米ボーイング社の最新鋭中型機「787」で燃料漏れなどのトラブルが相次ぎ、日米の航空当局が調査に乗り出した。
小さなトラブルが重大事故につながる恐れはないか。最優先しなければならないのは安全である。日米当局には、徹底した原因解明を求めたい。
787は炭素素材を使って機体を軽量化し、燃費を大幅に改善した省エネ旅客機だ。「ドリームライナー」と呼ばれる。
低コストで長距離の路線に投入できるため、航空会社の収益拡大に貢献するとの期待が高い。世界中から800機の発注があり、2011年秋、世界に先駆けて全日本空輸が運航を開始した。
現在、運航されている約50機のうち、主力機と位置づける全日空が17機、日本航空が7機と両社でほぼ半分を保有している。
米ボストンの国際空港で7日、駐機中の日航機の補助動力用バッテリーから出火したトラブルで、問題が表面化した。
8日には、この空港を走行していた別の日航機の主翼から燃料漏れが見つかり、その後、国内でも全日空機でオイル漏れや操縦席の窓のひび割れなどが発生した。
今月だけでトラブル6件は多すぎるのではないか。昨年には、米ユナイテッド航空機が電子系統の故障で緊急着陸し、カタール航空機の不具合も報告されている。
米連邦航空局(FAA)は、787の設計や製造工程など安全性に関する包括的な調査を行うと発表した。FAAのフエルタ長官は「何が起きているのか把握する」との見解を示した。
国土交通省も専門チームを設置し、独自の調査を始めた。
787に限らず、新型機は就航後、細かな不具合が生じるとされるが、日米当局が事態を重視したのは妥当な判断と言えよう。
787は開発段階からトラブル続きだった。全日空への1号機納入も予定より3年以上遅れた。
ボーイングは787の信頼性を強調するが、新技術を満載したハイテク機であることが今回の不具合と関係しているかどうかを究明する必要がある。
炭素繊維、主翼や胴体、タイヤなど787に使われている部品の多くが日本製だ。製造に関わった日本企業と当局が連携し、問題を早期に解決してもらいたい。
今回の調査は設計の見直しなどに発展する可能性は低いとする観測があるものの、787を運航する航空会社には不断のチェックを求めたい。
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