デフレ脱却に向け、政府と日銀が2%の物価目標を盛り込んだ共同声明をまとめた。達成のハードルは高く、連携強化の実効性が問われよう。
日銀の金融政策決定会合で共同声明を決めた後、白川総裁、麻生副総理・財務相、甘利経済財政相が安倍首相に報告した。
声明は、日銀が消費者物価の前年比上昇率2%の目標を設けて金融緩和を推進するとし、「できるだけ早期の実現を目指す」と明記したのがポイントだ。
日銀は従来、中長期的に望ましい物価上昇率を「当面1%が目途」としてきたが、首相の強い要請を受け入れた。日銀が具体的な物価目標を設定するのは初めてで、歴史的な転換である。
首相は「金融政策の大胆な見直しだ」と評価した。声明をテコに、政権が最重視する経済再生を加速したい決意の表れだ。
日銀は声明に併せ、2014年から、期限を定めず、国債などの金融資産を大量に買い入れる新たな金融緩和策を決めた。
日銀にとって「無期限緩和」は未踏の領域だ。より積極的に金融緩和を行うという、市場へのメッセージになるだろう。
ただ、日本では1990年代後半から、消費者物価上昇率はほぼ0%台かマイナスだ。2%まで上昇させる道筋は描けていない。
物価がうまく上昇しても、実体経済が浮揚せず、雇用拡大や賃金上昇が伴わない「悪い物価上昇」では、国民生活がかえって脅かされる事態すら懸念される。
日銀が政府の経済財政諮問会議に定期報告し、緩和策の効果が点検されることも決まった。国民生活などへの副作用にも目配りし、どうデフレから脱却するか。日銀に説明責任が求められる。
同時に重要なのは、日銀の独立性を堅持することだ。金融政策の手法などに対し、政府は過度な政治介入を慎む必要がある。
デフレ脱却には、政府も政策を総動員しなければならない。
金融緩和で資金を大量供給しても、新たな投資を生み出す資金需要が乏しければ、有効に活用されず、消費も伸びないからだ。
声明が政府に「大胆な規制・制度改革」「税制の活用」などの構造改革や、「競争力と成長力の強化」を促したのは妥当だ。政府は成長戦略を急いでもらいたい。
日銀による国債の大量買い入れが「財政赤字の穴埋め」と捉えられると、日本の信認が揺らぐ。声明が指摘したように、政府は財政健全化策も強化すべきである。
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