北朝鮮ミサイル 制裁決議を歓迎する

朝日新聞 2013年01月24日

北朝鮮決議 核実験は許されない

北朝鮮による「人工衛星打ち上げ」に対し、国連安全保障理事会が制裁を強化する決議を採択した。

「打ち上げ」を受けた決議は初めてだ。事実上の長距離弾道ミサイル発射実験に対する、国際社会の強い危機感の表れだ。

追加制裁に慎重だった中国も賛成に回ったことを、北朝鮮は重く受け止めるべきだ。

決議は、北朝鮮がまた弾道ミサイル技術を使った発射や核実験をすれば、「重大な行動を取る」との決意を表明した。

異例の強い表現だ。強制措置を認める「国連憲章第7章」に基づいた、さらに強い制裁などが念頭にある。

にもかかわらず、北朝鮮外務省はすぐに批判の声明を出し、核実験を行うことを示唆した。これ以上、愚挙を重ねることは許されない。緊張を一方的に高めてきたのは北朝鮮だ。強く自制を求める。

北朝鮮は従来のプルトニウムだけでなく、ウラン濃縮による核開発を進めている。

既存の施設でのプルトニウムの抽出活動は止まっており、保有状況を推測できる。だが、秘密裏に進むウラン濃縮は実態をつかみにくい。長く稼働すれば、それだけ兵器用核分裂物質も増える可能性がある。

北朝鮮の核開発は以前と異なる段階に入ったのが現実だ。核実験で、ミサイル搭載可能な核弾頭を手にするような事態を阻止しなければならない。

中国が決議に慎重だったのは、北朝鮮が反発、暴走するのを心配したからだった。だが、本土がミサイルの射程に入りつつある米国が強い対応を求め、最後は受け入れた。

中国は、北朝鮮に食料やエネルギー支援を続けている。北朝鮮の存在が自らの安全保障にプラスになるとの計算からだ。

だが、北朝鮮が核実験、ミサイル実験を続けるようでは、北東アジアの安定は脅かされるばかりだ。甘い対応が地域のさらなる不安定化を招くことは、中国の利益にもならない。

今回の決議は、外交圧力を強めるねらいだが、北朝鮮を追い詰めるばかりが目的ではない。対話による平和的解決への期待も込めている。

本気で非核化へ歩むならば、国際社会の側には平和や経済発展で協力する用意がある。米中、そして日本などは、そうしたシグナルも送りながら、北朝鮮を外交決着へと引き寄せる必要がある。

国際社会の総意に背いて国の未来など開けない。北朝鮮はそれをしっかり自覚する時だ。

毎日新聞 2013年01月24日

北朝鮮ミサイル 制裁決議を歓迎する

北朝鮮が先月、人工衛星打ち上げと称して行った事実上の長距離弾道ミサイル発射に関して、制裁を強化する決議案を国連安全保障理事会が全会一致で採択した。

北朝鮮をかばう姿勢が目立っていた中国さえ賛同する形で「国際社会の意思」を明確に示した意義は決して小さくない。私たちはこれを大いに歓迎する。

同時に、北朝鮮が決議に反発する声明で示唆した核実験の実施など、今後の暴挙の自制を強く求める。

周辺国を脅迫し、軍事的挑発を続けて憎まれる路線が、いったい何をもたらすのか。北朝鮮指導部は深く考えてみるべきである。

今回決議で注目すべきは、これまで中国の反対により「議長声明」という弱い形式で採択されがちだった北朝鮮ミサイル問題に関する安保理の対応が「全会一致の制裁決議」という力強い形で実現したことだ。

この背景には、北朝鮮のミサイル技術に対する米国の懸念があるだろう。先月の発射では一時的にではあれ何らかの物体を軌道に投入したとされる。核弾頭を搭載した長距離弾道ミサイルが米本土に届く可能性も無視できなくなった。これに警戒感を強めた米国が、議長声明でなく全会一致の制裁決議を中国にのませたという構図である。

対北朝鮮政策では微温的な感があった米オバマ政権が積極策に転ずるなら、それも歓迎できよう。

もちろん、今回決議で中国が北朝鮮に対する姿勢を根本的に変えることはあるまい。しかし強い決議が採択された以上、これを露骨に軽んずることもできないだろう。

「3代世襲」で権力の座に就いた北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記はいずれ訪中して習近平総書記と友好関係を深める必要があるが、中国側が受け入れにくいと考える可能性もある。

一方、北朝鮮外務省は声明で、事実上の長距離弾道ミサイルを「さらに多く開発し、打ち上げる」と公言した。米国の対北政策を理由に「朝鮮半島の非核化も不可能」と断じ、今後、非核化を論議する対話は行わないと述べた。

米国に対し「核抑止力を含む自衛的軍事力」で対応するなどと、核実験の強行も示唆した。

とはいえ、こうした発言は従来の揺さぶりの水準を大きく逸脱したものではない。実は苦しい北朝鮮の現状から、むしろタイミングを見計らって日米韓に別々の対話攻勢をかける可能性が高いとの見方もある。

