◆習近平政権の厳格対応が問われる
北朝鮮の核兵器開発が一段と危険な段階に入った。安全保障環境の悪化を踏まえ、日本は米国などと連携し、対北朝鮮抑止力を強化すべきだ。
北朝鮮が12日、3回目の地下核実験を強行した。金正恩政権にとっては初めての核実験だ。
2006年、09年の過去2回に比べ、強力で「小型化、軽量化」した核爆弾による「高水準」の実験に成功したと喧伝している。核弾頭の開発を図ったのだろう。
昨年12月の「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイル発射による射程の大幅延伸の成功と合わせて、北朝鮮が核ミサイルの実用化に近づいたのは間違いない。
◆日本への深刻な脅威だ
安倍首相が、「我が国の安全に対する重大な脅威」として、北朝鮮の核実験強行を「断じて容認できない」と強く非難する声明を発表したのは当然である。
核ミサイルの配備で最も深刻な脅威にさらされるのは日本だ。約200基が配備ずみとされる中距離弾道ミサイル「ノドン」の射程に入っているからだ。
自衛隊と米軍の協力を基礎にミサイル防衛能力を向上させるとともに、核を持たぬ日本が抑止力とする米国の「核の傘」の信頼性を担保することが重要だ。
首相が、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)副議長らが訪朝すれば再入国を認めない、との日本独自の制裁強化を直ちに実施したことは評価できる。追加の措置も検討してもらいたい。
北朝鮮は、核兵器用のプルトニウムの生産は中断したが、新たにウラン濃縮活動を始めており、高濃縮ウラン型の核兵器の量産に入る恐れがある。これ以上の核・ミサイル開発を阻止するため、全力を挙げねばならない。
25日に就任する韓国の朴槿恵次期大統領にとっても、この核実験は大きな試練だ。日米同盟の強化は無論、日米韓で危機管理体制を構築することが不可欠である。
◆国連決議の強化を図れ
国連安全保障理事会は、制裁強化を新たに決議すべきだ。
安保理は1月22日、昨年12月にミサイル発射を強行した北朝鮮に対する制裁強化決議を採択し、核実験を強行すれば「重大な行動を取る」と警告していた。
北朝鮮が安保理決議を無視してミサイル発射と核実験を繰り返したのは、従来の制裁措置が実効性を欠いていたためだ。
この悪循環を断ち切るため、安保理は今度こそ包括的で実効性ある制裁を決定し、その実施を徹底すべきである。
核とミサイルの開発を巡り、北朝鮮はイラン、パキスタンと深い関係にある。イランとは昨秋、科学技術協力で合意した。国際社会は、モノやカネ、ヒトの移動を厳しく制限、監視して、開発に歯止めをかけねばならない。
北朝鮮と取引する金融機関を対象に含めることも視野に、包括的な金融制裁の実施を検討すべきだ。大量破壊兵器・関連物資など禁輸品の疑いがある貨物の検査の「義務化」も目指す必要がある。
北朝鮮は船舶検査を海上封鎖とみなし、「軍事的打撃で対応する」と恫喝した。警戒が怠れない。
安保理常任理事国・中国の役割は重要だ。
中国は、北朝鮮の貿易量の7割を占める。北朝鮮からの多くの船舶が貨物積み替えを行う港湾を持つ。エネルギーや食料の最大の援助国として生殺与奪権をも握っている。
中国は表向き、北朝鮮の核実験に「断固反対」を唱える。だが、朝鮮半島が不安定になることを恐れて制裁には及び腰だったことが北朝鮮の核開発を助長した。
中国共産党機関紙「人民日報」系の環球時報は、北朝鮮が核実験をすれば援助削減を「ためらうな」と主張していた。習近平政権は、北朝鮮に厳しく対処し、核開発断念へ強い圧力をかけるべきだ。
◆遠のく「北」の経済再建
金第1書記の掲げる「人民生活の向上」は一向に果たされないように見える。核とミサイルの成果を誇示する以外、軍と民心をひきつける術がないのではないか。
北朝鮮の核ミサイルの標的になりかねないという脅威認識は、米国でも広がりつつある。金政権には、それをテコに米国との対話の道を開き、核兵器を保有したまま、経済制裁解除と現体制の安全の保障を得る狙いがあろう。
だが、安易に交渉に臨むのは禁物だ。北朝鮮が核放棄へ具体的行動を取らない限り、国際社会は制裁を解除してはならない。
北朝鮮は、自らの行動が結果的には体制の脆弱化を招くことを自覚すべきである。
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