試験日まで1か月を切る中で、極めて異例の対応である。
大阪市教育委員会は、体罰を受けて男子生徒が自殺した市立桜宮高校で体育系学科の今年の入試を中止することを決めた。橋下徹市長の要請を受け入れた。
入試を中止せざるを得ないほどに、桜宮高の体罰問題が深刻だという判断だろう。
橋下市長は「体罰を容認する風潮が残っている状況で新入生を迎え入れることはできない」と主張した。入試を実施する場合には、市長の予算執行権を行使し、入試関連予算の支出を凍結する可能性にも言及していた。
5人の教育委員のうち、教育委員長を除く4人が「入試を継続すれば、学校改革につながらない」などと市長に同意した。勝利至上主義の下、体罰を常態化させた学校の体質を根本から変えることを重視した結論と言えよう。
入試の中止に対しては、「受験に向けて準備をしてきた中学生に重大な影響を与える」と懸念の声も少なくなかった。市教委は中止による混乱を最小限に抑える措置を講じることが大切だ。
市教委は今回、体育系学科を志望する中学生を普通科に振り替えて受け入れる方針だ。
普通科の定員に体育系学科計120人を上乗せする。普通科の受験科目は通常5科目だが、体育系学科の志望者には、3科目と実技での受験を認めるという。
下村文部科学相が「受験生に影響がないような配慮であれば、よしとしたい」と理解を示したように、受験生の進路を確保する上で現実的な対応と言える。ただ、新入生は将来的に体育系学科に移れるのだろうか。
橋下市長が入試中止を求めた背景には、桜宮高や市教委への不信感がある。
体罰を加えた男性教師は男子バスケットボール部を強豪に育てた実績から、在籍10年以上で転任させるという市教委の要綱に反し、19年も在籍している。周囲も批判しにくい状況になっていた。
学校が体罰情報を得ながら、おざなりな調査で体罰はなかったと結論付けたことも問題だ。
今後、何より重要なのは、体罰の実態解明と再発の防止だ。
橋下市長は市教委に、桜宮高の運動部顧問の教師を入れ替えることも求めている。
少なくとも、体罰を行った教師については、厳しい処分と異動が必要だ。適切な人事配置で体罰の根絶を図らねばならない。
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