痛ましい結末だ。
アルジェリアの天然ガス関連施設がイスラム武装勢力に襲われた事件でプラントメーカー「日揮」社員ら日本人7人の死亡が確認された。
過酷な環境の異国で仕事に励む“企業戦士”を標的にした犯罪者集団を強く非難する。
安倍首相が「痛恨の極みだ。テロを絶対に許さない」と言明したのは、当然である。
30人を超す重武装のテロ集団が日米英など多国籍の外国人多数を拘束する特異な事件だった。
事件の全容解明と検証が急がれる。施設内に内通者がいて武装勢力を手引きした疑いがある。
アルジェリアのセラル首相は記者会見で、外国人37人が死亡、犯人29人を殺害したと述べた。
アルジェリア軍の早期制圧作戦には、人質の人命軽視との批判があった。セラル首相が「テロに屈しない」と強調した背景には、長年の内戦で15万人もの犠牲者を出した国内事情もあるだろう。
武装勢力が人質を連れて国外逃亡を図ったほか、ガス田施設を破壊しようと爆弾を仕掛けており、それを阻止するには早期制圧が不可欠だった、とも説明した。
今回の武装勢力の犯行を許せば、第2、第3のテロを誘発しかねない。アルジェリア政府としては、武力行使以外に選択肢がなかったということなのだろう。
文明社会で営まれる経済活動に一方的に攻撃を仕掛けられたら、応戦せざるを得ない。
キャメロン英首相は、武力行使の事前通告がなかったことに不満を表明していたが、事件終結後は「どの国の治安部隊にも非常に難しい任務」だったと指摘し、早期制圧に一定の理解を示した。
安倍政権は政府専用機をアルジェリアに派遣し、生存者の帰国や遺体の搬送を進める。なお安否が不明な3人の確認も急ぎたい。
どういう状況で軍事作戦が行われ、日本人が死亡したのかについて、アルジェリア政府に詳細な説明を求めることが大切だ。
一方で、日本政府の危機管理体制上の課題も浮かび上がった。
アルジェリア軍が軍事作戦を主導する中、欧米諸国と同様、事件情報がほとんど取れなかった。
自衛隊制服組の防衛駐在官は現在、世界全体で49人いるが、アフリカはエジプトとスーダンの2人だけだ。着実な増員が必要だ。
紛争地域に進出した日本企業を守るには、各地域やテロ対策の専門家を育成し、情報収集・分析能力を高めることが急務である。
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