成長を重視してデフレ脱却を目指す「アベノミクス」の第1弾である。迅速に実行し、日本経済の再生に弾みを付けなければならない。
安倍政権が、国・地方合わせた事業規模が20兆円超にのぼる緊急経済対策を決定した。
復興・防災対策、成長による富の創出、暮らしの安心・地域活性化の3本柱に約10兆円の国費を投入する。対策は、実質国内総生産(GDP)を2%押し上げ、60万人の雇用を創出するという。
対策の裏付けとなる2012年度補正予算案の総額は約13兆円に達し、リーマン・ショック後の不況対策で麻生政権が策定した09年度第1次補正予算に迫る。
首相は記者会見で「縮小均衡の再配分から、成長による富の創出へ転換を図る」と語った。政府は補正予算案を早期に成立させ、「強い経済」の実現を目指すスピードが問われよう。
対策が、民間投資の活性化など企業の成長力を強化する姿勢を打ち出したのは評価できる。
ただ、総じて、景気浮揚への即効性を重視するあまり、公共事業頼みとなった感は否めない。補正予算案に盛り込む5兆円強の公共事業費は、12年度当初予算の公共事業費を上回る規模だ。
公共事業主体の景気刺激策は一過性の効果しか期待できない。成長の底上げや雇用拡大にどこまで結びつくか、懸念される。
持続的成長につなげる総合的な戦略の策定を急ぐ必要がある。政府と日本銀行の連携による大胆な金融緩和の実現も欠かせない。
忘れてならないのは、成長と財政再建をどう両立させるかだ。
大規模な財政出動に踏み切る結果、12年度の新規国債発行額は当初予算と補正予算を合わせて約50兆円に膨らむ。民主党政権下で財政規律維持の目安としてきた年44兆円を大きく上回る。
14年4月に消費税率引き上げを予定通り実施するには、着実な景気回復が必要になる。当面は積極財政で景気のテコ入れを重視するとの判断はやむを得まい。
そうであっても、先進国で最悪の財政事情を考えれば、ばらまき型予算を排除し、歳出を絞り込むことが重要だ。民主党政権で大幅カットされた公共事業の復活を目指す動きも問題である。
13年度予算編成では、投資効率の低い公共事業を防災名目で潜り込ませてはならない。
政府は、具体的な財政再建目標を設定し、中長期的な財政健全化への取り組みを急ぐべきだ。
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