◆活性化へ企業競争力を高めよ◆
安倍政権が最優先課題に掲げているのが、日本経済の再生だ。
景気回復とデフレ脱却を実現し、中長期的な安定成長に道筋をつけられるかどうか。今年こそ、バブル経済崩壊から続く「失われた20年」にピリオドを打ちたい。
安倍首相が掲げる「これまでとは次元の違う経済政策」の具体策を早急にまとめ、機動的に実行することが肝要だ。
◆ゼロ成長に甘んじるな◆
家計や企業の実感に近い名目国内総生産(GDP)は約470兆円で、20年前と変わらない。同じ期間にGDPが約20倍に急拡大した中国とは対照的な「ゼロ成長国家」に甘んじている。
今後は少子高齢化と人口減少で経済成長はさらに難しくなると、多くの専門家も指摘する。もはや日本で成長は望めない。そう将来を悲観する人もあろう。
本当にそれでいいのだろうか。首相は就任後の記者会見で「成長をあきらめた国に未来はない」と訴えた。その通りだ。国民が希望と意欲を失えば、経済の活力は決して戻らないだろう。
まず、10年以上に及ぶデフレを退治しないことには、展望は開けない。デフレは企業の利益や家計の収入を減らし、経済の縮小を加速させるからだ。
大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」で、強い経済を取り戻すという、安倍政権の処方箋は妥当である。
年末から年始にかけて、東京市場の平均株価が急騰し、円相場も1ドル=88円台まで円安が進んだ。新たな経済政策に対する期待の大きさを示している。
◆物価目標で連携強化◆
日銀の金融緩和と並行して、政府が効果的な公共事業などで需要不足を補うことが求められる。
特に重要なのが、政府と日銀の連携強化である。
首相は日銀の白川方明総裁に、2%の物価目標と政策協定の締結を要請し、日銀は今月中に導入する見通しだ。明確な物価目標を定め、その達成に政府と日銀が連帯して責任を負うべきである。
気がかりなのは、首相などが日銀法改正や総裁の後任人事と関連づけて、政策協定などを日銀に求める場面が目立つことだ。
戦時中、政府が国債を日銀に引き受けさせ、国債暴落や超インフレを引き起こした歴史がある。
日銀の独立性が揺らげば、国債の急落を招く恐れもある。日銀に政治圧力をかけていると誤解される言動は厳に慎しんでほしい。
バラマキ政策をやめ、消費税率を着実に引き上げて、財政再建に取り組むことは、国債の信用を維持するためにも大切だ。
◆法人税下げの検討を◆
デフレ以外にも日本経済は多くの課題を抱えている。
歴史的な超円高が解消されつつあるのは朗報だが、円安も行き過ぎれば、貿易赤字拡大などの副作用がある。
特に、原子力発電所の代わりに火力発電所をフル稼働しているため、液化天然ガス(LNG)など燃料の輸入は急増している。
円安で燃料の輸入費が上がり、電気料金の上昇に拍車がかかる。そんな「悪い物価上昇」は避けたい。安全を確認できた原発の再稼働は、円安の副作用を緩和する意味でも重要である。
現役世代の減少につれて、消費などの国内市場が縮小に向かうのは間違いない。働き手が減れば経済成長力も低下しよう。
子育て支援の充実で人口減少に歯止めをかける。女性や高齢者の就労促進で労働市場の縮小を防ぐ。高すぎる法人税率を引き下げて企業の競争力を高める――。
活性化に必要な政策のメニューは、すでに分かっている。
高齢化で需要の増える医療や介護などの分野には、もっと高額でもいいから質の高いサービスを求める潜在需要がある。硬直化した規制の見直しも進めたい。
政府は効果的な施策に大胆に予算や人員を集中投入し、実行を急がねばならない。
再起動する経済財政諮問会議と新設する日本経済再生本部を活用して、府省縦割りの弊害や、さまざまな既得権益を打破することが求められる。
アジアなど海外の需要を取り込むため、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)への参加は不可欠である。
経団連をはじめ経済界は、成長促進のため早期参加を強く求めている。政府が決断を急ぎ、貿易・投資のルール作りに関与することこそ国益にかなう。
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