3人死刑執行 凶悪犯罪の抑止につなげたい

読売新聞 2013年02月22日

3人死刑執行 凶悪犯罪の抑止につなげたい

3人の死刑囚に対する刑が21日、執行された。昨年12月に発足した安倍政権の下で、初めての執行である。

就任2か月で執行を命じた谷垣法相は、執行後の記者会見で「法の精神を無視するわけにはいかない」と述べた。死刑確定から6か月以内に刑を執行しなければならないと定めた刑事訴訟法を重視した発言だ。

法相に課せられた重い職責を、粛々と遂行していく姿勢を示したと言える。

民主党政権では、死刑の執行が少なく、約1年8か月にわたり途絶えた時期もあった。死刑制度に批判的な法相の就任が続いたためだ。その結果、確定死刑囚は今回の執行前で、戦後最多の137人に上っていた。

死刑制度については、国際的には維持する国より、廃止か停止した国の方が多い。

一方、日本では、内閣府の世論調査で死刑容認が85%を占めている。谷垣法相が「制度を現時点で見直す必要はない」と語ったのも国民感情を踏まえたものだ。

国民が参加する裁判員裁判で死刑判決が出されるようになり、既に3人の死刑が確定している。そんな現状も考慮すれば、確定判決を精査した上で、厳正に制度を運用していくことが求められる。

今回、刑が執行されたのは、2004年に奈良県で女児を誘拐し殺害した男や、08年に茨城県のJR常磐線荒川沖駅などで9人を殺傷した男らだ。

いずれも、社会を震撼(しんかん)させた、卑劣かつ残虐な犯罪だ。被害者・遺族が受けた傷は大きく、処罰感情も厳しいものがある。

奈良の誘拐殺人事件では、帰宅途中の小学1年の女児をわいせつ目的で連れ去り、遺体の写真を女児の母親にメール送信するなど、悪質性が際立っていた。

殺害した被害者が1人であっても、凶悪な性犯罪では極刑を免れないという厳罰化の流れが明確に示されたケースだろう。

奈良の事件は、死刑囚に性犯罪歴があったことから、再犯対策の検討を迫る契機となった。

法務省は、子供に対する性犯罪の前歴者について、出所後の居住地情報を警察庁に提供するようになった。刑務所では性犯罪者に再犯防止プログラムを受講させ、感情をコントロールする方法を身に着けさせている。

しかし、性犯罪の被害は後を絶たない。死刑執行は、凶悪犯罪の抑止が目的の一つであることを改めて考えたい。

産経新聞 2013年02月23日

死刑の執行 犯罪抑止のために必要だ

死刑囚3人の刑が執行された。死刑執行は昨年9月以来で、昨年末に政権交代した安倍晋三内閣では初めてとなる。

谷垣禎一法相は執行後の会見で、判決確定から6カ月以内に死刑を執行するように定めた刑事訴訟法の規定を挙げ、「法の精神を無視することはできない」と語った。

当然の判断である。刑の執行を前提としない判決など、意味をなさない。法相の資質や私見によって執行が滞留するようなことは許されない。今後も粛々と法相の職務を全うし、重大犯罪の抑止に役立ててほしい。

民主党政権では、柳田稔氏から平岡秀夫氏まで4代の法相の下で執行ゼロが続き、平成23年は19年ぶりに1件も執行されなかった。未執行の確定死刑囚が130人を超す異常事態が続いている。

裁判員裁判で国民の代表が苦しみ悩み抜いた末に出した死刑判決もある。法相の職責は、より重くなっていると考えるべきだ。

死刑存続については国連など海外からの批判もある。しかし、谷垣法相は「死刑は極めて大きな内政上の問題だ。治安維持や国民感情という観点をしっかり考えるべきだ」と反論し、「制度の大綱について、現時点で見直す必要はない」と言い切った。法相の発言を支持したい。

民主党政権時代の22年、当時の千葉景子法相は「国民的な議論の契機にしたい」と東京拘置所の刑場を報道機関に公開し、省内に「死刑の在り方についての勉強会」を設置した。

だが、この勉強会は昨年3月、「(死刑)存廃の結論を取りまとめることは相当ではない」との報告書を公表して、議論を打ち切った。谷垣法相は、こうした勉強会についても改めて設置しない意向を示している。

今回、刑が執行された一人は、16年に奈良市の小学1年女児をわいせつ目的で誘拐し、殺害した。一人は20年、茨城県のJR荒川沖駅などで、男女9人を無差別に殺傷した。

谷垣法相は「いずれも身勝手な理由で尊い命を奪った。極めて残忍な事件」と強調した。

21年に内閣府が行った世論調査では、死刑の存続派が85・6%にのぼり、廃止派の5・7%を大きく上回った。日本の国民は、こうした凶悪犯罪に国が厳刑をもって臨むことを強く支持している。

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