電力市場改革 安定供給の確保が先決だ

朝日新聞 2013年02月14日

選挙制度改革 第三者機関にゆだねよ

自民党の腰の重さは目にあまる。昨年の衆院解散にあたって民主、公明両党と合意した、衆院の選挙制度改革をめぐる消極姿勢のことである。

「定数削減については、選挙制度の抜本的な見直しについて検討し、通常国会終了までに結論を得た上で法改正を行う」

解散のまさにその日、自公民3党が交わした合意である。

国民に消費増税を求める前提として、国会議員みずからも「身を切る」覚悟を示すとした定数削減。民意を的確に反映する選挙制度への改革。

このふたつは、公党間の約束であると同時に、国民への公約でもあったはずだ。

それなのに、議論を引っ張るべき政権党が逃げ腰とはあきれるほかはない。

党幹部からは「限られた時間でできるかと言えば極めて困難」(石破幹事長)といった消極論が相次いでいる。

そんな言い訳は通らない。

3党合意からすでに3カ月。時間がない、のではない。時間はあるのにやりたくない。そういうことではないのか。

一因は、各党の主張が食い違うことだ。大政党は小選挙区を重視し、中小政党は比例代表を大事にする。自分が有利な制度は変えたくない。そんな議員心理が歩み寄りを妨げている。

09年総選挙を違憲状態とした最高裁判決からまもなく2年。

この間、与野党が実現したのは、解散まぎわに成立した「0増5減」法だけだ。かろうじて一票の格差を2倍未満におさえるための、最低限の緊急避難的な手直しにすぎない。

このまま政党間の話し合いに任せても、時間を空費するばかりだ。今国会中はおろか、いつまでたっても結論が出るとは思えない。

だとすれば、国会議員以外の第三者に議論をゆだねるほかにない。

安倍首相に求める。首相の諮問機関である選挙制度審議会をただちに立ち上げるべきだ。

参院の一票の格差もやはり最高裁に違憲状態と指摘されている。見方を変えれば、衆参の役割分担をふまえ、両院の選挙制度のあり方を同時に見直すチャンスである。

一方、定数削減はむしろ慎重に扱うべきだ。いたずらに議員を減らすだけでは、民意をくむ力を弱めかねないからだ。

「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」する――。

憲法前文の精神が軽んじられる異常事態を、これ以上、放置してはならない。

読売新聞 2013年02月11日

電力制度改革 安定供給の実現を大前提に

電力制度改革は、安価で安定した電力供給の実現に資するものでなければならない。

政府は効果と副作用にしっかり目配りし、慎重に改革を進めるべきだ。

経済産業省の有識者会議が、電力システムの改革案をまとめた。3年後の2016年に電力の小売りを全面自由化し、5~7年後には、電力会社の発電部門と送配電部門を分社化する「発送電分離」を実現させるという。

東日本大震災後の電力不足や、東京電力による料金値上げをきっかけに、電力会社を自由に選べない「地域独占」に対する利用者の不満は高まっている。

新規事業者の参入や電力会社間の競争を促進し、利用者の選択肢を広げる狙いは理解できる。

自由化による競争で電気料金が下がるのでないかと期待する人は多いだろう。しかし、性急な制度改革には問題が多い。

企業向けなどの大口契約は、電力の小売りや料金がすでに自由化されている。にもかかわらず、新規事業者の販売シェア(占有率)は3%台にとどまる。大手電力会社による独占のカベは厚い。

こうした状況で全面自由化すると、「規制なき独占」が利用者の利益を損ないかねず、むしろ料金が上がる恐れがある。新規参入しやすい環境の整備について、さらなる工夫が求められる。

全国50基の原子力発電所のうち稼働中は2基という電力不足の現状も踏まえる必要がある。安全を確認できた原発の再稼働などで、電力不足の解消を急ぎたい。

一方、発送電を分離すると、現在の一貫供給体制に比べ、電力需要の変動に応じて発電量をきめ細かく調整することが難しくなる。競争が激化すればコスト削減が優先され、必要な設備投資が抑制される可能性も出てくる。

海外では、発電と送電の連携不足や投資抑制が原因で、大規模停電を起こした例がある。電力制度改革によって肝心の電力供給が不安定になったのでは、まさに本末転倒と言えよう。

発電所や送電網などの電力インフラ(基盤)を計画的に整備し、維持・管理する体制作りが欠かせまい。政府は弊害の防止に向け、綿密に制度設計すべきである。

改革を具体化する段階で、現時点では顕在化していない新たな課題も出てくるはずだ。

有識者会議が示した改革の実施時期はあくまで現時点の目安ととらえ、状況の変化に応じて工程を柔軟に見直すことが大切だ。

産経新聞 2013年02月10日

電力市場改革 安定供給の確保が先決だ

経済産業省の専門委員会が電力市場改革報告書案をまとめた。家庭でも電力会社を選べる全面自由化に加え、電力会社の発電部門と送電部門を分社化する「発送電分離」などを盛り込んだ。

