毎日新聞 2013年02月14日
断固たる北朝鮮対応を
財政難の折、米国の力はなるべく使いたくないが、世界には対応すべき問題が多い−−。言葉の端々にそんなジレンマが感じ取れた。オバマ米大統領の一般教書演説である。
大統領は、この演説にぶつけるように3度目の核実験を行った北朝鮮に対し「この種の挑発はさらなる孤立を招くだけ」と警告した。昨年の演説では北朝鮮にふれず、一昨年も短い言及にとどまっていた。
久々に大統領が北朝鮮に強い態度を示したことを歓迎したい。北朝鮮は核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成をめざしており、米国への核攻撃を思わせる動画さえネット上で流して、オバマ政権の出方をうかがっている。
危機は深刻である。長年、日本が北朝鮮の脅威の矢面に立たされてきたが、核の小型化を念頭に置いたとされる核実験と昨年末の弾道ミサイル発射で、米国にも現実的な脅威が及んだ。大統領が言うように、日米をはじめ同盟国の結束が不可欠だ。
国際社会の制止にもかかわらず、火遊びのように核実験を繰り返す北朝鮮は厳しく罰せられるべきである。中国が北朝鮮をかばう可能性もあるが、安保理が断固たる対応を取れるよう米国の指導力が望まれる。
「核兵器のない世界」を看板とするオバマ大統領は、ロシアとの核軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」を上回る規模で核兵器を削減する意向を示した。この点も評価したい。核拡散防止条約(NPT)は、公認の核兵器保有国(米英仏露中)に対して核兵器削減を求めているからだ。他の4カ国も自発的な削減に努めてほしい。
さらに、アフガニスタン駐留米軍の「14年末までの完全撤収」のために、向こう1年間で3万4000人を削減することも表明した。撤収自体は喜ばしいが、アフガン情勢はなお険悪で、いかに米財政逼迫(ひっぱく)の折とはいえ、予定通りに撤収していいか慎重に判断すべきだろう。
注目されたのは、アルジェリアの人質事件に見るような過激派の広がりに関して、大統領が「何万人もの私たちの息子や娘を派遣して他国を占領する必要はない」と述べ、関係国の側面支援に徹する姿勢を明確にした点だ。その背景にも国防予算削減があるのは明らかで、「テロとの戦争」を世界各地で続けたブッシュ前政権との違いが際立っている。
大統領は「米国の経済成長のエンジンを再起動」し、中間層の雇用創出を針路の「北極星」として、引き続き経済を最優先する構えだが、北朝鮮やテロ組織が米国の台所事情を見透かして勢いづいている疑いもある。米国は世界の平和と安全への確固たる関与を忘れないでほしい。
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読売新聞 2013年02月14日
オバマ演説 「北の核」対処へ行動が肝心だ
「核兵器のない世界」の実現を目標に掲げてノーベル平和賞を受賞したオバマ米大統領は、そうした理想とは逆の深刻な現実を、北朝鮮から突きつけられたと言えよう。
大統領は、2期目最初の一般教書演説を行い、今後1年間の施政方針を示した。その中で、核実験を強行した北朝鮮に強く警告し、「断固とした行動」を取る姿勢を明確にした。
核実験のような挑発行為をすれば、「北朝鮮は孤立するだけだ」と述べ、米国が「世界の先頭に立って」、厳しく対処していく決意を表明した。イランの核開発を阻止し、ロシアとは核弾頭削減の取り組みを進めるとも述べた。
制裁で圧力をかけ、関係国と緊密に連携し、外交を駆使して、核の脅威をなくす必要がある。大統領の行動力に期待したい。
核問題以外でも、サイバーテロ防止、自由と民主主義の擁護、中東やアフリカの過激派対策支援に積極的に関与すると強調した。
アフガニスタン駐留米軍の撤収を進めつつ、国際協調を軸に、唯一の超大国として、世界の安全維持に主導的な役割を果たそうとする強い意欲がうかがえる。
どう結果を出すかが問題だ。
演説で語られなかったアジア重視の中身や、中国をどう位置づけるのかも、2期目の外交・安全保障政策の焦点である。
一方、内政で優先課題に挙げたのが財政再建と経済再生だ。
大型減税失効と歳出の強制削減が重なる「財政の崖」からの転落は、今年初め、大統領と議会の妥協の末、ひとまず回避された。
しかし、抜本的な財政再建策を巡って対立し、財政運営の綱渡りは続く。先延ばしした歳出削減の発動が3月1日に迫る。
大統領は「成長のエンジンとなる中間所得層の再活性化」を訴えた。中間層を重視し、膨張する医療保険や社会保障の改革などを柱とした財政再建の実現へ、共和党に大幅譲歩を求めたものだ。
一段と対決色を鮮明にしたことで、激しい攻防が予想される。
ただ、強制的に歳出削減されると、回復基調にある米国経済に悪影響を及ぼす。国防費の大幅削減はアジアなどでの米国の安全保障体制にも支障を与えかねない。
大統領は雇用拡大を図るため、環太平洋経済連携協定(TPP)の妥結を目指す決意も表明した。日本は参加を急ぐべきだ。
内外に課題が山積する中で、問われるのはオバマ氏の指導力だ。挑戦と試練が続くに違いない。
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産経新聞 2013年02月14日
一般教書演説 米は「強い決議」の先頭に
核実験を強行した北朝鮮に対して、オバマ米大統領は2期目初の一般教書演説で「国際社会を主導して断固たる措置をとる」と言明し、これ以上挑発を許さない決意を内外に表明した。
国連安保理も緊急会合で北を非難する声明を発したほか、日米韓を中心に首脳、外相級協議が集中的に行われた。対北制裁の追加や強化を含む「強い安保理決議が必要だ」(日韓首脳)との国際世論が急速に高まっている。
オバマ氏の決意表明を評価するとともに、この流れが緩まないように願う。北の暴走を止めるには日本も応分のリスクが求められよう。安倍晋三政権は米韓と緊密に連携し、中露も巻き込んで速やかに決議を成立させてほしい。
オバマ氏は成長や雇用創出などの内政課題に触れた後、北の挑発を「孤立を深めるだけだ」と非難し、イランに対しても「外交解決に応じなければ、核保有阻止に必要な措置をとる」と警告した。
年頭の施政方針を示す一般教書演説は内政中心となるのが通例だが、北の核やミサイルは米国への「直接的脅威」となり、北・イラン間では開発協力や連携も指摘される。「核なき世界」を掲げるオバマ氏が両国の行動を強く牽制(けんせい)したのは当然といえる。
ただ、対北制裁では中国の責任と役割が極めて重要であり、演説でこれに触れなかったのは踏み込み不足の印象を免れない。また、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の意義などを挙げながら、日米同盟や日本の参加に一切言及しなかったのは残念だ。
2期目の国防を担うヘーゲル次期国防長官は近く指名承認される見通しだ。ケリー国務長官とともに、オバマ氏には毅然(きぜん)たる対北外交を主導してもらいたい。
一方、北の核・ミサイル開発に必要な資源や財源を封じ込めるために、金融制裁とともに、船舶検査(臨検)や海上封鎖など実力を伴う行動が新たな安保理決議の柱に浮上する可能性がある。
臨検や海上封鎖となると、日本は集団的自衛権の行使を求められる局面も考えられる。
安倍首相は李明博・韓国大統領との電話会談で「北の行動を容認せず、強力な内容の決議を速やかに採択すべきだ」と訴え、両国の連携で一致した。日米韓それぞれが責任を果たし、実効性ある制裁強化を実現する必要がある。
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