携を

今年度補正予算が成立した。早期執行で景気浮揚につなげてほしい。それとともに、衆参ねじれ下でも「参院否決」をはさまず予算成立が図られた点を評価したい。

与党の自民、公明両党は参院過半数に16議席足りない。当初は民主党などの反対で参院否決後、両院協議会などの手続きが必要とみられていたが、本会議では1票差で可決された。

日本維新の会や国民新党、新党改革に加え、離党届を提出済みの民主党議員やみどりの風の議員らが成立に動いたためだ。

国民の利益を守る予算や法律なら野党でも賛成すべきだとの現実的判断が重なったのだろうが、支持できる行動だ。各党は政策ごとの連携を一層進めてほしい。

成立した補正予算は、経済成長を通じてデフレ脱却を目指す「アベノミクス」の財政面での第1弾といえるものだ。景気浮揚の即効性が高いとされる公共事業を5兆円規模で盛り込んでおり、成果を確実に生み出すため、迅速な執行に全力を挙げねばならない。

安倍晋三首相は財政出動と金融緩和、成長戦略を「三本の矢」と位置付けている。来年4月予定の消費税増税の実施は今秋、景気動向により最終判断する。

ただ、公共事業の景気効果は長く続かない。継続的成長につなげるには、規制緩和など民間活力を引き出す成長戦略も欠かせない。こうした点は、来年度予算案審議などを通じて与野党が引き続き論戦を展開する必要がある。

野党の多くも補正予算の緊急性や必要性は認めていたが、採決時まで結果が読み切れないほど賛否は拮抗(きっこう)した。首相は「決められない政治から、決めることができる政治への一歩」と語った。

新たな第三極勢力として登場した維新の会は、政権与党に是々非々で臨む方針を掲げ、早々と補正予算への賛成を決めた。

民主党が、衆参ねじれという「武器」を手に審議引き延ばしで政府・与党に抵抗し、反対のための反対を行う従来の手法は国民から受け入れられないことを示している。憲法改正の発議要件緩和についても、自民、維新やみんなの党が協力する新たな枠組みの構築を求めたい。

内外の危機を克服するため、政策の実現に取り組む姿を国民が注視していることを、与野党ともに肝に銘じるべきである。

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