朝日新聞 2013年01月10日
東京五輪招致 成熟都市と誇るなら
2020年の五輪・パラリンピック招致の国際広報活動が解禁された。
東京はイスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)と争う。開催都市は9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会で決まる。
東京は会場の約8割が半径8キロ圏に収まるコンパクトさや、4千億円強の開催準備基金が売りだ。猪瀬直樹都知事はいう。「東京は世界をリードするトレンドの中心で、世界でも類を見ない安全性を誇る」
昨夏、3度目の開催だったロンドン五輪が称賛されたのにならい、「成熟都市」の強みで、IOC委員を口説きにかかる。
しかし、招致レースは単純に開催能力の優劣を争うわけではない。
前回の16年大会招致でも、東京は「安全、確実な運営」を打ち出し、計画自体は高く評価されながら、勝者は「南米初」を掲げたリオデジャネイロ(ブラジル)だった。
1964年の東京五輪が「アジア初」だったように、IOC委員は伝統的に「初めて」という大義名分に心ひかれる。
その点では、経済成長が著しく、5度目の挑戦で「イスラム圏初」の悲願をかかげるイスタンブールが有力視される。
東京はどんな「物語」をかたるべきだろうか。
震災からの復興の後押しや、雇用創出、3兆円の経済効果などは国内向けの理屈で、200余の国と地域が集うスポーツ大会の理念としてはインパクトに欠ける。
日本ならではの大胆な発想があっていい。
IOCは子どものスポーツ離れを食い止めようとユース五輪を創設した。では例えば、五輪会場を利用して、シニア世代が集う「マスターズ五輪」の開催を提唱してはどうだろうか。
日本は60歳以上の人口が3割を超える唯一の国だ。世界的にも、50年には60歳以上が20億人を超し、15歳未満を上回るという。シニアの競技人口はこれから激増する。
トップアスリートだけではなく、お年寄りや障害者など幅広い層が身近にスポーツを親しめる先進都市を掲げて、街のバリアフリー化や老朽化した競技施設の改修を進める。
同時に、直下型地震に備え、ハード、ソフトの両面で災害に強い都市づくりを急ぐ。
東京が招致に向けて取り組むべきテーマは、猪瀬知事が掲げる「成熟都市」と広く認められるために、乗り越えなければならない課題でもある。
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毎日新聞 2013年01月10日
20年五輪招致 東京だからこそを示せ
東京都が立候補している2020年オリンピック・パラリンピックの国際招致活動が解禁された。開催都市が決まる9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会に向け、成熟都市東京ならではの未来像を世界に示していけるかがカギを握る。
IOCに提出した立候補ファイル(詳細な開催計画)によると、東京は「アスリートファースト(選手第一)」を掲げ、全競技会場の85%が選手村から半径8キロ圏内に集中する「コンパクト五輪」をうたっている。交通機関や宿泊施設が整い、治安もいい世界有数の都市基盤と、さまざまな競技の国際大会を過去に開催した実績を持つ高い運営能力が特徴で、招致できれば同じ先進国で開催された昨年のロンドン五輪に匹敵する成功を収めるだろう。
しかしながら、招致の理念や意義の面では、イスタンブール(トルコ)の「イスラム圏初」というシンプルで強いメッセージに比べると、東京のスローガン「未来(あした)をつかもう」は普遍的であるがゆえに迫力に欠ける。「なぜ東京なのか」という問いへの説得力のある答えは、「南米初」のリオデジャネイロ(ブラジル)に敗れた前回2016年大会同様、明確ではない。
IOC総会まで約8カ月。国内支持率アップのキャンペーンにも限界がある。目に見えない理念にすがるのではなく、「東京にしかできないこと」を国内だけでなく、海外にも訴えてみてはどうか。
立候補ファイル提出後の会見で東京都の猪瀬直樹知事は「途上国は先進国のモデルを追いかければいいが、先進国は自分で切り開いていかないといけない。東京の未来が世界中のモデルになる」と話していた。例えば、オリンピック・パラリンピックの開催を見据え、高齢者や障害者に配慮したバリアフリーの都市づくりを強力に推し進めていく。日本が直面している高齢化は先進諸国も避けては通れない。東京が問題を先取りして提示する都市の姿は世界共通のモデルになるはずだ。20年招致に失敗したとしても次回以降の招致に遺産として受け継がれる。
スポーツジャーナリストの玉木正之さんが興味深い提案をしている。オリンピックとパラリンピックの合体だ。「健常者も身障者も一緒に参加する一つの大会こそ、未来のオリンピックの理想形、成熟した都市で行う成熟したオリンピックといえるのではないだろうか」と。同感だ。
運営面で同時開催が無理であれば、オリンピックの前にパラリンピックを開催することを検討してほしい。もし実現すれば東京の名前はIOCが推進するオリンピック・ムーブメントに永遠に刻まれるだろう。
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読売新聞 2013年01月13日
東京五輪招致 日本の総合力で実現したい
招致レースを制し、ぜひとも2度目の東京五輪を実現させたい。
2020年オリンピック・パラリンピックの開催権獲得を競う東京、イスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)の3都市が、詳細な開催計画である立候補ファイルを国際オリンピック委員会(IOC)に提出した。
これにより、国際的なPR活動が解禁された。開催地は9月7日のIOC総会で決まる。投票権を持つIOC委員の支持を得るため、今後、3都市の駆け引きが活発化するだろう。
東京都の猪瀬直樹知事は10日、昨夏の五輪を成功させたロンドンで海外メディア向けの記者会見を開き、「東京大会は、世界で最も安全で先進的な大都市の中心で開催されるダイナミックな祭典になる」と訴えた。
東京五輪が実現すれば、国内外から780万人の観客が訪れ、経済波及効果は全国で約3兆円と推計される。五輪は日本を元気づける起爆剤となるに違いない。
都だけでなく、政府や日本オリンピック委員会(JOC)などが一体となって、招致に全力を挙げてもらいたい。
東京は16年五輪招致に続く2回目の挑戦だ。開催計画の特長は、今回も「コンパクトな五輪」で、選手村を中心に半径8キロ圏内に主要な競技会場を集中させる。メーン会場の国立競技場は、8万人収容のスタジアムに大改修する。
選手村の面積を前回よりも拡充するなど、内容に磨きをかけた計画になっている。
イスラム文化圏初の五輪開催を目指すイスタンブール、欧州の有力都市であるマドリードは、ともに強力なライバルだ。東京が開催を勝ち取るのは、決して簡単ではないだろう。
だが、イスタンブールは都市インフラ整備の遅れ、マドリードはスペインの経済危機による財政問題という弱点を抱える。
対照的に、東京が有する充実した交通網や宿泊施設、4000億円の基金をはじめとする安定した財政基盤は強力な武器となる。東京の優れた点を効果的にアピールしていくことが重要だ。
五輪開催に対する国民の支持率で、東京は他の2都市より低いという調査結果が出ている。
一方で、日本中が熱狂したロンドン五輪の後、東京・銀座で行われたメダリストたちのパレードには50万人もが集まった。日本で五輪への関心がいかに高いかをIOCに示していくことも必要だ。
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