日本のエネルギー 「ゼロの呪縛」を解こう 原子力を基軸に再構築せよ

読売新聞 2013年01月08日

エネルギー戦略 現実的な原発政策を推進せよ

◆政府は再稼働の準備を着実に◆

日本経済の再生には、電力の安定供給が欠かせない。国家の命運がかかったエネルギー・原子力政策を、抜本的に再構築する重要な1年だ。

安倍首相は、「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指す民主党政権の革新的エネルギー・環境戦略の見直しや、安全性を高めた原発の新設に意欲を示している。妥当な認識と言えよう。

政府は、原発を含む多様な電源の活用を盛り込んだ現実的なエネルギー戦略を、速やかに打ち出すべきである。

◆安定供給の回復が急務◆

東京電力福島第一原発のような重大事故は再び起こしてはならない。とはいえ、性急に脱原発へとカジを切れば、資源小国の日本は電力不足で経済や国民生活に重大な打撃を受ける。

全原発50基のうち稼働中は関西電力大飯原発の2基に過ぎない。大停電こそ起きていないが、綱渡りの電力供給が続く。「原発なしでも電気は足りている」という脱原発派の主張はあたらない。

茂木経済産業相が「原子力規制委員会が安全性を確認した原発は、政府の責任で再稼働を進める」と述べたのは心強い。

ただし、規制委の審査は、新たな安全基準ができる今夏以降となる。政府はそれまでの期間を空費せず、地元との信頼醸成や、遅滞なく再稼働する手順作りなど、入念な準備を怠ってはならない。

原発の代わりに、老朽化した火力発電所まで動員しているため、液化天然ガス(LNG)などの燃料費は年3兆円も増えた。

電力会社がリストラでコスト削減に努めるのは当然としても、限界はある。昨年4月から東電が料金値上げを開始し、関西、九州の2電力も今春からの値上げを政府に申請している。

鋳物の街・埼玉県川口市の商工会議所が昨秋、会員の中小・零細企業に電気料金値上げの影響を聞いたところ、4社に1社が「経営が立ち行かなくなる」「多大な影響を受ける」と答えた。

2013年度中に原発を再稼働できないと、東電などがさらなる値上げを迫られる恐れが強い。中小企業の大量倒産・廃業による雇用危機が現実味を増す。

◆再生エネ過信は禁物◆

政府試算では「原発ゼロ」にすると電気代は2倍になる。家計の負担も大きい。普段から節約している低所得世帯は節電の余地が少ない。弱者ほど脱原発による痛みが強いことにも留意したい。

原発の代替電源として太陽光や風力など再生可能エネルギーへの期待は大きい。だが、現時点では主要電源に成長する展望が見えない。天候などによって発電量は不安定で、コストも高い。

特に問題なのが、普及促進のため昨年7月に導入した再生エネ発電の「固定価格買い取り制度」である。確かに太陽光発電は拡大したが、買い取り費用は電気料金に上乗せされ、利用者負担が増える仕組みだからだ。

先行するドイツでは買い取り費用が膨らみ、家庭の電気代が倍増した。ドイツより日本の買い取り価格は約2倍も高い。電気料金の急騰を防ぐため、政府は買い取り価格を引き下げるべきだ。

民主党政権の迷走に振り回され、原発立地自治体は国の原子力政策への不信感を強めた。

これまでの失政をどう軌道修正するのか、政府が自治体側に丁寧に説明することが重要だ。

安全審査の厳格化で、早期の廃炉を迫られる原発も出かねない。雇用対策や新たな地域振興などでも特段の配慮が求められる。

原子力損害賠償法(原賠法)は、原発事故の賠償責任をすべて電力会社に負わせている。これも国の原子力政策の信頼を低下させる一因だ。野田政権が先送りした原賠法の見直しを急ぐ必要がある。

福島原発事故の除染・廃炉の総費用は不明だが、東電だけで全額を払えないのは明らかだ。新たな支援策作りも課題となろう。

◆技術磨き国際貢献を◆

重要なのは、原子力の安全を支える人材確保だ。現場管理を担ってきた電力会社や関連企業の熟練作業員が他の仕事に転じれば、原発再稼働などに支障が生じる。

核燃料サイクル継続を含めた原子力政策の将来戦略を明示しないと、原子力分野への志望者もいなくなり、技術の維持・継承は困難だ。核廃棄物の最終処分という宿題も自力で解決できなくなる。

