民主党大会 反省を糧に、前へ

朝日新聞 2013年02月23日

民主党大会 反省を糧に、前へ

逆風の中の再出発である。

民主党があす、東京都内で党大会を開き、新たな党の綱領と改革案を示す。

壊滅的な大敗を喫した総選挙から2カ月あまり。文字どおり党の再生をかける。

民主党への国民の不信感は根強い。夏の参院選では苦戦が予想され、きのうも2人の参院議員が離党届を出した。

国会では存在感を示せず、他の野党との選挙協力でも蚊帳(かや)の外に置かれている。

八方ふさがりである。

それでも、政権与党の経験を持ち、全国に根を張る野党は民主党以外にない。

再び内紛と分裂を繰り返していては、日本の政治に進歩はない。

党の理念を再確認し、組織や運営方法のどこに問題があったかを見つめ直す。それが出発点となる。

新しい綱領は「生活者、納税者、消費者、働く者の立場に立つ」「個人として尊重され、多様性を認める共生社会」をめざす、などとしている。

政権復帰を果たし、支持基盤とのパイプを再び強めている自民党との対立軸を意識したものだろう。

目を引くのは、党運営の反省点や総選挙敗北の総括を盛り込んだ報告書である。

▽09年総選挙のマニフェストは、財源の裏付けが不十分で実現性を欠いた。

▽政治家と官僚の仕事の仕分けができず、官僚との意思疎通を欠いた。

▽適材適所の人材配置ができず、閣僚の交代も頻繁だった。

そのうえで「民主党が政権担当能力を身につけ再生するのは容易ではない」と、自らの統治能力のなさを、あけすけに認めている。

嘆息せざるをえないが、これが民主党の実情だろう。

だが、言葉だけではもはや有権者の心に響かない。

こうした反省を、党運営や政策づくりにどう生かすのか。要はその実行力である。

たとえば、生活者の中にも利害の対立があり、働く者の立場も様々だ。それをいかに調整するかが統治能力であり、民主党が問われたものである。

一方、民主党政権下では、外交密約をふくむ情報公開や、将来のエネルギー政策をめぐる「国民的議論」など、国民の視点に立った取り組みもあった。

いずれも自民党政権下では考えられなかったものだ。

「民主党らしさ」を全否定することはない。そこにも党再生の手がかりがあるはずだ。

毎日新聞 2013年02月25日

民主党大会 危機感裏づける行動を

野党に転落し約2カ月を経た民主党の党大会が行われた。海江田万里代表はあいさつで次期参院選と東京都議選を「党の存亡をかけた戦い」と強調、党の結束と地域での活動強化を訴えた。

反転攻勢を目指す同党だが、2参院議員の離党届提出で気勢をそがれるなど、再起の足がかりがつかめない厳しい状況に置かれている。有権者の信頼を取り戻す近道などはない。党の理念を確認したうえで地方組織の立て直しなど、腰を据えた出直しを求めたい。

大会では衆院選惨敗の総括が了承された。野田佳彦前首相や小沢一郎氏らへの実名批判を見送るなど当初案に比べれば穏やかになったが、党内統治の欠如などを列挙し、それなりに辛辣(しんらつ)な内容だ。政権交代実現で党の目標がぼやけ、与党としての目的を議員が共有できず、政権の迷走を招いたといえよう。

その意味で、新綱領の決定は当然の対応だ。綱領は現憲法の基本精神を評価したうえで象徴天皇制のもとで「未来志向の憲法を構想」するとした。改憲、護憲派を抱える党内事情を反映した表現とはいえ、いわゆる自主憲法論と一線を画した論憲の立場を示したことは評価できる。

「中道」「リベラル」などの盛り込みは見送られたが、そもそもこうした言葉の定義自体があいまいだ。「改革政党」「共生社会」「新しい公共」などの指針をどう政策に反映していくかが問われよう。

表向きは再起を期した大会となったが、同党が本当に苦境から抜け出せるか、こころもとない。海江田氏の言葉や党の総括文書と裏腹に、危機感を裏づける行動が不十分と言わざるを得ないためだ。

衆院選の責任者だった輿石東前幹事長が参院議員会長として依然として参院の仕切り役であること自体、一般の感覚では理解し難いのではないか。綱領に掲げた「既得権と闘う改革政党」どころか、閉鎖的な労組依存に陥る懸念も指摘されている。

野田前政権を支えた旧主流派も含めた挙党体制の構築に海江田氏が真剣に取り組んでいるとも言い難い。衆院で60議席すら割り込んだのに、総力を挙げずにどうするのか。

自民党が野党に転落した際は地方議員らの強固な岩盤に支えられた。民主党はこうした基盤に乏しいだけに、NPOや市民団体も加えた広範な支持層を形成できるかどうかがカギを握る。労組依存を強めるとすれば、こうした方向に逆行する。

