経済財政諮問会議 改革の出発点に戻ろう

毎日新聞 2013年01月08日

経済財政諮問会議 改革の出発点に戻ろう

小泉政権時代に改革のエンジンとして注目され、民主党政権下では休眠状態にあった「経済財政諮問会議」が今週、復活する。新設される「経済再生本部」と合わせ、経済政策の新たな“司令塔”になるという。

議長を安倍晋三首相が務め、政府からは甘利明経済再生担当相や麻生太郎副総理兼財務相が参加。政権が最重要課題とする「デフレ脱却」で、総裁がメンバーとして出席する日銀との関係強化を目指す構えだ。また、民間から経済専門家や現役の企業トップも加わる。

再生本部との役割分担や連携の仕方など不明な点があるが、諮問会議には、日本経済が抱える構造的な難問にこそ、切り込んでもらいたい。

だが、最初の焦点は、物価上昇率の目標導入で政府と日銀が何を合意するか、になりそうだ。目標値や時期など数字の論争ではなく、遠回りになったとしても、物価と経済の関係について政府と日銀は理解を共有してほしい。

そうした共通理解を飛ばし、日銀に物価目標を追いかけさせるだけでは、真の問題解決にならないからだ。現在0%近辺で推移している物価上昇率が高くなっても、働く人の給料が増えなければ、国民の暮らし向きはかえって悪くなってしまう。

政府が年2%の物価上昇率達成に本気なら、公務員の給与や年金の給付額を含む政府の経費も連動させる必要が出てこよう。どうしたら雇用や給料が増えるのかが肝心で、物価上昇は結果に過ぎない。財政規律を保って長期金利の高騰を防ぎながら、規制緩和などを通じ民間本来の活力が引き出せるようにする方策を検討してもらいたい。

諮問会議が小泉政権下で本格始動した当時を思い起こしてみよう。会議が毎年作成することになった「骨太の方針」は、官邸主導の予算編成を目指し、各省庁などからの抵抗を抑え込もうとした。財政再建と構造改革がもともとの責任分野で、新規国債の発行枠30兆円を設定したり、2010年代初めに、国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化する目標を採用したりした。

デフレの克服だけでなく、規制改革や歳出削減に取り組んだ。抵抗勢力とぶつかりながら、公共事業費や社会保障費にメスを入れようとした。

この原点に立ち返ってほしい。そのうえで、人口減少という、日本が直面する大きな課題を正面から議論し、具体策につなげてもらいたい。

「日本新生」「再生」「戦略」といった言葉が、さまざまな政権下で使われては成果を見ずに消え、別の政権で復活するというパターンを繰り返してきた。もう同じことをしてはならない。

読売新聞 2013年01月10日

諮問会議復活 政府と日銀の協調深める場に

日本経済の再生や、デフレ脱却に向け、経済政策の司令塔を十分に機能させ、着実な成果を上げねばならない。

政府の経済財政諮問会議が3年半ぶりに再開した。安倍首相が議長を務め、甘利経済財政相ら主要閣僚と白川日銀総裁がメンバーだ。民間から佐々木則夫東芝社長ら4人も加わった。

民主党政権は諮問会議を休眠状態とする代わりに、国家戦略会議を新設したが、政策が迷走し、十分な成果を得られなかった。

安倍政権が諮問会議を復活させ民間の知恵も生かして政策決定プロセスを立て直すのは妥当だ。

かつて小泉政権時代、諮問会議は官邸主導で政策を進めるエンジンとして活用された。安倍政権も諮問会議を司令塔とし、「強い経済」を取り戻す狙いがあろう。

諮問会議は、財政運営などのマクロ政策を議論する役割を担う。まず、中長期的な経済財政運営の基本方針となる「骨太の方針」を6月をメドに策定する。

政府は景気てこ入れのため、緊急経済対策に大型の財政出動を盛り込む方針だが、一方で財政規律も堅持しないと、日本の財政悪化への懸念が高まりかねない。

諮問会議は、景気と健全財政の両立を目指し、将来の財政再建シナリオを描いてもらいたい。

諮問会議がとくに注目されるのは、首相と日銀総裁が定期的に議論する場にもなることだ。

首相は大胆な金融緩和を求め、消費者物価の2%上昇を達成する物価目標の設定や、政府と日銀の政策協定締結を要請してきた。

諮問会議で首相は、「日銀はこれを十分踏まえた金融政策を実施してほしい。政府と日銀の連携を一層深化させる」と発言した。

白川総裁は「精力的に(金融緩和策に)取り組んできたが、これからも取り組む」と述べた。

長期化しているデフレからの脱却へ、政府と日銀が協調を深める一歩となったのではないか。

日銀は今回の議論を踏まえ、21~22日に開く金融政策決定会合で政府と連携した追加策を打ち出すことが期待されよう。

政府は諮問会議を、ミクロ政策を検討する「日本経済再生本部」とともに、経済政策を推進する両輪と位置づける。再生本部に産業競争力会議を設置し、成長戦略など産業政策を立案させる。

両輪をうまく連携させ、各府省の縦割り行政の弊害を打破することが肝要だ。首相と経済財政相が主導し、実効性の高い政策を速やかに実施すべきである。

産経新聞 2013年01月11日

諮問会議始動 歳出抑制に果敢な姿勢を

安倍晋三政権で経済財政政策の司令塔となる経済財政諮問会議の議論が始まった。民主党政権下では休眠状態にあり、約3年半ぶりの開催だ。

会合で安倍首相は、デフレ脱却に向けた2%の物価上昇目標設定など政府と日銀の連携を改めて訴え、中長期的な経済財政運営の指針となる「骨太の方針」を6月をめどにまとめるよう指示した。

官邸主導の経済政策運営を目指す首相が、諮問会議の復活で日本経済最大の課題である脱デフレを強調したのは当然である。白川方明日銀総裁もメンバーだ。政府と日銀がしっかりと認識を共有できる場となるよう強く求めたい。

ただ、諮問会議にはもう一つ重要な役割がある。かつてこの会議をフル活用した小泉純一郎政権のように、大胆な構造改革の道筋を示すことだ。規制の緩和・撤廃などは民間に活力を与え、日本経済の成長力を引き上げる。

脱デフレには大胆な金融緩和と同時に、思い切った財政出動が必要だ。だが、その場合も、国の借金残高が国内総生産(GDP)の約2倍と危機的状況にあることは常に念頭に置かねばならない。

歳出歳入構造を抜本的に見直すとともに成長を実現する。それこそが持続可能な財政を維持する絶対条件だ。金融政策、財政政策と並び「脱デフレへの三本の矢」の一つとされる成長戦略は、日本経済再生本部とその傘下の産業競争力会議が策定する。土台となる考え方や方向性は「骨太の方針」にしっかりと書き込むべきだ。

歳出改革で重要なのは社会保障費の切り込みだ。小泉政権下の諮問会議がまとめた「骨太の方針2006」では、毎年1兆円にもなる社会保障費の自然増分を一部抑制する方針が示され、民主党政権が撤廃するまで続いた。

それで十分だったわけではないが、歳出抑制に果敢な姿勢を見せることが、財政への信認につながる。諮問会議は、自民、公明、民主の3党合意に基づく社会保障制度改革国民会議の議論をリードすることも求められている。

「骨太の方針」がまとまるのは今夏の参院選直前になる。民主党政権が定めた「政策経費71兆円以下、新規国債発行44兆円以下」に代わる具体的な財政規律も含め、どこまで改革に踏み込めるか。その成否は安倍首相の指導力にかかっている。

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