山口・習近平会談 対立緩和につなげたい

朝日新聞 2013年01月26日

習氏との会談 これを雪解けの一歩に

中国を訪問していた公明党の山口那津男代表がきのう、習近平総書記と会談した。

日本政府による尖閣諸島の国有化で関係が悪化して以来、中国共産党トップが日本の政党党首と会うのは初めてだ。小さな一歩にすぎないが、パイプがつながったことを歓迎する。

山口氏は安倍首相の親書を手渡し、日中の首脳会談を呼びかけた。習氏も「ハイレベルの交流を真剣に検討したい」と応じた。習氏はそのための環境整備も求めており、にわかに実現するかどうかはわからない。

とはいえ、習氏みずから意欲を示したのは前向きのサインと受けとめたい。ぜひ実現につなげてほしい。

もちろん、首脳同士が会ったからといって、尖閣問題で溝を埋めることは望めまい。大切なのは、この問題を経済や文化など両国間の様々な交流に波及させないことだ。

この点でも、習氏は「中日関係は特殊な時期に入っているが、国交正常化の歴史をさらに発展させなければならない」と語った。ならば、尖閣を理由に関係を停滞させないよう、言葉通りの対応を求める。

山口氏は出発前、「将来の世代に解決を委ねることが、当面の不測の事態を避ける方法だ」と発言。中国側の主張に沿った、領有権の「棚上げ」論ではないかとの疑念を招いた。

尖閣が日本の領土であることは間違いない。ただ、「領土問題は存在しない」という、日本政府の棒をのんだような対応ばかりでは、話し合いの糸口さえつかめなかったことも事実だ。

両国のナショナリズムが沸き立つのを避けつつ、互いに知恵を出し合い、粘り強い対話を続けるしかあるまい。

尖閣周辺には、連日のように中国の船舶や航空機が姿を見せている。私たちはこうした挑発行為をやめるよう再三求めてきたが、やむ気配はない。

こんな状態が続けば、いつ偶発的な武力衝突が起きても不思議ではない。

山口氏はやはり出発前、「この島に両国の軍用機が近づきあうことは不測の事態を招きかねない。お互い空に入らないとの合意に至ることも重要だ」と提起した。両政府間で衝突回避の具体策を早急に協議すべきだ。

今回の訪中は、議員外交の意義を再認識させた。

関係改善に向けて、あらゆるパイプを総動員する。そこでつかんだきっかけを逃さず、政府間の話し合いにつなげる。

その積み重ねの中から、雪解けを図るしかあるまい。

毎日新聞 2013年01月26日

山口・習近平会談 対立緩和につなげたい

公明党の山口那津男代表が北京で習近平総書記と会談した。習氏は日中関係改善のためハイレベルの対話が重要だとして、安倍晋三首相との首脳会談に意欲を示した。

昨年11月の総書記就任後、習氏が日本の与党幹部と会うのは山口氏が初めてだ。安倍政権にとっても発足後初の与党党首訪中である。山口氏は習氏に安倍首相からの親書を手渡した。事実上の首相特使といっていい。首脳会談の実現は安倍氏の希望とも合致する。トップ同士が早期に対話に乗り出し、尖閣諸島をめぐる対立の緩和につなげたい。

尖閣諸島については、習総書記の前に山口氏と会った王家瑞(おうかずい)中央対外連絡部長が「前の世代が棚上げし、中日友好が保たれた。後々の世代に解決を託すこともある」と問題の棚上げに言及した。棚上げは72年の日中国交正常化や78年の日中平和友好条約交渉の際、周恩来首相やトウ小平氏がとった手法だ。日本政府は明確な棚上げ合意はないとしているが、当時の交渉にかかわった外務省OBは棚上げで首脳間の「暗黙の了解」があったと証言している。

今回、中国側が再び棚上げを持ち出した真意ははっきりしない。そもそも92年の領海法制定で尖閣諸島を一方的に中国領とするなど、「棚上げ」了解を先に崩したのは中国の方である。そうした姿勢に日本が疑念を持つのは当然だ。再び棚上げを言うのなら、中国の対応が信頼できるものでなければなるまい。

ただし、「尖閣は固有の領土」という日本の立場を維持する形であれば、改めて棚上げが可能かどうか、検討してみてもいいのではないか。中国は尖閣周辺への船舶や航空機の接近をやめる。日本も公務員の常駐や船だまりの設置といった措置をとらない。さらに知恵を出し合えば、ことを荒立てず局面を打開するきっかけになるかもしれない。

このところ、アジアをめぐる外交が活発に動いている。クリントン米国務長官は尖閣について「日本の施政権を侵すあらゆる一方的な行動に反対する」と踏み込んだ発言で日本の立場を支持した。安倍氏は東南アジア諸国連合(ASEAN)訪問で、自由で安全な海洋のルール作りを外交の柱に据える考えを強調した。北朝鮮の事実上の長距離弾道ミサイル発射に対する国連安保理決議は、中国も含む全会一致で採択された。