電力会社による地域独占を撤廃し、競争の促進で電気料金の引き下げを目指す。日本経済の活性化に向けて「国民に開かれた電力システムを実現する」という。

規制緩和を通じて市場の競争を促す狙いは評価したい。だが、最大の問題は、電力の安定供給を確保していく道筋が示されていないことだ。まずは原発再稼働を通じて当面の電力不足を速やかに解消しなければ、改革も絵に描いた餅に終わってしまう。

発送電分離で、電力の安定供給に支障が生じる恐れもある。電力は国の基盤を支えるインフラだけに慎重な制度設計を求めたい。

報告書案は「電力市場改革を3段階で進める」とした。平成27年にも広域で電力需給を調整する中立機関を設立し、28年には電力小売りを全面的に自由化する。その上で30~32年に電力会社の発送電部門を分離するという。

電力会社が保有する送配電網を広く開放することで、電力会社同士や新規参入企業との競争を促進し、料金引き下げや電源の多様化を図るのが狙いだ。電力会社に事実上の地域独占を認めてきた電力市場の大きな転換といえる。

経産省は改革の実施時期を盛り込んだ電気事業法改正案を今国会に提出する方向だ。茂木敏充経産相も「国民の理解を得るために改革が必要だ」と意欲を示した。

だが、福島原発事故以降、原発の大半が停止され、電力供給不足という根本的問題が解決されていない現実を忘れてはなるまい。

電力が足りない中で自由化をしても本当の競争につながらない。逆に料金上昇を招く恐れもある。政府は何よりも安価で安定した電力供給確立を優先すべきだ。

とくに発送電分離の影響は大きい。電力会社は発送電の一体運用できめ細かな電力供給に対応してきたからだ。落雷や台風による停電の早期復旧や電力危機時の緊急融通に弊害は起きないか。米国では自由化の後、送電網への投資削減で大規模停電が何度も起きた。そうした事例の検証も必要だ。

電力の安定供給なしには、健全な競争もあり得ないことを政府は銘記してもらいたい。

朝日新聞 2013年02月10日

発送電分離 後戻りは許されない

経済産業省の有識者委員会が電力システム改革の報告書をまとめた。与党内での議論を経て、経産省は必要な改正法案を今国会に提出する。

地域独占を撤廃し、家庭向け電力の販売自由化や電力市場の活性化を通じて、競争と新規参入を促す手立てが網羅されている。実施されれば抜本的な改革となる。

なかでも、電力会社の発電部門と送配電部門を別会社にする「法的分離」を明記した意義は大きい。

多様な電源を生かした効率的な電力ネットワークをつくるには、送電網の広域化・中立化が不可欠だ。長年、課題とされながら電力会社の抵抗でびくともしなかった分野である。

「変革」の必要性をつきつけたのは、原発事故だ。電力会社が「安定供給のため」と主張してきた発送電一体・地域独占の仕組みが、実はひどく脆弱(ぜいじゃく)だったことが露呈した。

後戻りは許されない。

改革メニューには、送電網を束ね、必要な整備計画や需給を調整する広域連携機関と、これらを監視し、利用者側の視点に立って必要な是正を求める新たな規制機関の創設も盛り込まれている。

中身が多岐にわたるため、改革は段階的に進められる。発送電分離の実施は、最終段階となる2018年以降になる見通しという。

たしかに制度設計には一定の時間がかかるし、混乱を避けるためには順序を整理する必要もあろう。

ただ、欧米ではすでに定着している制度も少なくない。日本に適した形へと手直しする必要はあるが、できるだけ前倒しで実施すべきだ。

電力会社は今なお、技術的な難しさなどを理由に、発送電分離に強く抵抗している。

工程表を明示するのはもちろん、後から骨抜きにされたり先送りされたりすることのないよう、法律上の手当てをしっかりしておくことが肝要だ。

技術面でも、電力会社の言いなりにならないよう、中立的な検証・推進態勢をかためたい。必要なら、すでに分離が進んでいる海外から専門家を招いてもいいだろう。

報告書は今後、与党審査を経る。税制改革で道路特定財源の復活を狙うなど、自民党には依然として利益誘導・業界優先の古い体質がくすぶる。往年の電力族が巻き返す機会はまだまだある。

新しい経済のための新しい自民党を見せてもらいたい。

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