予算の無駄を洗い出す行政刷新会議の事業仕分けが、9日間の作業日程を終えた。
対象とした449事業の多くに廃止や縮減などの判定を下した。
独立行政法人や公益法人が抱える基金に国庫返納を求めた分を加えると、ひねり出した成果は1・6兆円を超えた。
目標の3兆円には届かなかったが、来年度予算に使える貴重な財源の一部にはなろう。
しかし、インターネットで国の予算編成作業の一端を同時中継するという初の試みは、数多くの課題を残した。
国会議員や民間有識者からなる仕分け人が、公開を意識してパフォーマンス的な言動を繰り返し、各府省の説明担当者を一方的にやり込める場面が相次いだのは見苦しかった。
民間の仕分け人をどういう基準で選んだのか、それも不明なままだった。
鳩山首相は、来年度以降も事業仕分けを続ける意向を表明している。そうであるなら、説明者側に十分な反論の機会を与え、仕分け人の選任基準を明確化するなど、運営方針の見直しが必要だ。
仕分けの対象とされたテーマに疑問を呈する声も多かった。わずか1時間の議論では手に余る案件が幾つも含まれていたからだ。
在日米軍に対する「思いやり予算」や対外援助、地方交付税、科学技術振興関連などだ。
いずれも国の在り方、将来にかかわる問題で、簡単に答えが出るような話ではない。
中でも、波紋を呼んだのは次世代スーパーコンピューターの開発予算を巡って、「事実上の凍結」という判定が出された件だ。
ノーベル賞受賞者や経済界からは、「短期的な費用対効果ばかりをみる議論は、科学技術にはなじまない」「世界の先端技術開発競争で、日本が負けてしまう」といった強い批判が噴き出した。
その通りだろう。長期的かつ国際的視点で、どんな分野に予算を重点配分していくか、という戦略的思考が、行政刷新会議に欠けていたのではないか。
子供に読書を勧める事業を廃止としたのも遺憾である。
誤った判定については今後、見直していかねばならない。
そもそも、事業仕分けでの判定は、最終的なものではない。判断材料の一つにはなるが、縛られてはなるまい。今後の予算編成の中で、政治家が責任を持って扱いを決めるべきだ。
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