成長戦略 本格回復の展望が見えない

毎日新聞 2009年08月26日

’09衆院選 成長戦略 縦割りのリセットを

経済のパイを拡大するための方策として、どのような政策をとるのかが問われている。民主党には成長戦略がないと自民党は強調し、逆に民主党は、輸出産業にあまりに依存し過ぎたとして自民党の成長戦略を批判している。

ただし、どのような政権になったとしても、技術的な成果をもとに産業の競争力を強化していくという方向は変わらないはずだ。

地球環境問題や今回の経済危機への対応策として、世界でさまざまなプロジェクトが計画されている。その中には高速鉄道や、スマートグリッドと呼ばれている送電線網の整備も含まれている。また、水不足に対応するための水ビジネスも注目されている。

高速鉄道で日本の新幹線は、開業以来40年以上にわたって乗客の死亡事故が起きていないという点で安全性に定評がある。

また、情報技術(IT)を積極的に活用した電力線網の高度活用でも、停電範囲を極小化するための配電自動化など、スマートグリッドの要素を取り入れた送電の仕組みが日本ではすでに運用されている。停電時間の短さや周波数、電圧の安定といった電力の質で日本は群を抜いている。

水ビジネスについても、ろ過の中核技術となる浸透膜で日本メーカーは優位に立っている。

問題は、優れた技術が日本には数多くあるにもかかわらず、要素技術の段階にとどまっていることだ。それを組み合わせてトータルなシステムとして世界に広げていくようにしないと、部品の供給国の状態のままで、得られる経済的成果も乏しい状況が続くだろう。

いい例はIT分野だ。光回線網の整備が進み、半導体製造装置などIT関連の製造業で優位に立ちながらも、検索などサービス分野では海外勢に圧倒されている。ネットワークの活用を基本とした新しいコンピューターの使い方として注目されているクラウドコンピューティングでも日本は出遅れている。

ITのサービス面で日本が出遅れてしまったのは、縦割り行政にも原因があることは否定できない。電子機器の製造は経済産業省、通信と放送は総務省、そして著作権関係は文化庁と所管が分かれ、天下りも含めてそれぞれが業界団体と結びついている。

利害を調整するのが大変で、最近まで検索用のデータベースを国内に設置することすらできなかった。

業界と結びついた縦割りの仕組みをリセットすることも、日本の成長戦略にとって大きな課題だ。

読売新聞 2009年08月24日

成長戦略 本格回復の展望が見えない

日本経済は最悪期を脱したが、本格回復への道筋は見えない。

こうした中、衆院選では、着実な景気回復と安定成長に向けた各党の戦略が注目されている。

成熟した日本経済には、もはや高度成長は望めまい。だが、多くの国民がそこそこ満足できる生活水準を維持し、将来に大きな不安を感じず暮らせる社会を支えるには、経済成長が欠かせない。

まず、当面の景気を着実に回復させる必要がある。

次に、輸出依存が強い経済構造を改め、内需と外需のバランスをとらねばならない。人口減少や高齢化による内需縮小、新興国の台頭による国際競争の激化など、経済の構造変化への対応も求められる。

自民党は、「2010年度後半には年率2%の経済成長を実現する」などと、成長率の目標と時期を公約した。今後3年で40~60兆円の需要を生み出し、約200万人の雇用を確保するという。

具体的な目標達成を約束したことは、評価できる。景気対策を続けながら、環境をはじめ成長分野の研究支援などで民間活力を高める手法も妥当だろう。

だが、具体策は迫力不足だ。太陽光発電の拡大やエコポイントによる省エネ家電の普及など、既にある政策が並び、目標が実現しそうな手応えが感じられない。

一方の民主党は、成長率などで具体的な目標を掲げなかった。経済成長の状況は、財政再建や社会保障改革など主要課題の取り組みにも影響する。政権を担うというのなら、明示するべきだ。

民主党の成長戦略は、子ども手当や高校無償化、高速道路の無料化などで家計が使えるお金を増やす「直接給付型」の支援中心だ。消費を拡大し、日本経済を内需主導に転換するとしている。

給付を受けた世帯は消費を増やすとしても、他方で公共事業が削減されれば内需を冷やす。予算の組み替えにはマイナス面もある。そもそも、家計への予算ばらまきで消費を増やし続けられまい。

安定した消費拡大には、社会保障制度の信頼性を高め、家計が将来不安で抱えた「過剰貯蓄」が、消費に回るようにすればいい。

民主党が公約する「消費税率4年凍結」では、社会保障の強化に必要な安定財源の確保が見通せない。不安が一段と強まり、消費拡大には逆効果となろう。

将来を見据えた、骨太の成長戦略を論議してもらいたい。

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