財政再建路線に対するイタリア国民の強い不満が表れた結果だ。政局混乱で、欧州危機が再燃する恐れが出てきた。
モンティ政権の改革路線の是非を問う総選挙で、反緊縮派のベルルスコーニ前首相の中道右派連合が、事前の予想を上回る議席を獲得した。
下院では、改革路線を大枠で支持する中道左派連合が議席の過半数を辛うじて制したが、上院では、いずれの政党連合も過半数獲得には至らなかった。
選挙結果を受け、日米の為替市場ではユーロが急落し、円高・ユーロ安が進んだ。世界各地の株式市場も軒並み株安となった。ユーロ圏3位の経済大国の財政再建後退に警戒感を示したものだ。
2011年秋に発足した経済学者モンティ氏を首相とする実務者内閣は、増税や年金改革などで財政赤字の削減を図った。労働市場に柔軟性を持たせる法改正など構造改革にも乗り出した。
市場の評価は高かったが、モンティ首相が進めようとした改革は、中道右派各党の支持を得られず、中途半端に終わった。
選挙で、中道右派連合は、増税見直しなど反緊縮の大衆迎合的な政策を掲げ、支持を広げた。
景気後退に陥り、失業率が増加したことに批判的な国民の受け皿になったと言える。
一方で、既成政党の腐敗体質を批判した新党が第3党に食い込んだのは、国民の間に根強い政治不信を反映している。
今後の焦点は、連立交渉を試みると見られる中道左派連合の政権作りだ。しかし、中道右派との大連立は、政策の隔たりが大きく、先行きは不透明だ。
再選挙で打開を図る可能性もある。いずれにしてもイタリア政治の混迷は長期化しかねない。
イタリアが、はたして政局を安定させられるかが問われよう。
ギリシャに端を発した欧州の財政・金融危機は、昨秋以降、欧州中央銀行(ECB)による大胆な国債買い取り方針などで、ようやく沈静化の兆しが見えていた。
ただ、マイナス成長に陥ったユーロ圏では実体経済の低迷は深刻で、今後の展開も波乱含みだ。
スペインでは金融不安がくすぶり、与党への不正献金疑惑も浮上している。9月にはドイツで、メルケル首相の欧州危機対応が争点となる総選挙が控えている。
ユーロ圏全体はもちろん、世界経済に悪影響を与えないよう、イタリアの改革が頓挫する事態は避けなければならない。
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