3人の死刑囚に対する刑が21日、執行された。昨年12月に発足した安倍政権の下で、初めての執行である。
就任2か月で執行を命じた谷垣法相は、執行後の記者会見で「法の精神を無視するわけにはいかない」と述べた。死刑確定から6か月以内に刑を執行しなければならないと定めた刑事訴訟法を重視した発言だ。
法相に課せられた重い職責を、粛々と遂行していく姿勢を示したと言える。
民主党政権では、死刑の執行が少なく、約1年8か月にわたり途絶えた時期もあった。死刑制度に批判的な法相の就任が続いたためだ。その結果、確定死刑囚は今回の執行前で、戦後最多の137人に上っていた。
死刑制度については、国際的には維持する国より、廃止か停止した国の方が多い。
一方、日本では、内閣府の世論調査で死刑容認が85%を占めている。谷垣法相が「制度を現時点で見直す必要はない」と語ったのも国民感情を踏まえたものだ。
国民が参加する裁判員裁判で死刑判決が出されるようになり、既に3人の死刑が確定している。そんな現状も考慮すれば、確定判決を精査した上で、厳正に制度を運用していくことが求められる。
今回、刑が執行されたのは、2004年に奈良県で女児を誘拐し殺害した男や、08年に茨城県のJR常磐線荒川沖駅などで9人を殺傷した男らだ。
いずれも、社会を震撼させた、卑劣かつ残虐な犯罪だ。被害者・遺族が受けた傷は大きく、処罰感情も厳しいものがある。
奈良の誘拐殺人事件では、帰宅途中の小学1年の女児をわいせつ目的で連れ去り、遺体の写真を女児の母親にメール送信するなど、悪質性が際立っていた。
殺害した被害者が1人であっても、凶悪な性犯罪では極刑を免れないという厳罰化の流れが明確に示されたケースだろう。
奈良の事件は、死刑囚に性犯罪歴があったことから、再犯対策の検討を迫る契機となった。
法務省は、子供に対する性犯罪の前歴者について、出所後の居住地情報を警察庁に提供するようになった。刑務所では性犯罪者に再犯防止プログラムを受講させ、感情をコントロールする方法を身に着けさせている。
しかし、性犯罪の被害は後を絶たない。死刑執行は、凶悪犯罪の抑止が目的の一つであることを改めて考えたい。
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