あれこれの交渉で米国が北朝鮮の思うツボにはまった前例もある。

どんな状況であれ日米韓の緊密な連携が不可欠だ。順調に見える時こそ警戒を怠ってはならない。

読売新聞 2013年01月24日

対「北」制裁強化 安保理決議の実効性を高めよ

北朝鮮への圧力の手を緩めず、実効性を高めることが重要だ。

国連の安全保障理事会が、北朝鮮への制裁を強化する決議2087を全会一致で採択した。

決議は、北朝鮮が「人工衛星打ち上げ」と称して昨年12月、安保理決議に違反する長距離弾道ミサイル発射を強行したことを非難した。新たなミサイル発射や核実験を行う場合、安保理が「重大な行動を取る」とも警告している。

制裁内容の調整に時間を要したが、新たな決議採択は、国際社会が結束して北朝鮮の挑発に厳しく対応したものと評価できる。

決議は、常任理事国である米国と中国の妥協の結果でもある。

米国は、日本や韓国と連携しながら、制裁の枠組みを広げ、強化することを目指した。これに対し中国は当初、新たな制裁には否定的で、法的拘束力のない議長声明とするよう主張したという。

最終的に決議採択に落ち着く代わりに、中身は、資産凍結や海外渡航禁止措置の対象追加など、既存の決議に基づく制裁強化にとどまった。貨物検査の義務づけなど新規制裁に踏み込まなかった点で物足りなさは残る。

それでも、昨年4月に北朝鮮がミサイルを発射した際、中国の反対で安保理が北朝鮮を非難する議長声明しか出せなかったのに比べると前進だ。当時の甘い対応が北朝鮮を増長させ、再度の発射を許す一因となったのは明らかだ。

北朝鮮は、安保理決議に強く反発し、「核抑止力を含む自衛的な軍事力」を強化する「対応措置」を講じると宣言した。核実験の予告とも受け取れる。

北朝鮮は、安保理にミサイル発射を非難されたのに対抗して、2回の核実験を強行した。3回目を許せば、核ミサイルの脅威が高まり、地域は一層緊張しよう。

中国は、安保理常任理事国として、隣国の北朝鮮に挑発をやめるよう厳しく迫るべきだ。

中国が制裁強化決議に同意した背景には、南シナ海の領有権問題や尖閣諸島を巡って米国とのあつれきを深める中、北朝鮮問題でも対立する事態は重荷となるため、避けたいとの判断もあろう。

制裁を強化しても、効果が上がらなければ意味はない。北朝鮮の貿易額の7割を占める中国には、大量破壊兵器関連物資や贅沢(ぜいたく)品の禁輸などの制裁を順守、徹底し、強化する重い責任がある。

菅官房長官は、日本も独自の制裁を強化する考えを示した。効果的な策を検討してもらいたい。

産経新聞 2013年01月24日

対北制裁決議 抜け穴封じ実効性高めよ

国連安保理は、昨年末に長距離弾道ミサイルを発射した北朝鮮に対する制裁強化決議を全会一致で採択した。

過去の決議の明白な違反であり、厳しい対処は当然だが、北は対抗措置として3度目となる核実験や一層のミサイル開発を示唆した。暴挙をこれ以上許してはならない。日米韓など関係各国は連携して圧力を強める必要がある。

決議採択に1カ月以上を要したのは、中国が抵抗し、決議より弱い議長声明とするよう主張したせいだ。米国が粘り強い説得を続けたのは当然といえる。

昨年発射されたミサイルの射程は米本土に到達可能な1万キロ以上とみられ、米国も自国への脅威認識を強めていた。米国の説得の成功は日本の意向を反映したものでもあり、対北、対中での日米協調の具体例として評価できる。

中国が最後に歩み寄ったのは、北の暴走をもてあましたからとみていい。金正恩政権は国際の平和と安全への脅威となっている自国の現状を改めて認識すべきだ。

にもかかわらず、北は決議採択を受けて核実験の示唆を含む声明を発表した。北の核放棄を盛り込んだ2005年の6カ国協議共同声明も「死滅した」という。反省の色が全く見えないのは、制裁を甘くみているのだろう。

今回の決議は、ミサイル発射に関与した6団体4人を新たに資産凍結などの対象に指定したほか、各国に対し、北の金融活動の監視強化などを求めている。

既存の制裁を拡大徹底する形にとどめたのは、中国への譲歩とみられ、十分な制裁強化とは言い難い面もある。だが、国連決議は各国が定められた措置を厳格に履行しなければ効果はない。抜け穴を封じる努力が何より肝要だ。

そのためには中国の対応も問われる。中国は「朝鮮半島非核化」を掲げ、北を刺激しないことが得策として北を擁護する姿勢を貫いてきた。だが北の対応を見れば、それが間違っていたことは明らかだ。北の友好国であるならばなおさらのこと、率先して核実験断念を働きかけるべきだ。

安倍晋三首相は決議を「高く評価する。わが国の考えが多く反映された」と歓迎し、菅義偉官房長官は日本独自の制裁を強化する可能性も示唆した。米国にも、国連制裁と呼応して独自の金融制裁の復活を実行してもらいたい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1288/