その場しのぎの対応では、日本経済は活性化しない。税制の抜本的な改革が急務である。
自民、公明両党が2013年度の与党税制改正大綱を決定した。
14年4月に予定される消費税率の8%への引き上げを控え、安倍政権の姿勢が問われていた。
焦点となった食料品などの消費税率を抑える軽減税率は、消費税が8%から10%に上がる15年10月導入を目指すことで合意した。
軽減税率導入に伴う煩雑な手続きに不満を抱く中小企業などに配慮したと言える。
だが、消費増税への国民の理解を得るには、税率を8%にする時から導入する方が望ましい。実施時期の先送りは問題である。
自公両党は、専門委員会で税率や対象品目などを協議し、今年末に決める14年度税制改正で結論を出すという。速やかに検討を始め、10%段階での導入を確実にしなければならない。
その際、軽減する消費税率は5%とし、対象には食料品のほか、民主主義を支える公共財である新聞・雑誌も含めるべきだ。
最後まで調整が難航した自動車取得税と自動車重量税の扱いも、妥協の末に決着した。
取得税を消費税8%時に引き下げ、10%時に廃止する一方、重量税はエコカー減税を恒久化し、道路整備に充てる方針だ。
取得税の廃止により、地方税収が年間約2000億円減る。大綱は「地方財政に影響を及ぼさない」と明記したが、代替財源の見通しは立っていない。
自動車業界は「消費増税で販売不振を招く」として取得税と重量税の廃止を求め、税収減を懸念する自治体が反対した。今夏の参院選をにらみ、業界と地方双方の顔を立てる玉虫色の決着である。
重量税の使途も疑問だ。無駄な公共事業の温床になるとして、自民党政権が09年に廃止した道路特定財源の復活にならないか。
複雑な仕組みの自動車課税を、ガソリン税を含めて総合的に見直し、簡素化することが重要だ。
来年度改正では、富裕層を対象に所得税と相続税の課税強化を打ち出した。財源確保の効果は限定的で、労働意欲や経済活力をそぐことになりかねない。
住宅ローン減税の拡充や企業向け減税も盛り込まれたが、どこまで経済をテコ入れできるかは未知数だ。成長戦略と連動した法人税減税などが求められよう。
所得・資産・消費で均衡のとれた負担のあり方を探るべきだ。
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