逆風の中の再出発である。
民主党があす、東京都内で党大会を開き、新たな党の綱領と改革案を示す。
壊滅的な大敗を喫した総選挙から2カ月あまり。文字どおり党の再生をかける。
民主党への国民の不信感は根強い。夏の参院選では苦戦が予想され、きのうも2人の参院議員が離党届を出した。
国会では存在感を示せず、他の野党との選挙協力でも蚊帳(かや)の外に置かれている。
八方ふさがりである。
それでも、政権与党の経験を持ち、全国に根を張る野党は民主党以外にない。
再び内紛と分裂を繰り返していては、日本の政治に進歩はない。
党の理念を再確認し、組織や運営方法のどこに問題があったかを見つめ直す。それが出発点となる。
新しい綱領は「生活者、納税者、消費者、働く者の立場に立つ」「個人として尊重され、多様性を認める共生社会」をめざす、などとしている。
政権復帰を果たし、支持基盤とのパイプを再び強めている自民党との対立軸を意識したものだろう。
目を引くのは、党運営の反省点や総選挙敗北の総括を盛り込んだ報告書である。
▽09年総選挙のマニフェストは、財源の裏付けが不十分で実現性を欠いた。
▽政治家と官僚の仕事の仕分けができず、官僚との意思疎通を欠いた。
▽適材適所の人材配置ができず、閣僚の交代も頻繁だった。
そのうえで「民主党が政権担当能力を身につけ再生するのは容易ではない」と、自らの統治能力のなさを、あけすけに認めている。
嘆息せざるをえないが、これが民主党の実情だろう。
だが、言葉だけではもはや有権者の心に響かない。
こうした反省を、党運営や政策づくりにどう生かすのか。要はその実行力である。
たとえば、生活者の中にも利害の対立があり、働く者の立場も様々だ。それをいかに調整するかが統治能力であり、民主党が問われたものである。
一方、民主党政権下では、外交密約をふくむ情報公開や、将来のエネルギー政策をめぐる「国民的議論」など、国民の視点に立った取り組みもあった。
いずれも自民党政権下では考えられなかったものだ。
「民主党らしさ」を全否定することはない。そこにも党再生の手がかりがあるはずだ。
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