現下の最重要課題である日本経済の再生へ、与野党は建設的な論戦を展開してもらいたい。
安倍首相の所信表明演説に対する各党代表質問が始まり、首相と民主党の海江田代表が初めて対決した。
海江田氏は、政府と日銀による2%の物価目標について、実質賃金の低下や長期金利の上昇など、「国民生活への副作用も無視できない」と懸念を示した。
政府の景気対策についても「公共事業に偏重した旧来型経済政策は効果に乏しい」と批判した。
首相は、金融緩和の副作用について「機動的なマクロ経済運営などで対応する」と反論した。景気対策では、財政規律にも配慮するとして、「財政健全化と経済再生の双方を実現する」と語った。
海江田氏の指摘には一理ある。だが、金融・財政政策と成長戦略の「3本の矢」を連動させる安倍政権の方針が好感され、円安・株高が続いているのは事実だ。
長年の課題であるデフレ脱却を実現するには、従来以上に強力な手段が求められている。政府と日銀がより緊密に連携し、景気にテコ入れすることが重要だ。
エネルギー政策では、海江田氏が「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指す民主党政権の戦略を維持するかどうか質問したのに対し、首相は見直すと明言した。
電力の安定供給に必要な代替エネルギー確保の見通しがない中、見直しは当然だ。政府は、原発立地自治体や関係国と十分協議し、安全な原発は活用する方向で新戦略を策定する必要がある。
海江田氏は、民主党の役割について「自公政権のチェック機能を果たす」一方で、「政権運営の経験を持つ野党として『決める政治』を前進させる」とも語った。
妥当な認識だ。衆参ねじれ国会の下、参院第1党の民主党は、政治を動かす責任の一翼を担っていることを忘れてはなるまい。
以前の野党・民主党のように、国会同意人事などで政府を揺さぶることを優先するような「抵抗野党」の国会戦術は国民に評価されず、党の再生にも逆行しよう。
日本維新の会の平沼赳夫国会議員団代表は、政府・与党に「是々非々」で臨む考えを示した。経済政策などでは「首相の姿勢に共感を覚える」とエールも送った。
予算案や関連法案の早期成立には野党の協力が欠かせない。
安倍首相は「与野党の叡智の結集」を呼びかけた以上、野党の主張にも耳を傾け、適切に施策に反映させる柔軟性が求められる。
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