春闘スタート 景気回復へ問われる労使協調

読売新聞 2013年01月31日

春闘スタート 景気回復へ問われる労使協調

安倍政権が日本経済の再生とデフレ脱却を目指す中、今年の春闘がスタートした。賃上げを巡る労使の攻防は一段と白熱するだろう。

連合は「個人消費の拡大には賃上げが必要だ。それがデフレ脱却につながる」として、定期昇給とは別に、給与総額の1%引き上げを要求した。

賃金水準は10年以上も低落が続いている。これが消費意欲を冷え込ませ、景気低迷とデフレをもたらす要因と主張している。

これに対し、経団連は「雇用確保が最優先。ベースアップを実施する余地はない」と反論する。労使の主張の隔たりは大きい。

今後、注目されるのは、デフレ脱却を最重視する安倍首相の方針が交渉にどう反映されるかだ。

首相は緊急経済対策を発表した今月の記者会見で「企業の収益を向上させ、雇用や賃金の拡大につなげたい。企業の経営者にも協力をいただきたい」と述べた。

賃上げした企業には、法人税を軽減する措置も打ち出した。

政府と日銀は2%のインフレ目標を決めただけに、賃金が上がらずに物価だけが上昇する「悪い物価上昇」を避けたいと首相は考えているのだろう。

首相の“援軍”は労働側には追い風だが、賃上げが実現するかどうかは不透明である。

何よりも重要なのは、企業の生産性を向上させ、賃上げできるよう経営体力を強化することだ。

長引く不況や海外メーカーとの競争など、産業界には逆風が吹く。依然として余剰人員を抱える企業は少なくない。

政権交代後、超円高の是正が進み、株価が上昇するなど明るい材料も見え始めた。ただ、同じ業種でも企業によって業績は異なる。体力のある企業から賃上げを実施するのも一つの方策だろう。

65歳までの再雇用も、今年の春闘の大きなテーマだ。

4月から希望者全員の再雇用が企業に義務付けられる。経団連は「人件費の増大が企業の大きな負担になる」との見方を示している。労使双方に望ましい制度とするため、議論を深めてもらいたい。

働き手の35%を占める非正規労働者の待遇改善も重要課題だ。

正社員に比べて低賃金で雇用が不安定な非正規労働者の増大は、消費低迷の要因でもある。

連合は非正規労働者について、正社員への転換制度の導入や昇給ルールの明確化を求めている。正社員との格差是正は、労働者全体の消費拡大にもつながろう。

産経新聞 2013年02月01日

春闘 デフレ脱却に労使連携を

春闘が事実上、開幕した。労働組合側が定期昇給を含めた賃上げを求め、経営側は雇用の維持を優先して賃上げに厳しい姿勢で臨む構図は今年も変わらない。

業績格差が広がる中で、業界横並びでの賃上げが見込めないのは当然だ。しかし、経済再生を掲げる安倍晋三政権は、デフレからの脱却を最重要課題として位置付けている。そのためにも、個人消費を活性化させなければならない。

業績が堅調で、賃上げできる余力のある企業まで消極的な姿勢にとどまるとすれば見逃せない。デフレ脱却に向け、労使で何ができるかを協議する「実のある交渉」を進めてほしい。

連合は、毎年賃金が上がる定期昇給の維持や手当の増加などで「給与総額の1%アップ」を要求している。これに対し、経団連は雇用確保のためには各社の業績に応じ、定期昇給の実施延期や凍結などもあり得るとの立場だ。双方の隔たりは大きい。

安倍政権が日銀と2%の物価上昇率目標を設定し、円高の是正や株価上昇が続くなど景気回復期待が高まっている。連合の古賀伸明会長が「デフレ脱却には賃金の引き上げが欠かせない」と強調するのも、こうした機運をとらえて経営側から賃上げ回答を引き出したいとの思惑からだろう。

安倍首相も経営者に対し、賃上げで協力するよう期待している。来年度の税制改正大綱には、賃金や雇用を一定程度増やした企業に対する減税措置なども盛り込まれた。先行きの不透明感は拭えないが、経営者は従業員の士気を高めるためにもボーナスを含め適切な賃金配分に努めてもらいたい。

一方で、企業の競争力を高めるには年功型賃金や人事の見直しに取り組む必要がある。女性や高齢者の活用も欠かせない。多様な働き方を導入することで生産性を高め、企業業績を向上させてほしい。これには、組合側の積極的な協力が不可欠だ。

今年4月には、企業に希望者全員を65歳まで雇用することを義務づけた「改正高年齢者雇用安定法」が施行される。経団連は人件費の上昇を理由に中高年の賃金や新卒採用の抑制が必要としている。不毛な世代間対立を生まないためにも、労使は今回の春闘を独自の成長戦略を打ち出す契機とすべきである。

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