高2生自殺 体罰は絶対許されない

朝日新聞 2013年01月11日

高2生の自殺 体罰許さぬ教育現場に

大阪市立桜宮高校2年の男子生徒が昨年12月、自殺した。

生徒はバスケットボール部の主将で、前日の練習試合でミスをしたとして顧問から体罰を受けていた。体罰が「つらい」という悩みを書き残していた。

顧問は体罰の事実を市教委に認めている。学校教育法は体罰を禁じており、教育者として断じて許されない行為である。

市教委は弁護士らでつくる外部監査チームを設置した。体罰の期間や対象を、過去にさかのぼって明らかにする必要がある。同時に、亡くなった生徒の親に調査内容を包み隠さず伝え、なぜ防げなかったのかを説明する責任がある。

これまでの経緯をみると、市教委や学校の体罰への認識は、あまりに甘い。

2011年9月、市の公益通報制度の窓口に、桜宮高校の名をあげて体罰の通報があった。しかし学校側はスポーツの部活動の顧問たちに尋ねただけで、「体罰はない」と市教委に報告した。市教委も、通報を受けた市も、それをうのみにした。

この感度の鈍さは何なのか。なぜ、生徒への聞き取りをしなかったのか。結果として自殺した生徒を救う機会を逃したのではないか。残念でならない。

文部科学省によると、体罰で処分を受ける教員は、年350~400人いる。授業中の次に多いのがクラブ活動中の体罰である。

体罰をした顧問は1994年に保健体育科教諭として赴任した。チーム強化の指導力は評価されていた。

部活動が実績をあげ、学校の名声を高める。そんななか、学校全体に顧問に直言しにくい雰囲気があった可能性もある。

試合に出たいので顧問に逆らいにくい。自殺した生徒だけでなく、他の生徒にも耐え難い日々だったのかも知れない。

部活動も教育だ。時間はかかっても生徒の能力を引き出し、やるべきことを考え、実行するように育てる。その結果として勝利へ導くのが基本である。

体罰で厳しく鍛え、勝利を得たとしても、暴力が正当化されることはない。

かつて体罰をした大阪府のある教諭が、府教委に提出した反省文がある。力で服従させても表面的な従属関係にしかならないとし、「生徒に憎しみや無力感しか生まなかったと今は実感している」と結ぶ。

愛のムチは暴力をふるう側の方便に過ぎない。一歩間違えれば将来ある子の命が失われることを、教育に携わる人はかみしめてほしい。

毎日新聞 2013年01月10日

高2生自殺 体罰は絶対許されない

大阪市立桜宮高校の2年男子生徒が自殺し、バスケットボール部顧問の男性教諭から体罰を受けていたと記した手紙を残していた。男子生徒は顔面を平手打ちされるなどの体罰を繰り返し受けていたという。スポーツ指導の名の下に行われていたとしても、暴力を伴う体罰は実質的には虐待であり、絶対に許されない。体罰の実態や自殺との関連を徹底的に調査し、再発防止策を確立しなければならない。

男子生徒が残した遺書などには、顧問による体罰や、主将としての責任に苦しんでいたことが書かれ、体罰が自殺の引き金になった可能性が高い。

市教委による調査では、他の部員へのアンケートで「かなりの頻度で体罰があった」との回答があり、体罰が常態化していたことが明らかになっている。自殺前日の練習試合では本人や他の部員にミスがあると、顧問が男子生徒の頬をたたいていたのを多数の部員が目撃していた。

バスケット部での体罰の情報は11年9月に市教委に寄せられていたが学校側は「体罰はなかった」と報告していた。調査は各運動部の顧問教諭らに尋ねるにとどめ、生徒への聞き取りなどは行わなかったという。これでは実態が明らかになるはずはない。きちんと調査をしていれば自殺という最悪の事態を防ぐことはできたはずだ。学校と市教委は責任を重くかみしめなければならない。

桜宮高は五輪メダリストやプロ野球選手も輩出してきたスポーツ強豪校だ。男子バスケットボール部も過去5年で3回インターハイに出場するなどの成績を上げている。一方で過去にも男子バレーボール部で顧問の男性教諭による体罰が発覚し、停職3カ月の処分を受けている。

スポーツ強豪校では特に、成果を出すために体罰が広く行われ、厳しい上下関係の中で「愛のムチ」として見過ごされてきた傾向がある。しかし、こうした体質は根本的に改めなければならない。

教育現場での体罰は学校教育法で全面禁止され、文部科学省は06年度に「いかなる場合も行ってはならない」と通知している。児童生徒の心身を傷つけたり、いじめや暴力容認の風潮を生んだりする恐れがあるなど、重大な負の影響があるためだ。

だが、実際には体罰は減少せず、文科省の統計では90年代後半以降、体罰で処分された教職員は年間400人前後で推移している。大阪だけでなく、全国的に体罰を容認する風潮が根強く残っているのが現実だ。

