◆中長期の財政健全化を怠るな◆
積極財政で景気テコ入れを狙った予算である。安倍政権が最重視する経済再生とデフレ脱却への実行力が問われる。
政府が2013年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は92・6兆円で、7年ぶりの減額予算となった。
歳入では、税収が4年ぶりに新規国債発行額を上回った。歳出も各省庁の政策的経費を70・4兆円に抑えたのがポイントである。
麻生副総理・財務相は記者会見で「財政政策の枠組みを頭に置いて編成した。引き締まった予算になった」と述べた。
◆消費増税へ景気回復を◆
ただし、4・4兆円に大幅増額した別枠の復興予算と合わせると、過去最大規模である。
安倍政権は、12年度補正予算案と13年度予算案を「15か月予算」と位置付け、切れ目のない財政出動を目指している。
来年4月の消費税率引き上げを今秋に最終判断する上で、確実に景気回復を成し遂げたい考えだ。超大型予算の編成で、環境整備を図ることはやむを得ない。
だが、来年度の国債依存度は46・3%となり、国の歳入のほぼ半分が借金だ。国と地方の長期債務残高も来年度末に977兆円に達する。国内総生産(GDP)の2倍に相当し、財政危機のギリシャをしのぐ債務大国だ。
先進国で最悪の財政状況を深刻に受け止めねばならない。
問題なのは、民主党政権が編成した12年度当初予算より規模を抑え込むため、様々な手法でやり繰りしたことだ。
歳出規模の圧縮は、1兆円近い経済危機対応の予備費の全廃や、各省庁が今年度補正予算案に支出を前倒しした影響が大きい。
政府は来年度経済見通しについて、民間予想よりかなり高い実質2・5%成長とし、税収を多めに見込んだが、安定成長の実現は不透明である。
基礎年金の国庫負担分を賄う国債を別扱いにしたのも、国債発行額を抑える弥縫策ではないか。
歳出面の切り込みも不十分だ。公共事業費は前年度比で約7000億円多い5・3兆円を計上した。老朽化した道路や橋などの改修は必要としても、「国土強靱化」の名の下に、非効率な事業を増やすことがあってはならない。
◆公共事業は精査が必要◆
景気への一時的なカンフル剤である公共事業に頼るだけでなく、政府は企業の競争力を高める成長戦略を強化し、経済を成長軌道に乗せることが重要である。
民主党政権が削減した土地改良事業費を積み増し、農家の戸別所得補償制度も名称を変え、前年度並みの予算を計上した。これではバラマキに他ならない。一層の市場開放に備えた農業の体質強化につながるのかは疑問だ。
その他の支出項目でも、財政の硬直化が一段と鮮明になった。
自然増などで社会保障費は約29兆円に膨らみ、生活保護費を小幅削減する程度にとどまった。年金や医療費の給付抑制など、さらなる圧縮が必要である。
安全保障分野では、首相の意向を反映した予算が目立った。
防衛費を11年ぶりに増額した。沖縄・尖閣諸島をはじめ、日本の領土と領海を守る意志を明確にしたことを評価したい。
南西防衛を重視し、警戒監視活動や離島防衛の対処能力を強化するもので、妥当な内容だ。
◆評価できる防衛費増◆
政府は年内に新たな防衛大綱を策定する。来年度予算限りとせず、中長期的に自衛隊の体制を改革・拡充することが必要だ。
海上保安庁予算も6年ぶりに増えた。このうち、巡視船艇と航空機の整備費などは前年度比4割増となり、人員も増やす。
尖閣諸島を巡り、中国の挑発行為が続いている。海保の巡視船艇はこれまで「スクラップ・アンド・ビルド」が原則だったが、増加に舵を切ったことは適切だ。
今後の重要課題は、中長期的な財政再建の道筋を早急に付けることにある。財政規律が緩んだままでは、日本国債に対する国際的な信認を失いかねない。
地方公務員の給与引き下げを念頭に、地方自治体に配分する地方交付税を6年ぶりに削減したのは一歩前進と言える。
安倍首相は、民主党政権が掲げた「20年度に基礎的な財政収支を黒字化する」との政府目標を踏襲したが、このハードルは高い。
消費増税を柱とする税制改革で財源確保を図るとともに、歳出合理化が不可欠である。成長と財政規律の両立という重い課題を克服しなければならない。
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