山口氏への中国側の対応も、こうした国際環境と無関係ではないだろう。いつまでも対立を続けることは日中両国とも望まないはずだ。尖閣で領土問題は存在しなくても、外交問題は存在する。機会を逃さず改善の糸口をつかむことは2人の首脳にしかできない決断である。

読売新聞 2013年01月26日

習・山口会談 首脳対話に必要な中国の自制

途絶えている日中首脳会談が再開できる環境を整えるには、日中双方の外交努力が必要だ。

公明党の山口代表が訪中し、中国共産党の習近平総書記と会談した。習総書記が昨年秋の就任後、日本の政治家と会うのは初めてだ。

山口氏は「難局の打開には政治家同士の対話が大事だ」として、安倍首相の親書を手渡した。

習総書記は「ハイレベル対話は重要だ。真剣に検討したい」と明言した。首脳会談の環境を整える必要があるとの認識も示した。

中国は尖閣諸島の領有権問題での日本の譲歩を求めているのだろうが、それは認められない。むしろ中国にこそ自制を求めたい。

昨年9月に日本が尖閣諸島を国有化した後、中国政府による日本の領海侵入は恒常化し、領空への侵犯も起きている。

不測の事態を防ぎ、日中関係を改善するには、まず中国が威圧的な行動を控えるべきだ。

公明党は、1972年の日中国交正常化の際、議員外交で大きな役割を果たした。今回も、溝が広がった政府間の橋渡しをしようとする意図は理解できる。

尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題は存在しない。日本政府の立場を堅持することが肝要なのに、気がかりな点がある。

山口氏が訪中前、香港のテレビ局に対し「将来の知恵に任せることは一つの賢明な判断だ」と述べ、「棚上げ論」に言及したことだ。日中双方が自衛隊機や軍用機の尖閣諸島上空の飛行を自制することも提案した。

山口氏は習氏らとの会談では触れなかったが、看過できない発言だ。棚上げ論は、中国の長年の主張である。ところが、中国は1992年に尖閣諸島領有を明記した領海法を制定するなど一方的に現状を変更しようとしている。

安倍首相が「自衛隊機が入る、入らないは、私たちが決める」と山口氏の発言に不快感を示したのは当然である。

村山元首相も、近く中国を訪れる。村山氏は、過去の侵略などへの「深い反省」を表明した村山首相談話をまとめた。村山氏から中国寄りの発言を引き出したい中国の意図が見え隠れする。

先に訪中した鳩山元首相は、尖閣諸島を「係争地だ」と述べた。領有権問題の存在を認めたことなどから、中国の主要紙が大きく取り上げた。中国に利用されていることが分からないのだろうか。

国益を忘れた言動は百害あって一利なしである。

産経新聞 2013年01月27日

習・山口会談 恫喝の下では対話できぬ

中国共産党の習近平総書記が、訪中した公明党の山口那津男代表との会談で尖閣諸島をめぐる日中の対立に言及し、「対話と協議による解決が重要だ」などと語った。

山口氏が安倍晋三首相の親書を手渡し、途絶えている日中首脳会談を提案すると、習氏は「ハイレベルの対話を真剣に検討したい」と応じた。

関係改善の「意欲の表れ」(山口氏)といえなくはないが、習氏が「歴史の直視」との表現で歴史認識への「慎重な対応」を安倍政権に求め、首脳会談の実現に「環境整備が重要だ」と条件をつけたことは順序が違う。

習政権が真摯(しんし)な対話と首脳会談を望んでいるなら、尖閣を海と空から威嚇する恫喝(どうかつ)をただちにやめるべきだろう。そうでなければ、「日中間に領土問題は存在しない」とする安倍政権は一方的に譲歩を迫られ、国益を失うことになりかねない。

今回、習氏が強硬路線の転換をにじませたのは、クリントン米国務長官が「日本の施政権を害そうとする、いかなる一方的行為にも反対する」と警告したことが影響している。

それは日米同盟を強化することが、日本にとって最優先課題であることを意味している。

公明党はかつて日中国交正常化に向けた環境整備に尽力するなど、中国共産党とのパイプ役を務めてきた。その実績をテコに、山口氏は政権与党の党首として日中関係の改善で成果を挙げたかったのだろう。

しかし、訪中前に尖閣問題で中国側が唱える「棚上げ論」に同調する発言をした山口氏は習氏との会談前日、王家瑞中央対外連絡部長からも「棚上げ論」を持ち出された。宣伝戦に利用された印象がぬぐえない。

中国側は今月末、村山富市元首相らを招き、要人との会談を予定している。親中派とされる政治家と接触することによって日本の国内世論の懐柔を狙い、安倍政権を揺さぶる構えだろう。

山口氏の訪中の間も、中国公船は尖閣周辺の接続水域への出入りを続けた。領海侵犯さえ常態化している。領空侵犯も起き、中国機に対する航空自衛隊の緊急発進は昨年4~12月で160回と過去最多となっている。

話し合いの環境整備をすべきは、第一に中国側である。

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