参院選で同党は他野党との選挙協力を探っているが、現状では足元をみられよう。党首の海江田氏が党再建の覚悟を思い切った行動で証明することが何よりも先決である。

読売新聞 2013年02月25日

民主党大会 新綱領で一致団結できるか

文字通り、崖っぷちからの再出発である。

民主党が定期党大会を開き、党の基本理念・目標を定める綱領や、政権運営・衆院選惨敗を総括する第1次報告を採択した。

海江田代表はあいさつで、「新しい綱領の下に一致団結しよう」と党の結束を呼びかけた。

綱領は、民主党が生活者、納税者、消費者、働く者の立場に立ち、「既得権や癒着の構造と闘う改革政党」だと明記している。

1998年の結党時に「私たちの基本理念」という文書を作成してはいるが、今回、遅ればせながら、正式な「綱領」を制定した。「民主中道」「リベラル」といったイデオロギーを掲げなかったのは、保守系が反対したためだ。

自民党から社会党まで、様々な出身母体を持つ議員が「反自民」で結集した「寄り合い所帯」「選挙互助会」的な体質が今なお残っていることは、否定できない。

綱領は、「共生社会」「新しい公共」といった抽象的なキーワードが目立つが、自民党との対立軸が明確とは言い難い。

特に憲法では、「憲法の基本精神を具現化する」「未来志向の憲法を構想していく」と、護憲派、改正派の双方に配慮した両論併記となり、目指す方向が不明確だ。従来同様、当面の党内融和を優先した問題の先送りに過ぎない。

2013年度活動方針は、今夏の東京都議選と参院選を「党の存亡を賭けた重大な政治決戦」と位置づけた。当然の認識だ。2大政党の一翼を担い続けられるかどうかの正念場となろう。

民主党を取り巻く現在の環境はかつてなく厳しい。

22日には、夏に改選を迎える参院議員2人が離党届を提出した。有権者が不信を募らせる民主党では戦えない、という判断もあるのだろう。1月末の北九州市議選で民主党は、自民、公明、共産に次ぐ第4党に転落した。

国会対応でも、民主党が12年度補正予算案に反対したのに対し、日本維新の会は賛成するなど、野党共闘の足並みは乱れている。

民主党大会では、いずれも民主党を離党した維新、みんなの党の幹部が来賓挨拶(あいさつ)を行い、民主党の労組依存体質などを批判した。

参院選に向けては、維新、みんな両党などとの選挙協力が重要課題となるが、政策面の違いが障害となり、進んでいない。

民主党が両党との連携を追求するなら、憲法や外交・安全保障など政策面で、より現実的な路線をとることが求められよう。

産経新聞 2013年02月25日

民主党 無責任な野党で終わるな

野党に転落後、初めての民主党大会が開かれた。「二度と国民の信頼を裏切らない」と海江田万里代表は語ったが、決意を国民の心に届けるには目に見える形で党が変わらねばならない。

この国をどうするかの明確なビジョンを掲げ、迷走を重ねた諸政策に決別し、転換を図るのが先決である。

そのためには、党内融和を優先するあまり重要政策の決定を先送りしてしまう体質を正し、リーダーの下、「決めたことは守る」という当たり前の政党になることだ。でなければ、元の無責任な野党で終わってしまう。

大会では、政権担当能力が欠けていたことを認める厳しい内容の衆院選総括を採択し、これまでなかった党綱領を決定した。

問題は、憲法について綱領で「国民とともに未来志向の憲法を構想していく」と言及した一方、平和主義など現行憲法の「基本精神を具現化する」としたことだ。改憲と護憲の併記では、いったいどちらなのかわからない。

象徴的な問題の解決を、党内のさまざまな意見に遠慮して先延ばしするのは変わらない。両院の憲法審査会などで、自民党と本格的な憲法論議を戦わせなければ、政権を担う政党に値しない。

党の性格付けとして、「働く者」の立場で「既得権や癒着の構造と闘う」と強調した。

だが民主党に対しては常々、日教組など特定労組への過度な依存体質のあることが批判されてきた。にもかかわらず、党大会で海江田氏が労組の選挙支援への感謝を繰り返したことは、転換への本気度を疑わせる。

「外交の基軸である日米同盟の深化」を掲げ、自衛力の着実な整備で「国民の生命・財産、領土・領海を守る」と明記した。尖閣諸島を守る具体策を示すべきだ。

「決められる政治」の端緒となった消費税増税の3党合意を進めることも党再生の第一歩だ。

衆院選の壊滅的敗北から2カ月を経て、民主党の政党支持率は下げ止まらず、党大会直前には参院議員2人が離党届を出した。

どん底の状況にもかかわらず政策そっちのけで現実路線を無視しては、日本維新の会など第三極勢力との共闘も望めないだろう。巨大与党に対峙(たいじ)し、必要な政策には協力できる責任野党に生まれ変わるには、なお課題が多い。

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