体罰を根絶するには社会全体での取り組みが必要だ。教育委員会や教師だけでなく保護者も強い意思を持って対応していかねばならない。

読売新聞 2013年01月11日

大阪体罰自殺 教師による犯罪ではないのか

教育現場であってはならない事態が起きた。

大阪市の市立高校2年の男子生徒が、所属するバスケットボール部顧問の男性教師から体罰を受け、その翌日に自殺した。

生徒が残した教師あての手紙には「体罰がつらい」という内容の記述があった。大阪市教育委員会は、体罰が自殺の主な要因とみている。警察も捜査を始めた。事実関係の徹底解明が求められる。

市教委によると、教師はこれまで、試合で生徒がミスをすると、頬を平手でたたく体罰を加えた。自殺した前日にも、生徒は母親に「30~40発ぐらいたたかれた」と話していたという。

教師は市教委に「発奮させようと思った」などと説明している。しかし、指導の一線を越えた許されぬ暴力行為というほかない。

学校教育法は体罰を明確に禁じている。暴力による指導では、子供たちの正常な倫理観を養うことができず、かえって恐怖心や反抗心を植え付けかねないからだ。

生徒の自殺後、学校が部員50人に行ったアンケートでは、「自分も体罰を受けた」と回答した部員が21人もいた。体罰が常態化していた疑いが強い。校長らの管理責任も厳しく問われよう。

この教師については、一昨年にも体罰情報が市に寄せられていた。それにもかかわらず、学校側は教師から事情を聞いただけで、部員からの聞き取りをせず、「体罰はなかった」と結論づけた。市教委も報告をうのみにした。

極めてずさんな対応である。この時、踏み込んだ調査をしていれば、今回の悲劇を防ぐことができた可能性もある。大阪市の橋下徹市長が「教育現場の最悪の大失態だ」と指摘したのは当然だ。

スポーツの強豪として知られるこの市立高校では以前にも、男子バレーボール部顧問の男性教師による体罰が発覚した。教師は停職3か月の懲戒処分を受けた。

行き過ぎた勝利至上主義によって、指導の名の下に体罰を容認する風潮があったのではないか。

体罰を理由に処分された教職員数は、全国で毎年400人前後に上る。減少傾向は見られない。

文部科学省は体罰の禁止を改めて徹底すべきだ。

教育現場では生徒が教師に暴力を振るう事例も後を絶たない。教師が毅然(きぜん)とした態度で指導しなければならない場面もあろう。

ただ、肉体的苦痛を与える体罰は、いかなるケースでも認められないことを、教師は再認識する必要がある。

産経新聞 2013年01月11日

体罰と自殺 愛情の一片も感じられぬ

大阪市立桜宮高校2年の男子生徒が昨年12月、自殺した。この生徒は強豪で知られる同校バスケットボール部で主将を務めており、顧問の男性教諭から体罰を受けたと手紙に書き残していた。

亡くなる前日、男子生徒は母親に「今日も30~40発殴られた」と話し、遺体の顔面は腫れ、唇は切れていた。

遺体を前に、顧問は母親に「体罰です」と認めたというが、これはもう暴行、傷害事件である。市教委が部員に聞いたアンケートでは日常的な暴力が明らかになっており、そこに生徒に対する愛情はかけらも感じられない。顧問は厳しく罰せられるべきだ。

同校では平成23年にもバレーボール部で顧問の教諭による体罰が発覚し、停職3カ月の処分を受けていた。

同年にはバスケ部顧問の体罰についても市への通報があったが、市教委と同校は顧問への聞き取りだけで、生徒に事情を聴くことなく「体罰はなかった」と結論づけていた。

学校や教育委員会のおざなりで無責任な隠蔽(いんぺい)体質は、一連のいじめ問題にも通じる。防げたはずの悲劇を起こしてしまった。

自殺後に同校が行ったアンケートでは、50人の部員中48人が顧問による体罰を見ており、女子部員9人を含む21人が自ら体罰を受けていたと回答した。自殺した男子生徒への体罰を目撃した部員も38人に達していた。

自殺前日に顧問が男子生徒を平手打ちにした現場には副顧問と技術指導担当の教員2人も同席しながら黙認し、校長への報告も行わなかった。あきれるばかりだ。

教員による体罰は学校教育法で禁じられている。ここでいう体罰とは、殴る蹴るなど身体への侵害や、長時間の起立など肉体的苦痛を与える行為を指す。

文部科学省によると、体罰を理由に処分を受けた教職員は年間400人前後いるが、このうち約3割は部活動にかかわるものだという。学校や部活動の閉鎖性が、いじめや理不尽な体罰の温床となっていないか。

いうまでもなく体罰は悪い。厳しい対処は当然だ。それでも、禁じられた行為だと覚悟のうえでふるわれる熱血教師の「愛のムチ」があり得ることも信じたい。ただ今回のケースは、そうした願望からもあまりに遠い。

・ - 2014/04/21 15:25
「桜の宮自殺扇動教育破壊違法介入事件」の顛末は「統廃合の小五の自殺」である。
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