新興国では原発の新増設が相次いでいる。日本が技術を高め、自然災害はもちろん事故やテロにも強い安全な原発を作ることが、正しい国際貢献の道と言えよう。

産経新聞 2013年01月07日

日本のエネルギー 「ゼロの呪縛」を解こう 原子力を基軸に再構築せよ

平成25年は、日本のエネルギー政策の再出発の年である。

民主党の原発ゼロ政策の影響で国内50基中の原発のうち、稼働しているのは関西電力・大飯原子力発電所の3、4号機のみだ。

原発を保有する地域電力9社は火力発電の焚(た)き増しで、原発の不足分を補っているために、輸入燃料代の急増に苦しんでいる。

9社合計で毎日、約100億円が液化天然ガスなどの輸入に消えている。1年に3兆円のペースで国富の海外流出を余儀なくされ、日本の貿易収支は赤字に陥っている。まずはこの深刻な現状を直視することが必要だ。

影響は日々の暮らしにも及んでいる。首都圏などで電気代の値上げが始まり、北海道では冬季の節電要請が出されている。

供給余力は乏しく、不測の大規模停電が起きても不思議ではない状態だ。国際情勢により燃料輸入に支障を来せば日本の社会システムは停止する。エネルギー安全保障上も憂慮すべき状況である。

先進国として必要な電力の安定供給に陰りが出ている。民主党政権が進めた無責任な脱原発政策の矛盾による結果だ。中国による領空・領海侵犯も日本の国力低下と無縁ではないだろう。

≪首相は再稼働の主導を≫

日本の国力立て直しには電力供給力の回復が不可欠だ。このままでは製造業の海外移転に拍車がかかり、雇用が減る。安倍晋三首相は安全上問題のない原発の再稼働を急がなければならない。

原子力規制委員会が原発敷地内の活断層の調査を進めているが、対象は全国17発電所のうち、関西電力の大飯原発、東北電力の東通原発などの5カ所である。

北海道電力の泊原発や九州電力の玄海、川内原発などは活断層調査の対象外で、運転可能な原発の再稼働については、前向きの検討がされてしかるべきだろう。

地震や津波への安全対策は、福島事故後に実施された非常用電源の確保などで大幅に強化されている。活断層とは無縁の原発なら、再稼働に問題はないはずだ。

原子力規制委は今夏、新たな安全基準を作り、それに照らして各原発の安全性を検討するとしているが、全原発の判断を終えるには3年以上かかるとみられる。

それでは遅すぎる。立地地域の協力企業の技能作業者が離散してしまうと、定期検査などの技術の維持が困難になる。原発の燃料製造会社の経営がいつまで耐えられるかも問題だ。

再稼働には、国が前面に出て、原発の必要性と安全性を立地地域の住民や周辺自治体の首長、国民に説得する努力が不可欠だ。過去の自民党政権下でも国の存在感が希薄だった。この課題に真正面から取り組まない限り、早期の運転再開は望めない。

≪安全性は改良炉導入で≫

茂木敏充経済産業相は、民主党政権の「原発ゼロ」方針の見直しを打ち出している。当然な措置として歓迎したい。

安倍政権の大きな仕事の一つがわが国の中長期エネルギー戦略の柱となる「エネルギー基本計画」の策定である。その中で原子力がなぜ必要なのかを国民にしっかり説明してもらいたい。

太陽光、風力などの再生可能エネルギーには一定の意義があるものの、コストの高さが電気代に跳ね返り、ドイツでも家計を圧迫して社会問題になっている。

自民党が衆院選の公約で「10年以内に確立する」とした電源構成のベストミックスについては、原子力を確保した上で再生エネの実力を見定めつつ、シェールガスなども含めて最適な割合を探るのが合理的だ。地球温暖化防止に果たす原子力発電の貢献度は高い。

原子力の持続的な利用には、使用済み燃料の最終処分地の確保が必須だ。誘致を検討する市町村が安心して申し込める環境を整えてもらいたい。停滞しがちな核燃料サイクルの実現にも、明確な見通しをつけるべき時期である。

原発の安全性向上には、APWRなどの改良型原子炉への代替も有効だ。日本では次世代原子炉として注目される高温ガス炉の研究も進んでいる。

安倍首相は、原発新増設を認める前向きの発言に加え、「希望を政策にするのではなく、責任あるエネルギー政策を進めていく」とも語っている。まずは、「脱原発・原発ゼロの呪縛」からの解放を仕事始めとしてもらいたい。

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